先日、奈良県医師会館で女性アスリート診療のための講習会が開催されました。講演は「女性アスリートに見られる疾病と治療 アンチ・ドーピングの基礎知識」で講師は四季レディースクリニック院長江夏亜希子先生でした。 江夏亜希子先生は産婦人科医で、女性のスポーツ・健康医学、婦人科内分泌学、思春期・更年期医学などを専門分野とされています。江夏亜希子先生は中学2年生の時にロサンゼルスオリンピックを見てスポーツドクターになることが夢となり、医師を志したそうです。江夏亜希子先生は世界水泳選手権大会のチーム帯同ドクターとしての経験もお持ちで、2010年に東京都の都心部に女性アスリートをサポートするために四季レディースクリニックを開院されました。 江夏亜希子先生も日本体育協会公認スポーツドクターをお持ちですが、2014年4月1日現在日本体育協会公認スポーツドクターは5512人の登録があるそうです。そのうち4192人が整形外科医ですが、産婦人科医は95人(女性医師15人)だけであるということです。女性アスリートの月経に伴う疾患はコンディション不良やパフォーマンス低下に直結するために、産婦人科医の需要はとても高いということでした。江夏亜希子先生は産婦人科医が主体的に女性アスリートに関わっていくことの重要性を訴えられました。月経関連疾患を抱えている女性アスリートと全ての女性たちの健やかな未来をサポートしていくために「がんばれ!やまとなでしこプロジェクト」というプロジェクトが2014年4月に発足し多くの医師・女性関連団体・スポーツ関連団体・メディアなどが力を合わせ、産婦人科受診体制の構築と産婦人科疾患の啓発をしているそうです。 第1回オリンピックは1896年にアテネで開催されましたが、選手は男性のみであったそうです。第2回オリンピックはパリで開催され、女性が12名初参加したそうです。それが今やほぼ全ての競技で男女が同様に参加するようになっています。 1984年ロサンゼルスオリンピックに出場した女子マラソンの増田明美選手は、しなくてもよい減量をして疲労骨折を起こしたそうです。2年半無月経の時があり、足に7カ所の疲労骨折を起こし、その時に骨密度は65歳と言われたそうです。2014年4月15日放送のNHKクローズアップ現代で増田明美さんが、ロサンゼルスオリンピックから30年経っているのに未だに10代女子選手が無月経、疲労骨折の問題に悩んでいることに驚いたと述べておられました。放送の解説によりますと、女性アスリートの健康上の問題についての認識がスポーツドクター全員では必ずしも共有されていないところが問題であるということです。婦人科医は月経異常、無月経を整形外科医は疲労骨折を診療しますが、それぞれ専門外の分野までは治療者側の意識がいきにくいということもあるようです。これらの問題を解決するために「がんばれ!やまとなでしこプロジェクト」などの取り組みがなされているようです。 女性アスリートにおける三大健康問題は「エネルギー不足」、「無月経」「骨粗鬆症」で女性アスリートの三主徴と言われています。エネルギー不足は無月経、骨粗鬆症の原因となり、競技生活における問題だけではなく、現役引退後の健康にも大きく影響を及ぼします。これらを解決するために、産婦人科医による月経に関連した病気や症状の治療や月経移動によるコンディション調整がなされているようです。 女性アスリートのサポートには産婦人科医の関与が必須であることは間違いなさそうですね。 |