先日、伊賀地区学校保健研修会が開催されました。講演(1)は「学校における運動器の検診について~現状と今後の課題~」で講師はたちいり整形外科理事長立入克敏先生でした。 立入克敏先生によりますと「運動器」の認知度は上昇しているとはいえ、あるデータでは29.7%であったそうで、例えば「消化器」の72.9%と比べますと、まだまだ差があるようです。「ロコモティブシンドローム」は聞いたことがある方はあるデータでは47.3%であり、言葉の意味を理解している方は19.9%であったそうです。しかしながら年齢別で見ると女性では70歳以上の方では聞いたことがある方は74%、言葉の意味を理解している方が42%であったのが、20歳~30歳の女性では聞いたことがある方が31%、言葉の意味を理解している方は9%とかなりの年代差があるようです。 今年4月から学校保健安全法施行規則の一部改正がなされ、「座高」検査、「寄生虫卵の有無」検査の必須項目からの削除、「四肢の状態」検査の必須項目への追加などがその主な項目でした。 立入克敏先生によりますと子どもの運動器機能不全は運動器疾患(先天性・後天性・外傷性)に起因するものだけではなく、運動過多に起因するもの、運動不足に起因するものなどがあり、疾病とは言えない状態であっても放置すれば外傷や障害を生じやすいものを含んでいるそうです。1997年の文部科学省の報告ではスポーツ外傷で1週間以上練習を休んだ経験のある運動部員は中学生で20.0%、高校生で33.4%、スポーツ傷害で1週間以上練習を休んだ経験のある運動部員は中学生で12.6%、高校生で24.9%であったそうです。 文部科学省スポーツ・青少年局長通知によりますと、運動器に関する検診を行う際には保険調査票等を活用し家庭における観察を踏まえた上で学校側がその内容を学校医に伝え学校医が診察するという対応が適当であり、そこで異常が発見された場合には保健指導や専門機関への受診など適切な事後措置が求められるということです。立入克敏先生によりますと、整形外科関連で健康診断時に注意すべき疾病および異常は脊柱の疾患・障害として脊柱側弯症、腰椎分離症、腰椎分離すべり症、上肢の疾患・障害として野球肘、股関節・下肢の疾患・障害として歩行異常、ペルテス病、大腿骨頭すべり症、発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)、オスグッド・シュラッター病などです。整形外科受診の基準は痛み、左右差がある、関節の動きが悪い、症状があるのにもかかわらず整形外科受診をしていない児童生徒など、歩行障害がある場合、その他学校医が検診当日に異常、あるいは異常の疑いがあると判断した場合、側弯症が疑われる場合などです。 ある報告によりますと野球肘の一つである上腕骨小頭離断性骨軟骨炎と診断された症例に関して、まず検診を受けて見つかった場合には発見時に初期が94.9%、進行期が3.1%、終末期が2.0%であったそうです。それに対して検診を受けずに外来受診で見つかった場合には初期が30.1%、進行期が26.1%、終末期が43.7%であったそうです。立入克敏先生は京都運動器障害予防研究会による京都府における野球検診への取り組みについて紹介して下さいました。立入克敏先生は悲惨な結果を避けるためには検診で早期に発見することが求められるが野球検診に代表されるようなフィールド検診には限界があり、全ての子どもたちに運動器に関する検診の機会を与えることができるのは学校をおいて他にない、と強調されました。 立入克敏先生は各疾患に対するチェックポイントなどを詳しく解説して下さいました。大変勉強になった研修会でした。 |