先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。演題は「最近変わったな、と思う消化器癌診療」で演者は名張市木屋町の釜本医院釜本寛之先生でした。 釜本寛之先生は東京医科大学病院、国際医療福祉大学三田病院消化器センターなどで勤務された消化器病の専門医で、消化器病専門医や消化器内視鏡専門医、肝臓専門医、日本癌治療認定医機構暫定教育医、日本内科学会認定内科医、日本医師会認定産業医などの資格もお持ちです。 釜本寛之先生によりますと、消化器領域はとりわけ癌を扱うことが多い領域で、胃癌、大腸癌、肝癌、膵癌、胆嚢癌、胆管癌といった消化器癌の新規罹患数は毎年40万5千人、全悪性腫瘍の50.9%を占めているそうです(人口動態統計2014)。疾患の克服に向けて、常に診断法、検査法、治療法の研究が盛んな分野の一つであるということなのですが、釜本寛之先生自身が以前とは消化器癌診療が変わったな、と思うことが増えてきたそうです。釜本寛之先生は消化器癌診療の最近の話題についてなどを紹介して下さいました。 2006年12月には日本がん治療認定医機構が設立され、日本がん治療認定医の制度が始まったそうです。がん治療認定医においては内科医、外科医の隔たり、各臓器専門ごとの隔たりを超えて、がん診療をおこなうに当たって持っておくべき知識、経験が求められるということでした。 釜本寛之先生によりますと、がん治療を受けるに当たっては全身状態の指標の一つであり患者さんの日常生活の制限の程度を示すPS (Performance Status)を参考にするそうです。また化学療法による嘔気、嘔吐などの副作用対策が進んだことやオピオイドの積極使用などにより癌疼痛対策が進化したそうです。胃癌の診断には内視鏡の進歩の負うところが大きく、外科治療の進歩では腹腔鏡手術の拡大や単孔式など更に低侵襲になってきているそうです。手術支援ロボット「ダヴィンチ」では手術の安全性向上と低侵襲が実現され、前立腺癌、腎癌では保険適応となっているそうです。また内視鏡施行時の抗血小板薬、抗凝固薬も休薬する必要がなくなってきているそうです。肝癌の原因の一つである肝炎ウイルスですが、C型肝炎は内服治療の奏功率がとても向上しているそうです。肝切除術は幕内基準をベースに肝切除範囲を決定することにより、安全度が向上しているそうです。また各種画像診断技術の進歩により、肝臓癌の診断能力も向上してきているそうです。膵臓癌は早期発見が困難なために治療困難な場合も多いそうですが、超音波内視鏡技術の進歩、進歩しつつある抗がん剤治療により治療成績も向上しているそうです。 釜本寛之先生は消化器癌診療の様々な分野に関して、最近の進歩や変化について紹介して下さいました。釜本寛之先生は消化器病の専門医として最先端の医療に従事しておられた経験を踏まえて、3代続く歴史ある医院で地域のかかりつけ医(ホームドクター)として活躍しておられ、癌の早期発見などの分野で地域住民の方々に大きく貢献しておられるようです。 |