先日、第2回名張プライマリケアを考える会が開催されました。 基調講演は「パーキンソン病について」で演者はおおのクリニック院長大野則和先生でした。大野則和先生は伊賀市で内科、神経内科のクリニックを開いておられ、伊賀・名張地区では貴重な神経内科専門の先生です。大野則和先生は専門外には難解なパーキンソン病を、様々な職種の医療関係者に理解しやすいように丁寧に解説して下さいました。 パーキンソン病とは黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする神経変成疾患であり、4大症状として(1)安静時振戦、(2)筋強剛(筋固縮)、(3)無動・寡動、(4)姿勢反射障害を特徴とします。最近は運動症状のみならず、自律神経症状や精神症状などの非運動症状も注目されているそうです。しかしながらこれでは難解で説明を聞いてもなかなか理解できそうにないですね。 大野則和先生は患者さまにパーキンソン病を脳の病気であり、神経の伝わりが悪くなり、体がうまくいかなくなる病気で、一般的には徐々に進行するが、最近新しい治療法が出てきているというように説明するそうです。なるほど、これなら誰でも理解しやすそうなうまい説明ですね。 大野則和先生によりますと、日本では患者数が14万5千人、有病率は約1000人に1人、好発年齢は50歳から60歳代後半で、60歳以上で見れば100人に1人、遺伝性は約10%に認められるそうです。パーキンソン病が比較的有名なのは、モハメド・アリ、マイケルJフォックス、ヨハネ・パウロ2世、アルドフ・ヒトラーなど著名人に多いことなども影響しているのでは?という話でした。 原因は基本的には不明であるそうですが、脳の黒質から線状体に向かう情報伝達経路の障害であるということでした。危険因子は遺伝、便秘、喫煙などだそうです。便秘が危険因子とは不思議ですね。代表的な症状は振戦、筋強剛、無動、姿勢反射障害です。振戦は安静時に起こり、手足の震えなどですが、頚を縦に振る動きもあり、本態性振戦では頚を横に振るという違いもあるそうです。筋強剛は鉛管様、歯車様などであり、手足のしびれも訴えるそうです。無動では動作が遅くなったり少なくなったり小さくなったりするそうで、字を書くとだんだん小さくなる小字症も認められるそうです。姿勢反射障害ではバランスがとりにくくなり、めまい感、浮動感、立ちくらみなどを訴えたりもするそうです。症状は主に運動障害ですが、嗅覚障害、便秘、睡眠障害なども起こるそうです。睡眠障害は寝返りがうまくうてなくなって起こることも多いそうです。大野則和先生によりますと、鑑別疾患としては薬剤性パーキンソン症候群に注意する必要性があり、ドグマチールにより起こることが多いがSSRI製剤にて起こった経験もあるということでした。治療は薬物療法が有効で年齢によってドパミンアゴニストとL-DOPAを使い分けるということでした。早くから薬物療法を初めて、良好な状態を保つことが重要なようです。またパーキンソン病の進行を防ぐには早期からのリハビリテーションが有効なようです。大野則和先生は格子柄のタイルカーペットを利用した歩行訓練を紹介して下さいました。また大野則和先生によりますと、パーキンソン病の患者を支える環境作りが重要であるということでした。 基調講演の後に名張市立病院総合診療科部長御前秀和先生座長により、グループセッション「パーキンソン病患者における多職種連携」が行われ、こちらも参加しました。私の参加したグループには訪問リハビリテーションやデイケアを行っている理学療法士の方が3人参加しておられ、現場での体験や気づきなどを教えていただきました。大変参考になるお話しでした。 本会を通じてプライマリケアにおける多職種連携の重要性を再確認できて、大変勉強になりました。 |