先日、奈良トレーニングセミナー2016、第29回奈良県スポーツ医・科学研究会が開催されました。本会は主催が公益財団法人奈良県体育協会、奈良県スポーツ医・科学専門委員会、共催が奈良県医師会スポーツ医学部会、久光製薬株式会社で毎年この時期に開催されています。 特別講演Ⅰは「コンタクトスポーツにおける下肢の外傷と障害」で講師は奈良県総合医療センター副院長杉本和也先生でした。杉本和也先生はラグビー日本代表チーム帯同ドクター(2006~2007年)を務められ、2000年からは同志社大学ラグビー部チームドクターを勤めておられます。また関西ラグビーフットボール協会医務委員、日本体育協会アスレティックトレーナー検定員も勤めておられ、特にラグビーに精通された先生です。今回、杉本和也先生はラグビーやアメリカンフットボールなどタックルをするスポーツやサッカー、バスケットボールなどボールを競り合うことにより同様に激しいコンタクトが起こり下肢、特に膝から下に起こる外傷、障害などについて解説して下さいました。杉本和也先生によりますと膝では前十字靱帯損傷、足関節では骨折と靭帯の複合損傷が手術を避けがたい外傷として問題になるということでした。一方、慢性的に発症する疲労骨折も手術を要することが少なくないということです。杉本和也先生は近年CT、MRI、エコーなどの画像診断精度が向上し、低侵襲の関節鏡視下手術が発達したことで、多くのスポーツ外傷や障害が早期に診断され、適切な治療により早期の復帰が可能になったと述べられました。 特別講演Ⅱは「ラグビー競技における外傷・障害の診断と治療」で講師はエディージャパンでチームドクターを務められた順天堂大学整形外科・スポーツ診療科准教授高澤祐治先生でした。高澤祐治先生は膝関節外科を専門とされていますので、膝関節外科特に膝前十字靱帯損傷について解説して下さいました。杉本和也先生も解説しておられましたように膝前十字靱帯損傷は手術治療を要することが多く、スポーツ選手も受傷する頻度の多い外傷です。バスケットボール女子選手に多いことは知られていますが、サッカーでも女子選手に多く、サッカー日本代表チームでも男子選手よりも「なでしこジャパン」の女子選手の方が膝前十字靱帯損傷を受傷している選手が多いということでした。そして男子でも比率で言うとラグビー日本代表選手はかなり高率に膝前十字靱帯損傷を受傷しているそうです。今後は予防的な取り組みの重要性が増していくことでしょう。 今回、私は特別講演Ⅰの座長を務めさせていただきました。またパネルディスカッションでは奈良県体育協会奈良県スポーツ医・科学専門委員会委員長の奈良県立医科大学整形外科学教室教授田中康仁先生と国立大学法人奈良教育大学保健体育講座教授笠次良爾先生が座長を務められ、パネリストとして特別講演Ⅰ、Ⅱの演者である杉本和也先生、高澤祐治先生、そして奈良県立医科大学整形外科教室助教宗本充先生と私でディスカッションをさせていただきました。高澤祐治先生は小学校1年から神奈川県のラグビースクールでラグビーを始められ、順天堂大学医学部出身ということです。杉本和也先生、田中康仁先生、笠次良爾先生、宗本充先生と私は奈良医大整形外科所属ですが、トライアスロン専門の笠次良爾先生を除いて4人とも奈良医大ラグビー部OBであり、ラグビー色の強いディスカッションとなりました。私にこの様な機会を与えて頂いた田中康仁教授に感謝致しております。 |