先日、第5回ラグビードクターフォーラムが大阪で開催されました。ラグビードクターフォーラムはラグビーに興味のある医師、歯科医師が対象の研究会です。関東、関西、九州でそれぞれ主管が持ち回りで年に1回開催されており、今回で5回目になります。昨年のラグビーワールドカップ2015イングランド大会における日本代表チームの活躍を受けて、ラグビーに対する関心が高まっており例年以上に活発な会議になりました。 基調講演は「ワールドカップ2015における日本代表チームのメディカルサポート~外傷の治療~」で演者はエディージャパンチームドクターを務められた、順天堂大学整形外科・スポーツ診療科准教授高澤祐治先生でした。昨年のワールドカップ2015イングランド大会における日本代表チームの活躍は報道でも報じられたように感動的でありましたが、その現場に当事者として立ち会われるという大変貴重な経験をされた高澤祐治先生のお話しは大変興味深いものでした。2012年4月にエディー・ジョーンズ監督率いるジャパンウェイが始まったそうですが、組織作りは少人数からというエディー・ジョーンズ監督の意向もあり総勢12名のスタッフからスタートしたそうです。チームドクター1名とトレーナー2名のメディカルスタッフでストレングス、コンディショニングコーチスタッフとの連携が強くエディー・ジョーンズ監督から求められたそうです。選手・スタッフともに“日本ラグビーの歴史を変える。”という強い気持ちでハードワークを課し、“すべては初戦で決まる。”と南アフリカに勝つために入念な準備の元で挑んだワールドカップであったそうです。その後の結末は周知の通りですが、初戦まであと4週間という間際でも選手たちは怪我人だらけでチームドクターとして高澤祐治先生は大きな不安に悩まされ葛藤があったことを紹介して下さいました。歴史的快挙の背景には、メディカルスタッフにとっても様々な葛藤と挑戦があったそうです。またエディー・ジョーンズ監督は本当に怖かったらしくて、あるスタッフなどは怒られ役でいつも理不尽に怒鳴られていたそうです。練習風景の写真を撮ろうものなら、記念撮影を撮って遊びに来ているわけではない!とたちまち怒鳴られるので、おちおち写真も撮れなかったそうです。メディカルスタッフを初めとして数々の裏方の方々の支えがあって日本代表チームによる歴史的快挙がなされたことは間違いなさそうです。 シンポジウムでは「ワールドカップ2019に備えてメディカル部門の対応~その実際的問題の改善のための具体的提案~」をテーマに「ワールドカップ2015の医務とドーピング・コントロール」を早稲田大学スポーツ科学学術院教授赤間高雄先生が、「ワールドラグビーのMedical minimum Standardからみた日本のメディカルの現状の問題点と改善点」を流通経済大学スポーツ健康科学部教授山田睦雄先生が、「留学時に現地で観戦した2015ワールドラグビーセブンスシリーズならびにワールドカップ2015~ラグビー外傷への応急治療の観点から~」を奈良県立医科大学整形外科助教宗本充先生が、「日本代表ドクターの活動に要求される資質・情報管理とオールジャパンバックアップ連携体制の構築計画について~外傷発生時の対応、診断、治療も含め~」を宮崎大学整形外科助教田島卓也先生がそれぞれ発表されました。 ワールドカップ2019日本大会に向けて大変有意義な会でした。 |