先日、名賀医師会主催の発達支援研修会が開催されました。講演は「少ないマンパワーで地域の宝を守っていく~連携~」で講師は蜂谷医院副院長蜂谷明子先生でした。 蜂谷明子先生は小児科医で、子どもの心研修委員、岐阜市教育委員会、発達障害専門相談支援員、恵那市学校保健会長、恵那市次世代育成市民会議委員長、岐阜市小児科医会常任理事、と種々の要職をお勤めの非常に多忙でご活躍の先生です。蜂谷明子先生の勤務される蜂谷医院は岐阜県恵那市にあるそうです。恵那市は人口52339人、年間出生数が約410人だそうですが、この市に小児科医は市民病院に常勤1名、市立診療所に非常勤1名、それと開業医である蜂谷明子先生だけであるそうです。このことからも蜂谷明子先生のお忙しさが理解できます。蜂谷明子先生によりますと、育児中の母親の1割以上がうつ病になるという報告があるということより、育児不安を持つ親の割合は計り知れないということでした。そこで蜂谷明子先生は診察室だけではない子育て支援を目指したということです。そのためには連携なくしては、子ども支援は進まないとの思いで、子どもへの理解をより深めることにより、一緒に子どもたちの心を抱きしめていきましょう!と蜂谷明子先生は強調されました。 発達障害というと自閉症スペクトラム障害、多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)が代表的ですが、第4の発達障害と言われている「反応性愛着障害」について蜂谷明子先生は紹介、解説して下さいました。乳幼児が恐怖や疲れや親と距離が離れたときなどに、親に近づくことにより安心感を得ようとすることを「愛着」のシステムが働いているというそうです。この様な乳幼児の愛着行動に対して、養育者が感受性を持ってなだめる機能を発揮することが適応であるとされているそうです。乳幼児はこの様な感受性のある養育者との愛着関係を繰り返し体験することにより、他者に対する安全感・安心感を獲得していくと考えられているそうです。「反応性愛着障害」においては子どもにとってこの様な養育者からの適切な応答がないために、コミュニケーションをどう取るのか?、人との距離をどう取るのか?など人間関係を作ることや、心を満たせるのか?自己肯定できるか?自分に自信が持てるか?など人間と人間の信頼感を得ることがうまくできなくなってしまうそうです。 蜂谷明子先生は子どもを理解して支援するためには、子どもはどのように物を見て、どのように感じているか?を理解しないといけないと述べられ、注意したり指導したりするとき、子どもに伝わりにくいことを話ししていませんか?と指摘されました。擬音語、擬声語や擬態語、擬容後、擬情語などは大人にとっては当たり前でも、子どもたちにとっては意味を捉えにくいものと考えることが子どもを理解する面では肝要ということでした。 蜂谷明子先生は学校検診において子どもの現状を知ること、学校医による健康相談において子どもを深く知ること、子どもの貧困の現状を知ること、就学時検診の有効活用などにより学校医の仕事を通して「子どもの姿」を知ることを意識しているそうです。この様な考えで蜂谷明子先生は行政、学校、園、施設そして子どもに関わる大人たちとの連携により「かけがえのないネットワーク」を構築しているそうです。このネットワークにおいて大切なのは顔の見える定期的な関わりであり、お互いの信頼を構築することが重要であるということです。それにより、ようやく大人が皆で子どもたちを守ることができるのだということです。蜂谷明子先生は今後も子どもを守るために何が大切か考えながら、支援していきたいと述べられました。 この様に多忙にご活躍なさっておられる蜂谷明子先生ですが、これだけ活動できるのは夫である耳鼻科医の院長先生のお陰であると仰っておられました。蜂谷明子先生と関わる恵那市の子どもたちは幸せだと思いました。 |