先日、みえ整形外科イブニングセミナーが開催されました。講演1は「関節リウマチ治療の実践」で講師は三重大学整形外科講師若林弘樹先生でした。若林弘樹先生はサンフランシスコでリウマチに関する国際学会発表を終え、帰国後すぐというお忙しい中でご講演下さいました。 関節リウマチにおける関節炎の主病変は滑膜炎であり、滑膜の増殖から次第に周囲の軟骨、骨が侵され、関節の破壊と変形に至ります。従来、関節破壊が10年以上経過してから進行するのではと思われていたのが、実は発病後2年以内に急速に進行することが明らかとなり、関節リウマチに対する治療方針が以前とは大きく変わってきたという経緯があります。若林弘樹先生はEULAR recommendationなどに基づいた関節リウマチに対する治療アルゴリズムのフェーズⅠからフェーズⅢまでの流れを解説して下さいました。フェーズⅠではMTXを使用できるときと使用できずに他のDMARDを使用する場合に分けて、6ヶ月以内に治療目標達成を目指し、フェーズIIでは予後不良因子の有無により生物学的製剤の追加または他のDMARD使用の選択となり、フェーズⅢでは他の生物学的製剤への変更かトファシチニブへの変更の選択となります。若林弘樹先生はアンカードラッグとなるMTXの歴史を紹介して下さいました。MTXは1964年に乾癬に対する低容量パルス療法が行われ、1972年に関節リウマチに対して低容量パルス療法が初めに行われました。欧米で関節リウマチに対する治療薬として承認されたのが1989年で、日本では1999年に関節リウマチに対する治療薬として承認され、日本で16mg/週投与が認められたのが2011年です。通常はMTX投与を6mg/週で開始し4~8週間で効果不十分なら8mg/週に増量します。更に4~8週間で効果不十分なら16mg/週に増量します。予後不良因子があれば8mg/週で開始し、副作用因子があれば2~4mg/週で開始します。 若林弘樹先生はMTXの副作用についても解説して下さいました。容量依存性の副作用として消化器症状、肝機能障害、骨髄抑制などがあります。容量依存性の副作用の場合には葉酸投与が有効である場合が多いです。一方、容量非依存性の副作用として呼吸器症状、皮疹などがあります。呼吸器症状の中でも特に間質性肺炎は重篤となり注意を要します。検査としては血液検査(KL-6)ですが、早期発見には聴診所見が有効ということです。これは血圧計のマンシェットを外すときのバリバリという音であるベロクロラ音が特徴的であるそうです。副作用の感染症は容量依存性に増えるそうです。MTXは高い有効率、骨破壊抑制、生活機能改善という点で関節リウマチに対する第一選択であり、アンカードラッグという位置づけです。その次に使われることの多いDMARDであるブシラミン、サラゾスルファピリジンについても若林弘樹先生は解説して下さいました。副作用についてはブシラミン23.9%、サラゾスルファピリジン23.1%と共に高率ですね。更には、どちらとも無顆粒球症などの重篤な副作用もあるということです。またブシラミンは皮膚障害、蛋白尿など、サラゾスルファピリジンは肝機能障害、呼吸器症状などの副作用も多いということです。 若林弘樹先生は症例を呈示しながら関節リウマチ患者さまの治療の実際を紹介して下さいました。MTXを初めDMARDや生物学的製剤においても副作用出現率も高率で重篤な副作用も多く、細心の注意を要します。内科医との連携は必須であるように思われます。 |