先日、NHK番組でNHKスペシャル「腰痛・治療革命~見えてきた痛みのメカニズム~」が放映され、視聴致しました。 厚労省研究班の調査によると腰痛を持っている方は日本に2800万人いるということで、これは実に日本人の4分の1人に及ぶそうです。私も何度も腰痛に悩まされていますが、通常比較的短期間で症状はそれなりに治まります。腰痛が3ヶ月以上続くことを「慢性腰痛」といいますが、通常ならば腰痛の原因となる腰の骨や筋肉の異常は3ヶ月たたずに改善されるはずです。番組によりますとなぜか腰痛が長引く人が多数おられるのは腰痛の長期化の原因は「脳」にあったということがわかってきたということです。脳には下行抑制系という痛みを抑える鎮痛の仕組みがあるのですが、慢性腰痛の方ではその機能が衰えているそうです。その脳の機能が衰える原因が「痛みへの恐怖心」であるということです。恐怖心がストレスとなり、脳の痛みを抑える機能が衰えてしまうなんて不思議なことですね。このようにして痛みの悪循環、慢性腰痛に繋がっていくようです。 番組では慢性腰痛の方に対して、3つの方策を提示しておりました。 番組の提示した恐怖心克服第1弾は「映像を見る」でした。映像は「腰痛は怖くない!」のスローガンのもとに番組ためしてガッテンから「あなたの腰痛の常識 ○か×か? あの番組からの挑戦状」と「骨に異常があっても大丈夫?」、「腰痛に手術は必要ない?」、「腰痛には運動が必要?」、「介護施設で驚異の効果!たった3秒の習慣が切り札」という4つの整形外科医からのメッセージからなるそれぞれ1分間くらいのビデオです。これらの映像を毎日見続けることにより、慢性腰痛の方の約4割で改善傾向を認めたということでした。 痛みへの恐怖克服第2弾は「ある姿勢をとる」でした。ある姿勢とは「1日3秒、背をそらす姿勢をとる」というもので従来の腰痛体操と比べても本当にたやすく行い得るものでした。やり方は本当に簡単で、まず足を肩幅よりやや広めに開いて、おしりに両手を当てて、息を吐きながらゆっくりと上体を反らして、その姿勢を3秒間保ちます。ポイントは手で骨盤を前に押し込むイメージですることだそうです。監修の東京大学整形外科准教授松平浩先生によりますと、上体を反らすのは「いた気持ち良い」と感じるくらいが目安で、とにかく毎日続けることが重要であるということでした。松平浩先生によりますとこの体操により、ある介護施設では腰痛を訴えていた職員の7割が改善されたということでした。 映像や姿勢などによっても腰痛を改善する効果の認められなかった人に対する治療として注目されているのが「認知行動療法」だそうです。これは専門家によるサポートの下で心理療法を受ける治療ですので一般ではなかなか受けることができませんが、オーストラリアの病院では3週間にわたって1日8時間カウンセリングと運動を繰り返すという認知行動療法を行い、大きな成果を上げることができたそうです。 この番組からのメッセージにより、慢性腰痛で苦しんでおられる方が少しでも楽になることができますように祈っております。当院でも早速番組で紹介されていた映像をスタッフ全員で視聴し、毎日皆で「これだけ体操」をやっております。 |