5月21日から5月24日まで神戸市で第88回日本整形外科学会学術総会が開催されました。平日はなかなか休めないので、最終日である本日のみ出席いたしました。 足部疾患のセッションを聴いた後に、教育研修講演58の「足関節・後足部再建手術の最新の動向」を受講しました。講師は東京警察病院整形外科部長原口直樹先生でした。変形性足関節症、関節リウマチ、距骨壊死、成人期扁平足に関して新しい概念や手技の進歩、その最新の動向を紹介してくださいました。変形性足関節症に関しては手術治療として骨切り術、関節固定術、関節牽引形成術について解説してくださいました。骨切り術としては内反型OAに対しては高倉義典先生により報告された低位脛骨骨切り術(LTO)と寺本司先生により報告された脛骨遠位斜め骨切り術(DTOO)をそれぞれの適応で施行しているということでした。外反型OAに関しては扁平足の合併の有無が重要であるということです。関節固定術では従来、直視下手術でも良好な結果が報告されていましたが、近年鏡視下手術において骨癒合期間の短縮と術後の疼痛軽減が報告されておりGolden Standardが鏡視下手術に取って代わられたという報告もあるそうです。牽引関節形成術はIlizarov創外固定器で3ヶ月間足関節に牽引を加える方法で、可動域良好で関節固定術を望まない進行期から末期関節症患者に行いうるそうです。一定の効果は認められるものの、最終的は約45%で関節固定術か人工関節置換術を要したという報告もあるそうです。しかしながら原口直樹先生は関節裂隙の狭小化が著しく改善された良好な術後結果である症例も供覧して下さいました。関節リウマチに関しては人工足関節全置換術における工夫などを紹介されました。距骨壊死に関しては従来行われてきた脛踵関節固定術の術後成績が満足いくものではなかったが、高倉義典先生により導入されたセラミック製人工距骨全置換術が距骨の解剖学的特徴を捉えたもので術後成績も良好であることを紹介されました。成人期扁平足は後脛骨筋腱機能不全症ですが、距骨下関節の動きが温存されている2期では踵骨骨切り術・長趾屈筋腱移行術合併手術が行われてきたが、病態により更に追加手術を要するということでした。4期になると汎距骨固定が一般的だそうです。このあたりもかなり専門的な手術といえそうです。 ランチョンセミナー41は「関節リウマチ治療におけるMTXの役割と意義~最新の知見を踏まえて~」で講師は慶応義塾大学医学部リウマチ内科教授竹内勤先生でした。竹内勤先生は日本における関節リウマチ診療の第1人者の一人です。MTXは関節リウマチ治療のアンカードラッグという位置づけで、標準的には6mg/週で開始し4~8週間で効果不十分なら増量するということです。竹内勤先生はMTX投与増量のコツなどを紹介して下さいました。葉酸はMTXの副作用を低減させるためにMTX最終服用後24~48時間に服用することが勧められますが、服用するタイミングが大切です。患者さま自身がサプリメントなどにより葉酸を服用されるとMTXの効果が減弱してしまうので、竹内勤先生は患者さまに普段通りの食生活をされるように勧めておられるということでした。MTX効果不十分で生物学的製剤注射を追加するときには、MTX継続が望ましいがMTX減量は可能であるということでした。生物学的製剤注射の関節破壊抑制効果はMTX併用で増強するそうです。 今回の日本整形外科学会学術総会パンフレットなどには手塚治虫氏の「ブラック・ジャック」がモデルとして使われています。今学会の会長が大阪大学大学院医学系研究科期間制御外科学(整形外科)教授吉川秀樹先生ですので、手塚治虫氏も大阪大学医学部出身であったことも関係しているのかもしれません。手塚治虫氏は医師免許を取得しましたが、漫画家として大活躍されました。手塚治虫氏はかつて奈良県立医科大学の研究生となり医学博士を取得されたそうです。手塚治虫氏と我が母校とに関連性があっただなんて、なんだか嬉しい気がしました。 |