先日、第28回奈良県スポーツ医・科学研究会、奈良トレーニングセミナー2015が開催されました。講演Ⅰは「生理学・解剖学からみた筋トレの基本とよくある誤解」で講師は近畿大学生物理工学部人間工学科准教授谷本道哉先生でした。谷本道哉先生は日本オリンピック委員会医科学スタッフ、日本ボディビル連盟医科学委員なども務められ、著書でスロトレなどの筋トレを紹介され、テレビ放映などでも運動の効果をわかりやすく解説しておられます。また自らもトレーニングを実践され、見事に鍛えられた肉体は何より説得力があります。その筋トレのエキスパートである谷本道哉先生が筋トレの基本とよくある誤解についてわかりやすく解説してくださいました。 谷本道哉先生によりますと筋力トレーニングを実施する主目的は、競技練習だけでは得られないハイレベルの筋肥大・筋力増強効果を得るためであり、これを補強トレーニングといいます。そのためには競技練習で筋肉に受ける以上の刺激、つまりオーバーロードをかけなければならないということです。リハビリテーションやサルコペニア予防を目的として行われる場合も、日常生活で受ける以上の刺激でオーバーロードをかけて効率よく筋を発達させる必要があるそうです。これは一見当然のことに思えますが、スポーツ界ではプロスポーツにおいても様々な言い伝えや迷信?があります。例えば「競技で使える筋肉は競技練習でつける。」とか「試合の心拍数に合わせて走る。」などです。これらは試合や競技において実践的に活かせるように思え一見良さそうに思えます。しかしながら形だけ模倣しても競技動作とは異なる筋トレ固有の動作であり、標的の筋肉にしっかりと負荷をかけるためには筋トレにはその目的に即した固有の最適なフォームがあるということです。ただし筋トレだけではパフォーマンスアップには繋がりにくく、スキルを高めるトレーニングも当然必要となります。 谷本道哉先生はその他にも様々な誤った情報が多いことを指摘されました。例えばインナーマッスルという都市伝説、筋トレでつけたアウターは使えない、インナーこそ使える筋肉、インナーは軽負荷で、高負荷になるとアウターばかりのトレーニングになる、ボディビルの筋肉はアウターばかり、インナーは鍛えられない、体幹トレーニングはインナーが鍛えられる、安定したマシンはインナーが鍛えられない、不安定なフリーウエイトの方がインナー強化に有効である…などなど。これらはすべてイメージであり、誤りであると谷本道哉先生は解説してくださいました。トレーニングの王道は筋トレ、パワー発揮トレ、持久トレ、スキルトレであり、それ以外のインナー強化、体幹トレーニング、ファンクショナルトレーニングはあくまで+αの位置づけであると谷本道哉先生は述べられました。流行や誤った情報に流されがちな現在の情報社会に谷本道哉先生は警鐘を鳴らされます。 谷本道哉先生はテレビの情報番組でご自身のトレーニングに関して問われ、1日20分、週に3~4回と答えておられます。今までの蓄積があってこそでしょうけれど、これだけの短時間でこの立派な肉体を維持されているのはスゴイと感心致しました。 |