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「運動器慢性疼痛に対する薬物療法と運動療法」

2015年02月02日(月) 院長ブログ

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先日、第31回三重県義肢装具・リハビリテーション研究会が開催されました。特別講演は「運動器慢性疼痛に対する薬物療法と運動療法」で講師は山口大学医学部附属病院病院長・山口大学大学院医学系研究科整形外科教授田口敏彦先生でした。

国際疼痛学会では痛みを「実際に何らかの組織損傷が起こったとき、または組織損傷を起こす可能性があるとき、あるいはそのような損傷の際に表現される、不快な感覚や不快な情動体験」と定義しています。田口敏彦先生は痛みが感覚や感情であるために、末梢から脳で痛みを認知するまでの経路において痛みを捉える必要があると説明されました。田口敏彦先生によりますと、足にピンが刺さったときも、腰椎椎間板ヘルニアにより神経根が傷害されたときも同じように足に痛みを生じますが、足にピンが刺さったときは侵害受容性疼痛、腰椎椎間板ヘルニアの場合は神経障害性疼痛と異なる分類の疼痛であるということです。疼痛は侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛に分類されます。

侵害受容性疼痛の場合には痛覚はAδ線維とC線維を通じて伝達されます。Aδ線維は刺激を早く伝達し、C線維少し遅れて伝達します。田口敏彦先生によりますと、C線維は熱さ、冷たさ、化学物質などに対しても疼痛を感じるということでした。発痛物質にはブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン、アセチルコリンなどがありますが、それぞれ固有のレセプターがあるということです。侵害受容性疼痛の場合には一般に神経機能が正常であるとされます。しかしながら例外が二つあり、一つは例えば同じ所を叩き続けるとだんだん痛み閾値が下がってきて痛みの程度が増強し我慢できなくなるというWind up現象です。もう一つは神経の可塑性で、非常に強い過剰な刺激が加わると神経のシナプス機能が可塑を起こすことです。神経障害性疼痛では一般的には部位は典型的な局在であり、期限的で、NSAIDsはよい反応を示すことが多いということです。

神経障害性疼痛の場合には異所性放電、下行性抑制系の障害、中枢性過敏化などが起こっており、疼痛もうずき、灼熱感、しびれ、ヒリヒリ感などの症状で領域は損傷部位と同一ではないそうです。

疼痛に対する薬物療法ではNSAIDs、アセトアミノフェン、オピオイド、抗うつ薬、抗てんかん薬、抗不安薬などを用い、疼痛の種類によりこれらの組み合わせで治療します。田口敏彦先生によりますと、侵害受容性疼痛または神経障害性疼痛それぞれ単独という場合は少なく、ほとんどの場合が混合性疼痛であることが薬物療法を困難にしているようです。

田口敏彦先生は運動療法が薬物療法と同様に、慢性疼痛に対する治療として重要であると述べられました。確かに運動は健康増進に繋がるし、疼痛軽減にも役立つように思えるのですが、その関連性は明らかではなかったように思えます。ランナーズハイはマラソンなどで長時間走り続けると気分が高揚してくる作用でエンドルフィンの分泌によりますが、その効力はモルヒネの6.5倍と言われているそうです。定期的な運動が慢性疼痛を軽減させ、運動不足は慢性疼痛の危険因子だそうです。これには定期的な中等度の運動は脳幹部の内因性オピオイドを賦活し下行抑制系を賦活することにより神経障害性疼痛を軽減させる効果があるからで、運動により神経障害性疼痛に関するタンパクも低下させることで疼痛閾値を上げる効果があるそうです。このように慢性疼痛に対する運動の効果が報告されてきており、運動の新しい意義として種々の慢性炎症を軽減することにより、慢性炎症性疾患の病状を軽減させる効果も見込まれているそうです。また肥満した脂肪組織からは炎症性サイトカインが放出されているそうです。

田口敏彦先生は薬物療法と運動療法を組み合わせて目標のQOLを達成することが慢性疼痛の治療の目的であると述べられました。慢性疼痛に対して薬物療法により疼痛を軽減させた状態で運動療法を追加することにより、より大きな効果が見込まれるということです。それではいつ運動療法を開始するかですが、田口敏彦先生によりますとVAS (Visual Analog Scale)で20~30mmの改善を認めたときであり、0にする必要はないということです。また運動療法の注意すべき点として、運動に対する恐怖への対策、運動に伴う痛みと疲労への対策、運動のコンプライアンスを上げることなどを挙げておられました。具体的にどの様な運動を勧められるかということには、田口敏彦先生は朝夕の散歩を挙げておられ、それを記録することが大事であるということでした。また仲間を集めるなどの工夫もよいということでした。慢性疼痛に対しては痛みに執着せず、痛みが出てもやりたい動きをする、そして痛みがとれれば何をやりたいのか、何をしたいのかに焦点を当てることを勧めるのがよいと述べておられました。

運動器慢性疼痛に対する治療として田口敏彦先生は疼痛のメカニズムを理解し、薬物療法から始め運動療法に移行し、疼痛をゼロにするのが目標ではなく、目標設定したADL、QOLを達成することを目標にすることであると総括されました。大変参考になるご講演でした。


 
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