先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。特別講演は「皮膚疾患とQuality of Life~乾癬を中心に~」で講師は三重大学大学院皮膚科学講座准教授山中恵一先生でした。今回、山中恵一先生は悪性黒色腫、アトピー性皮膚炎、乾癬などの話を中心にわれわれ他科(皮膚科以外)の医師に講義して下さいました。 「しみ」や「ほくろ」は誰にもあるものでしょうが、これが悪性かどうかと問われると専門家でないと自信を持って答えられないものだと思います。一般に「ほくろのがん」と言われる悪性黒色腫はその臨床像の特徴をABCD rule (ABCDE rule)と言うそうです。AはAsymmetry(非対称性)、BはBorderline irregularity(腫瘍辺縁の不整)、CはColor variegation(色の濃淡)、DはDiameter generally greater than 6mm(直径が6mm以上)、EはElevation(隆起)です。成る程、これは理解しやすいですね。悪性黒色腫は内臓転移しやすいことが知られており、山中恵一先生は決して「ほくろ」を削ったり針で突いたりしないように注意喚起しておられました。それだけで転移することもあるそうです。また一時的に「ほくろ」の色が薄くなって、白く脱けてくるから放置するということもよくないそうです。やはり心配となれば、皮膚科専門医を受診するべきでしょうね。 アトピー性皮膚炎に関して山中恵一先生は痒みの症状に注目され、アトピー性皮膚炎の方が「いつ皮膚をかくか」を24時間モニター装着にて計測したデータを紹介されました。これを掻爬行動計測と言うそうです。大変緻密な調査により薬剤の有用性などを検討しておられ、感心致しました。 乾癬は私もあまり知識がなかったのですが、赤く盛り上がった発疹にカサカサした鱗屑ができてははがれていく慢性の皮膚疾患です。乾癬の原因はまだ完全には分かっていないそうですが、免疫反応の異常により表皮の新陳代謝が異常に活発になり角質が増殖して症状が発生するそうです。乾癬の症状は皮膚表面が赤く盛り上がる紅斑、角質が乾燥して深けフケのように剥がれ落ちる白色の鱗屑、角質が異常に増殖して盛り上がり皮膚は硬く乾燥してカサカサの状態になること、痒み、掻くことで刺激し患部がさらに拡がるケブネル現象、患部を掻くと出血するアウスピッツ現象などが特徴的だそうです。関節症性乾癬といって関節症状を生じることもあるそうです。乾癬治療では皮膚症状を改善するだけではなく、QOL(生活の質)を高めることが大切だそうです。最近では関節リウマチでも使用される生物学的製剤が乾癬治療にも用いられるそうです。山中恵一先生が紹介された写真では、乾癬患者さまの皮膚状態が生物学的製剤投与により劇的に改善されていました。現在、乾癬治療に対する生物学的製剤使用の可能な施設は限定されているそうです。近年では関節リウマチと同様に乾癬の治療もどんどん進歩してきているようですね。 |