先日、伊賀フォーラムが開催されました。特別講演は「生物学的製剤を用いたリウマチ治療について」で講師は、「せと整形外科」院長瀬戸正史先生でした。 瀬戸正史先生は鈴鹿市で「せと整形外科」を開業しておられますが、三重大学医学部附属病院、鈴鹿回生病院ではリウマチ専門外来を担当してこられ整形外科の中でも関節リウマチに造詣が深い先生としてご高名です。瀬戸正史先生のご講演は以前にも何度か拝聴いたしましたが、とてもわかりやすく勉強になるところが多いです。 瀬戸正史先生によりますとリウマチに対する生物学的製剤は既存の治療に比べますとその効果の大きさ、効果発現の高さ、関節破壊を防ぐ効果、日常生活動作を改善する効果などに優れているということなどに加えて、高額医療となること、種々の副作用に留意する必要性があることなどの特徴があります。重篤な感染症、活動性結核、うっ血性心不全、脱髄疾患、悪性腫瘍などは生物学的製剤の投与禁忌であり、瀬戸正史先生によりますと日和見感染を防ぐためにも生物学的製剤投与にあたっては血液検査で白血球数4000μL以上、リンパ球1000μL以上、β-Dグルカン陰性であることが望ましいということでした。特に呼吸器疾患には注意する必要があり、細菌性肺炎、肺結核、非結核性抗酸菌症、ニューモシスチス肺炎、間質性肺炎、他の呼吸器合併症など様々な呼吸器疾患に注意する必要があります。このあたりはわれわれ整形外科医が苦手とする分野ですね。生物学的製剤投与にあたっては、結核の既感染が疑われる場合には抗結核薬の予防投与が推奨されています。 瀬戸正史先生は関節リウマチ患者の就労状況にも注目しておられます。瀬戸正史先生によりますと関節リウマチ患者の方が関節リウマチのために休職を余儀なくされている方が約60%おられる上に、日常生活に不便を感じておられる方にいたっては約85%にものぼるそうです。生物学的製剤は高額なために関節リウマチ患者さまに経済的負担が大きいことはもちろんのこと、医療経済にも少なからず影響を及ぼしそうです。しかしながら生物学的製剤の効果によって関節リウマチ患者の症状が改善され就労可能となることで労働生産性は改善され結果的には経済的にも好影響を及ぼすようです。これは大変興味ある視点ですね。私はこの視点では考えてみたことはありませんでした。この医学の進歩が、どんどん関節リウマチ患者さまに還元されるといいですね。 |