第27回日本臨床整形外科学会の「こまちセミナー」として「ガイドラインから見た軟部腫瘍」の講演が行われ、講師は秋田大学整形外科理学療法学専攻教授岡田恭司先生でした。 軟部腫瘍の診療は良性、悪性の判別が困難であることなどもあり、一般整形外科では苦手に思われることも多いように思います。岡田恭司先生は整形外科でも軟部腫瘍治療を専門としないが、日常臨床においてプライマリーケアで軟部腫瘍症例に遭遇することの多いわれわれ一般整形外科医に、懇切丁寧に軟部腫瘍について解説してくださいました。 臨床症状では軟部腫瘍の痛みと大きさ、腫瘍の存在部位の深さが大切であるということです。良性腫瘍では痛みのない場合が85%、悪性腫瘍では痛みのない場合が70%であるそうです。痛みだけで良性、悪性の判別は難しそうですね。軟部腫瘍の大きさが5cm以上で筋膜よりも深部に存在する場合に、悪性の可能性が高くなるそうです。しかしながら神経系、脂肪系、血管系の腫瘍では例外が多いそうです。これだけ例外が多いことが診断と診療を困難にしているようですね。 画像診断ではMRI検査が有用です。岡田恭司先生はいくつかの特徴的なパターンを呈する症例を紹介されました。 良性、悪性の診断で最も信頼できるのは病理診断です。岡田恭司先生は軟部腫瘍の生検において、生検方法、皮膚切開、進入路の選択、ドレーンの留置方法など留意すべき点について解説してくださいました。軟部腫瘍の生検において適切な方法が選択されないと、後の治療に大変難渋することが多いようです。岡田恭司先生はそういった経験をたくさんお持ちのようです。岡田恭司先生は、軟部腫瘍の生検は十分な知識と経験を持ってから行う必要があり、十分な画像検査もなく局所麻酔下に切除を試みることは厳に慎むべきであると警鐘を鳴らされます。軟部腫瘍切除生検の適応は、①2-3cmより小さい、②皮下に存在する、③血管神経と離れている、④画像検査がある、の全てが揃っていることだそうです。 |