第27回臨床整形外科学会で初日のモーニングセミナー1が行われ、講演は「OAの新しい画像診断法と臨床への応用」で講師は千葉大学大学院医学研究院総合医科学講座東千葉メディカルセンターの渡辺淳也先生でした。 OAとはOsteoarthritis(変形性関節症)のことで、様々な原因により関節の痛みや腫れを生じ、それが続くと関節の変形をきたす病気です。整形外科のあつかう疾患の中で最も多い疾患の一つと言えるでしょう。OAは関節への繰り返す微小外力や加齢に伴い生じた退行変性を基盤として発生しますが、OAの初期に起こる変化は関節軟骨の変性です。渡辺淳也先生によりますと、関節軟骨は水分が70~80%、コラーゲンが15~20%、プロテオグリカンが2~5%で、血管に乏しく細胞密度が低いために、プロテオグリカンの減少やコラーゲン配列の不整化などが起こりやすいそうです。関節軟骨機能低下は軟骨自体の摩耗に加え周囲の骨増殖性変化を生じ、最終的に不可逆的な関節変形へと進行します。渡辺淳也先生によりますと、進行したOAに対しては外科的治療以外に有効な手段がないため、なるべく早期にOAの診断をし、進行予防のための有効な対策を取ることが大切であるということです。 MRI(磁気共鳴撮像)は、単純レントゲン写真では評価困難な関節軟骨など軟部病変の検知が可能であり、渡辺淳也先生は近年の新しいMRI検査の進歩で、形態学的評価に有用な3D isotropic MRIと質的評価に有用なT2マッピング、T1ρマッピングを紹介されました。渡辺淳也先生はこれらのMRI撮像法がレントゲン撮影や従来のMRI撮像法では検知できない早期の軟骨変性を捉えることが可能であり、また軟骨変性度を定量的に評価可能であることを示されました。 現在のところOAに対する疾患修飾性作用薬として臨床応用されているものはありません。渡辺淳也先生によりますと、ヒアルロン酸製剤、COX-2選択的阻害薬、骨粗鬆症治療薬の一部などが基礎的実験などにおいて軟骨保護作用を示すことからOAに対する疾患修飾性作用薬としての候補として挙げられるそうです。ヒアルロン酸を投与することにより粘弾性が上昇し、これにより人工膝関節置換術施行までの期間を延長することができたり、軟骨体積減少抑制を認めるそうです。OAにおける軟骨下骨変化と軟骨変性との関連性が研究されており、軟骨下骨脆弱化と軟骨変性が関連しているということです。このことにより骨粗鬆症の一部は、投与により関節裂隙狭小化が改善されたという報告もあるそうです。今まで骨粗鬆症とOAは原因も治療薬も別ですよ、と私も常々患者様に説明いたしておりましたが、今後は少し話が変わってくるのかもしれません。 渡辺淳也先生は基礎研究と臨床研究をリンクさせて大変興味ある研究をしておられ、とても感心致しました。 |