第30回三重上肢外科研究会の特別講演Ⅱは行岡病院リハビリテーション部理学療法科長山野仁志先生でした。 山野仁志先生は自身が野球選手として怪我に苦しんで断念せざるを得なかった経験をもとに、野球少年に自分と同じ思いをさせたくないという気持ちで現在の職に就き治療にあたっているそうです。また行岡病院整形外科副院長正富隆先生との出会いが、本当に自分の方向性を強固なものとし経験を高めることができたと感謝しておられました。 山野仁志先生は野球肘のリハビリテーションを次のように進めるそうです。 ①肘周囲筋柔軟性改善、②肩関節後方の伸張性改善(肩屈曲90度での内旋可動域改善)、③外旋筋力の強化、④投球動作の改善 肘周囲筋柔軟性改善では前腕屈筋、前腕伸筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋の順にストレッチの方法を紹介されました。 肩関節後方の伸張性改善では腹臥位で肩甲上腕関節の内旋可動域改善のための肩関節後方ストレッチングを紹介されました。これは野球肘の原因となる肘外反ストレス、伸展ストレスを回避するために重要であるようです。 外旋筋力の強化として側臥位と腹臥位で行う肩関節外旋筋力トレーニングを紹介されました。次に腹臥位で行う肩甲帯筋力トレーニングと、片手支持の腕立て伏せ位で行う肩甲帯筋力トレーニングを紹介されました。投球動作でボールリリース時に肩内旋動作により肩外旋筋にかかる強力な遠心性筋力(ブレーキング作用)が重要で、前鋸筋、僧帽筋下部の筋力が重要であるようです。 投球動作の改善としてまず肘痛が出る動作と出ない動作を自覚し、正しい投球動作に対する誤解を改め、正しい投球動作のイメージを持つことから始め、段階的にスローイング動作を会得していく方法を紹介されました。ポジションごとに必要な投球動作を改善していくことが重要であるようです。 講演では実際に野球経験者をモデルにして投球動作の改善指導が行われました。一歩ずつ段階を踏みながら、選手がわかりにくいときには選手の理解を助ける引き出しもたくさんお持ちのようです。野球のことは全くわからない私でも成る程!と思うところの多いわかりやすい指導でした。 山野仁志先生の野球選手に対する愛情が伺えました。
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