先日、慢性疼痛に関する講演会が開催されました。講演1は「慢性腰痛に関するオピオイドの使用成績」で講師は独立行政法人国立長寿医療研究センター整形外科医長酒井義人先生でした。 国立長寿医療研究センターは愛知県にあり、老化のメカニズムや認知症、骨粗鬆症、口腔歯科疾患などの治療、予防法の開発をし、高齢者の自立支援、QOLの向上のための研究など幅広く取り組んでいるそうです。また血液、尿、体の組織などの生体材料、検査データなどの医療情報を収集して多くの研究者に広く分配し様々な病気の研究に活用する「バイオバンク」というシステムを運用しているそうです。 酒井義人先生は整形外科、脊椎外科医長、骨粗鬆症科医長として診療にあたられており、慢性腰痛に対する治療経験を紹介されました。疼痛は侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛、混合性疼痛などに分類されますが、明確な区分は難しいと思われます。神経障害性疼痛診断ツールとしてPain DETECTなどがありますが、混合性疼痛もあり評価が困難な場合も多いかと思われます。酒井義人先生は豊富なデータから神経障害性疼痛は若年者に多い傾向があることを示されました。また腰部脊柱管狭窄症に合併する腰痛が多いことを指摘され、神経除圧のみで腰痛が改善する症例が多いことを報告されました。腰痛性間欠性跛行の症例に対して多裂筋の筋電図、筋音図を用いて評価しておられます。腰痛性間欠性跛行と動作性腰痛においては腰痛と下肢痛のLaterality一致率が、腰痛性間欠性跛行の方が高いことを指摘されました。 慢性腰痛に対して、初期にはNSAIDs、アセトアミノフェンを使用する場合が多いですが、最近はプレガバリン、トラマドールが有効である場合が多いことが報告されています。酒井義人先生によりますと、慢性腰痛に対して代表的なNSAIDs投与4週間行って無効であった症例に対して、プレガバリン、トラマドールそれぞれ投与したところ共に高率に有効であったそうです。効果発現までの期間はトラマドールの方が少し短かったようです。プレガバリンは神経障害性疼痛に対する薬です。トラマドールは侵害受容性疼痛に対してより有効であり、効果発現も速いという特徴があるようです。下肢症状のある腰痛、歩行時腰痛にはプレガバリンがより有効で、下肢症状のない腰痛、動作時の腰痛にはトラマドールがより有効であるという使い分けを示して下さいました。 高齢者にはアセトアミノフェンが第1選択になりますが、アセトアミノフェンではADLの改善は見込みにくいが、トラマドールではADLの改善効果もあるようです。また高齢者で腎機能低下、肝機能低下を認めていても、プレガバリン、トラマドール共に注意しつつ投与可能であるということでした。酒井義人先生の講演は具体的でわかりやすく、大変ためになりました。 講演2は「慢性疼痛治療に対する疼痛治療薬処方のコツ」で講師は浜松医科大学麻酔科・ペインクリニック科准教授五十嵐寛先生でした。 整形外科外来に来られる患者様の多くは痛みを主訴として受診されますが、痛み治療の一番の専門家はというと、ペインクリニックになります。痛みの治療で経験豊富なペインクリニックの五十嵐寛先生の講演は、とても参考になるものでした。 疼痛に対してよく使用されるアセトアミノフェンは最大投与量が1回1000mg、1日4000mgまで引き上げられました。アメリカでは疼痛に対してアセトアミノフェンが第一選択になりますが、鎮痛効果はトラマドールの方が優るようです。弱オピオイドであるトラマドールでは依存性は極めて低いということでした。五十嵐寛先生は自身の治療体験も披露して下さり、また多施設で治療不能であった症例などの紹介患者を数多く治療されており、大変勉強になることが多かったです。 |