先日、伊賀市で伊賀フォーラムが開催され特別講演は「超高齢化社会における健康寿命を考慮した骨粗鬆症マネジメント」で講師は浜松医科大学整形外科准教授星野裕信先生でした。 65歳以上人口の割合が7%超で「高齢化社会」、14%超で「高齢社会」、21%超で「超高齢化社会」と定義されるそうです。2013年9月15日時点で65歳以上人口は3186万人で、日本の総人口に占める割合は25.0%、人口の4人に1人が高齢者という世界一の超高齢化社会です。一方、健康寿命とは健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間です。日本人の平均寿命は男性79.55歳、女性86.3歳ですが、健康寿命は男性70.42歳、女性73.62歳です。健康寿命を延ばして平均寿命との差を縮めることが求められていますが、寝たきりへと繋がってしまう骨粗鬆症の治療は満足に行われているとは言えません。日本では骨粗鬆症1280万人に対して約200万人が治療されていますが、1080万人は未治療だそうです。 骨強度は骨密度と骨質により決まりますが、その寄与する割合は骨密度が70%、骨質が30%だそうです。骨粗鬆症に対する治療薬は近年、様々な薬剤が開発されています。その代表的な治療薬の一つはビスフォスフォネート製剤です。世界的には骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折は減少傾向にあるのに、日本では未だ増加傾向にあるのはビスフォスフォネート製剤の導入が遅かったことも一因ではと星野裕信先生は指摘しておられました。 脊椎椎体骨折、椎体変形による脊椎矢状面バランスとQOL(生活の質)との関連が指摘されており、容姿的変化だけではなく胸郭容量の減少、便秘や逆流性食道炎などの消化器症状なども骨粗鬆症が引き起こすことが指摘されています。脊椎後弯変形による逆流性食道炎ではプロトンポンプ阻害薬を用いても難治性である場合が多いそうです。 星野裕信先生は大腿骨近位部骨折や椎体骨折を予防することによる経済的効果についても言及されました。骨粗鬆症治療を広めて骨折を未然に防ぐことにより骨折の結果生じてしまう入院手術治療費の抑制に繋がりますし、個々の健康寿命、幸福寿命が延びることにも繋がると言えそうですね。 星野裕信先生は骨粗鬆症性骨折と鑑別を要する注意すべき疾患として多発性骨髄腫、転移性骨腫瘍、原発性上皮小体機能亢進症、骨軟化症、悪性リンパ腫などを挙げておられました。 |