11月に名賀医師会第60回臨床医のつどいが開催され、出席しました。講演は「ここだけはおさえておきたい認知症診療の“ツボ”」で講師は医療法人メドック健康クリニック副院長阿部祐士先生でした。阿部祐士先生は日本認知症学会専門医・指導医でメドック健康クリニックではもの忘れ外来を担当されています。 認知症の原因疾患には変性疾患、血管性疾患、感染、炎症、代謝性疾患、栄養障害、中毒、低酸素症、外傷、血腫、脳腫瘍など種々あります。阿部祐士先生によりますと、認知テストが正常でも認知症でないとは言えないということです。特にうつ病やせん妄との鑑別や合併もあり、介護者の「何か変だ。これまでと違う。」という直感が最も大切であるそうです。 まずは完治可能な認知症を病歴、画像検査、血液検査などから見つけ出すことが重要であるそうです。血管性認知症かどうかは画像所見によると思いますが、脳血管障害があっても認知症の原因とは限らず、アルツハイマー病と脳血管障害の合併も非常に多いようです。これはなかなか難しいですね。 次に変性性認知症の鑑別ですが、3大変性性認知症と言えばアルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症になります。アルツハイマー病は約200万人、レビー小体型認知症は50~80万人、前頭側頭葉変性症はそれらよりははるかに少ないらしいですが、鑑別のためには病歴が最も重要です。 アルツハイマー病の特徴は物忘れで病初期から強いエピソード記憶障害があり、三単語再生と言って三つの関連のない単語を記憶するという検査が有用です。その他に礼節保持、取り繕い反応、物盗られ妄想、後ろの家族に確かめようとする振り返り徴候などが特徴的症状です。 認知症の症状では記憶障害、見当識障害、失語、失認、失行などを中核症状といい、精神症状、感情障害、行動障害、意欲の障害などを周辺症状といいます。レビー小体型認知症の場合周辺症状が病初期から目立つことが特徴的なようで、幻視、妄想などを認めるようです。進行性の認知機能低下を認め、繰り返すリアルな幻視、パーキンソン症状、注意・覚醒度の顕著な変動を認めるときはかなりレビー小体型認知症が疑われるようです。 前頭側頭葉変性症は我が道を行くような行動が特徴的で、いつも同じコースを同じ時間に散歩するような常同行動、脱抑制、反社会的行動、食行動異常、自発性低下・無関心、意味記憶障害などが特徴的な様です。 変性性認知症の中でも、レビー小体型認知症と前頭側頭葉変性症は介護がとても大変なようです。 変性性認知症の薬物治療はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬になります。処方の使い分けのコツなども解説して頂きましたが、整形外科では診断、治療する機会もほとんどないので、まず疾患の理解から務めるようにしたいと思いました。 今では65歳以上の高齢者の15%以上が認知症であるそうです。他科といえども認知症治療は避けては通れなくなるのかもしれませんね。 |