昨年京都で第4回下鴨整形外科疾患フォーラムが開催され、出席しました。 講演1は「投球のメカニズムとコンディショニング:新しいコンセプト」で講師は医療法人MSMCみどりクリニック院長瀬戸口芳正先生でした。みどりクリニックは三重県津市にあるスポーツ医学専門のクリニックです。立派なトレーニング施設を備え理学療法士など多くのスタッフが在籍し、大変有名なクリニックです。また多くのプロ野球選手をはじめ、スポーツ選手の治療を手がけ、トレーニングの場にもなっているようです。 野球の投球フォームで投球加速期の腕の振りを分類することにより、パフォーマンスの良い、怪我をしないフォームを提案しておられます。瀬戸口芳正先生はこれをThrowing Plane Concept: TPCと表現し、ひとつの運動面上を肘、手関節が動き、一つの円弧を描くSingle Planeが理想的であると説明しておられます。一方、Double Planeになると運動効率が低くなり、関節への応力が大きくなり、障害の危険性が高くなります。この定義によりますと良い投球フォームというのが非常に理解しやすいですね。私のように野球をしない者でも、成る程と思いました。TPC理論に基づいたアスレティック・リハを紹介して頂きました。瀬戸口芳正先生はHi Benchをいう持ち運びできるトレーニングに使用するベンチを考案、作成しておられ、Hi Benchを用いたエクササイズを紹介して頂きました。何人ものプロ野球選手も使っているそうです。素晴らしいアイディアだと思いました。 講演2は「野球肘の診断と治療」で講師は国家公務員共済組合連合会横浜南共済病院スポーツ整形外科部長山崎哲也先生でした。横浜南共済病院スポーツ整形外科は多くのトップレベルのプロやアマチュアアスリートが治療を受けており、手術件数・手術成績ともに全国的にトップランクです。山崎哲也先生は、競技スポーツ選手に対して関節鏡視下手術治療などを施行し早期スポーツ復帰を実現している日本でトップクラスのスポーツドクターです。 野球肘の豊富な症例に関して紹介して頂きました。肘内側靱帯損傷では、奈良医大スポーツ医学講座教授熊井司先生が報告された前斜走靭帯のWrap around構造に注目され、前斜走靭帯の上腕骨付着部に剪断力がかかることによりWrap around部で変性が強いことを、豊富な手術症例による病理学的所見をふまえて報告しておられました。 肘内側靱帯損傷診断のための検査、保存治療、手術治療などに関して詳しく説明して頂きました。治療の原則は運動療法ということでした。 大変勉強になることばかりで、有意義な講演会でした。 |