先日、第29回三重上肢外科研究会が開催され出席しました。 特別講演1は「器質的障害と機能障害から考える肩関節障害のリハビリテーション」で講師は三仁会あさひ病院リハビリテーション科主任水谷仁一理学療法士でした。今回は特に肩関節疾患に対する理学療法に関する講演で、理学療法士の講演を聴く機会があまりないので、とても興味深く聴かせて頂きました。五十肩、腱板修復術後、投球障害に関して理学療法の理論から工夫、トレーニング方法など色々と紹介して頂きました。投球障害ではボールの握り(指腹握りと尺側握り)の比較や投球動作とシャドウピッチングとの乖離など、おもしろい着眼点における研究の成果を紹介して頂きました。 特別講演2は「日常診療によく見られる肩関節疾患―診断と治療法―」で講師は大阪医大整形外科助教三幡輝久先生でした。肩関節の解剖、肩腱板断裂、肩関節不安定症、肩関節拘縮に関して、詳細に解説して頂きました。腱板断裂では疼痛とともによく起こる症状である筋力低下は、しばしば認められる症状ですがKeeganタイプの頚椎症性神経根症が鑑別診断となり、肘屈伸筋力低下の有無をチェックする必要性を指摘しておられました。肩腱板断裂では大半を占める棘上筋腱断裂では肩外転筋力低下を認めますが、棘下筋腱断裂合併では外旋筋力低下、肩甲下筋腱断裂合併では内旋筋力低下、小円筋腱断裂合併では広範囲断裂でありDrop Arm Signを認めます。疼痛誘発テストである各種のインピンジメントサインは肩腱板断裂に対して感度は高いが特異度は低く、ペインフルアークサインは感度では低いものの特異度がより高く、ドロップアームサインでは感度はかなり低いが特異度が極めて高いということでした。治療は鏡視下に関節包修復術、再建術を行っており良好な結果を得ているということです。 肩関節不安定症では原因が外傷性の場合は手術治療も考慮されるが、非外傷性の場合は必ず保存治療が選択されるということでした。やはり鏡視下で手術治療をされるということでしたが、骨欠損が大きい場合には手術治療困難な場合があるということでした。 肩関節拘縮では原因が外傷性でも非外傷性の場合でも、保存治療が選択されるということでした。手術治療の選択には慎重さを要するようです。 今回の研究会は理学療法士の演題もあったために理学療法士の参加も多く、会場は満席で座るところも足りないくらいの大盛況でした。参加者の熱気が伝わってくる研究会でした。 |