本日、三重県保険医協会主催の講演会があり出席しました。記念講演は精神科医・立教大学現代心理学部映像身体学科教授香山リカ氏で演題は「いま子どもに教えたいこと~精神科医の立場から~」でした。 現在、日本では年間の自殺者がようやく3万人を下回ったそうですが、若年者の自殺者は逆に増加しているそうです。15歳から39歳までの若年層ではどの年齢層でも死因の1位は自殺だそうです。また世界的に見ても、これだけ自殺者の多い国は少ないそうです。そのような状況で精神科医の立場からいま子どもに教えたいことを香山リカ氏が提言してくれました。 香山リカ氏は“いまどきの子ども・若者”について考えるべきこととして「傷つきやすさ」「自己肯定感の低さ」「高い自己実現欲求」「万能の愛、無償の愛への幻想」などを挙げています。「傷つきやすさ」や「自己肯定感の低さ」に関しては、マイナスなことを受け止め、耐えることのできる力 (Negative Capability) の育成が大事なようです。「高い自己実現欲求」に関してはネット社会などにより情報量が多すぎて、逆に自分の価値を低く見積もってしまう傾向や、若年者には「自分らしさ」を大切にするということにとらわれすぎる傾向があるようです。自分でも気付いていない自分や「無意識」というものを考えると、若年層では尚更狭い自分という枠にとらわれてしまうという指摘は成る程と思いました。「自分探し」というものの問題点は、今の自分はダメという意識とセットになっていることだと香山リカ氏は述べておられました。「万能の愛、無償の愛への幻想」に関しては、人に対して理想化と脱価値化の両極端に振れてしまう若年層の不安定さ、危うさを述べておられました。 香山リカ氏はこのような若い人たちに伝えたい“処方箋”として、何者かにならなければいけない、なんてことはない、あたりまえの生活がなんとかできるだけでも、上出来だ、他人と比べるのは全く意味がない、みんなそれほどかわりはない、ほとんどの失敗なんて、たいしたことはない、困っているときには、ひとを頼ったっていい、とエールを送っています。また家族や支援者に伝えたい“処方箋”として、「完璧な子育て」なんてない、いらない、家族や支援者も自分を大切に、ときには距離も置こう、とエールを送っています。そして香山リカ氏は、少しだけ外に目を向ける力をもつことを推奨しておられました。 今後の日本において、自殺という悲劇が繰り返されないように祈るばかりです。 |