先日、第30回奈良県骨・関節研究会が開催され特別講演として東京医科大学整形外科准教授高瀬勝己先生の「肩鎖関節周辺損傷における新しい知見と今後の展望」という講演を聴きました。 肩鎖関節周辺損傷は肩外側を打撲して受傷することが多く、鎖骨外側端骨折、肩鎖関節脱臼などが代表的です。 高瀬勝己先生は関節鏡を用いた手術を行い、入院期間を短縮し早期の社会復帰およびスポーツ復帰を目指しておられますが、鎖骨外側端骨折に対しても鏡視下円錐靱帯再建術施行していると紹介して頂きました。 またもう一つの代表的な外傷である肩鎖関節脱臼はRockwood分類という分類があり、大雑把に言ってType 1が肩鎖関節捻挫、Type 2が肩鎖関節亜脱臼、Type 3が肩鎖関節脱臼、Type 4,5,6がより重度の肩鎖関節脱臼となります。 高瀬勝己先生は解剖学的研究とMRI検査による詳細な検討によりType 2においては、菱形靱帯は損傷されているものの円錐靱帯は温存されている場合が多いことを明確に示して下さいました。 肩鎖関節脱臼の治療はType 1,2は保存治療(手術をしない治療)、Type 4,5,6は手術治療が勧められます。Type 3に関しては治療方針について、保存治療か手術治療か意見が分かれるようです。これは両者でその結果に有意差を認めないからの様ですが、それぞれのメリット、デメリットを考えて症例に応じた治療方針の選択になるものと思われます。 高瀬勝己先生は手術治療を選択した場合の注意点として、菱形靱帯と円錐靱帯など個々の靭帯を解剖学的に再建する必要性を指摘しておられました。また40歳以上の症例では、受傷機転が類似するために腱板損傷の合併が多く、同時に治療する必要性を指摘しておられました。 |