先日、伊賀地区骨粗鬆症学術講演会が開催され、藤田保健衛生大学医学部内分泌・代謝内科准教授鈴木敦詞先生の「骨粗鬆症治療2013~より長くより強く骨を維持するために~」という講演を聴きました。 鈴木敦詞先生は内科的な視点から糖尿病などの生活習慣病と骨粗鬆症との関連性を研究しておられます。高血糖とインスリン欠乏はカルシウム吸収低下を招き、糖尿病では骨代謝とカルシウム代謝のバランスが悪化するということです。その結果糖尿病の方は骨折のリスクが増加し、1型糖尿病では6.4倍、2型糖尿病では2.2倍、骨折の危険性が増大するそうです。 高齢者ではBMI(肥満指数)が高いほど、死亡率が低いというデータがあるそうです。これはかなり意外なデータですね。メタボリックシンドロームなど中年期の肥満による弊害は常々指摘されますが、「やせ」による弊害はあまり指摘されないように思われます。高齢者のやせは筋減少症による骨脆弱性に繋がるからだそうで、決して太ることが骨によいわけではなく痩せることが骨折のリスクを増大させるために良くないということです。 骨粗鬆症治療の代表的な薬剤であるビスフォスフォネート剤でも短期間に結果が出るわけではなく、鈴木敦詞先生は患者様に2,3年は服用することで椎体骨折(背骨、腰骨の圧迫骨折)のリスクが低下すると説明しておられるそうです。リスクとベネフィットのバランスが重要で、よく取り上げられる顎骨壊死や大腿骨転子下骨折の危険性を恐れるあまりにビスフォスフォネート剤による治療を躊躇うべきではないと指摘しておられました。 鈴木敦詞先生は「名古屋骨を守る会」の事務局長を務められ、骨粗鬆症の啓蒙活動をしておられます。鈴木敦詞先生の提言する、若々しさを維持するための生活習慣は(1)中年期の体重増加、高齢期の筋減少を避ける。(2)適度な運動、外出の励行。(3)糖尿病の予防、管理。(4)禁煙。(5)新鮮な野菜の摂取。(6)何より明るく朗らかに!ストレスは骨も痛めるそうです。 人間の骨量は20歳くらいまで増加し最大骨量に達し、最大骨量を40歳代まで維持し、その後徐々に減少していくという経過をとることが知られています。成長期における栄養不足が最大骨量の低下を招き、ひいては将来骨粗鬆症に至ることは自明です。飽食の時代でも起こる成長期における栄養不足の大きな原因は無理なダイエットでしょう。鈴木敦詞先生はかつての「モーニング娘」今の「AKB48」の格好良すぎるスタイルに対して警鐘を鳴らしておられます。思春期には多少ふっくらした体型になるのが自然なようです。 鈴木敦詞先生は患者様にいつも「今日のあなたは昨日まであなたが食べた物でできている。」と説いておられるそうです。鈴木敦詞先生の「骨」に対する熱い思いと多くの方に少しでも良くなって頂きたいという気概を感じました。大変参考になることが多いですね。 |