四日市で行われた講演会の特別講演は大阪保健医療大学スポーツ医療学研究所教授中村憲正先生の「スポーツにおける軟骨損傷治療のパラダイム 現在と未来」でした。 スポーツ選手における軟骨損傷はスポーツ選手生命に関わる機能障害を生み、難治性であることから有効な治療法の開発が待望されています。その期待のためか、本研究会には大変多くの方が出席しておられたようです。 関節軟骨は無血管組織なので自己修復能力はきわめて低いです。また重度の軟骨損傷は将来的に高率に二次性関節症へと進行してしまいます。 現在の軟骨修復のオプションは①間葉系幹細胞の刺激、②代替物による置換、③細胞移植治療、などであるそうです。間葉系幹細胞の刺激としては、micro fractureなどの骨髄刺激法などがあり、約60-80%の症例で有効で、約半数がスポーツ復帰可能であるが、2,3年後には悪化することが多く、30-50%の病巣内に骨棘形成などが認められたということです。代替材料による置換としては、Mosaicplastyなどの自家軟骨移植などがありますが、ドナー側の障害の問題があります。 中村憲正先生は新しい方法として三次元人工組織(TEC)の作成に成功し、これは強い接着性を持ち移植部位に短時間で生体的に結合するそうです。軟骨損傷症例に対して、関節鏡視下に滑膜などを採取し、細胞培養センターで間葉系幹細胞を培養し、作成したTECを軟骨損傷部に鏡視下に移植することで軟骨修復を得るという臨床応用を目指しているそうです。 実現すれば画期的な治療方法ですね! |