先週、名古屋大学整形外科助教今釜史郎先生の「脊椎疾患の慢性疼痛治療」という講演を聴きました。 今釜史郎先生は脊髄髄内腫瘍の手術治療なども多く手がける脊椎外科のスペシャリストです。豊富な経験に基づいてわかりやすく脊椎疾患の慢性疼痛治療について解説して頂きました。 疼痛は従来から言われている侵害受容性疼痛だけではなく、神経の損傷あるいはそれに伴う機能異常によって起こる神経傷害性疼痛、あるいは器質的病変はなく心理的な要因によって生じる心因性疼痛などがあると言われています。いわゆる痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)は侵害受容性疼痛には有効ですが、他のタイプの疼痛にはあまり有効ではありません。 3つの疼痛は厳密に分けられるわけではなく、それぞれ個人によって色々な割合でその要素を含んでいるようです。慢性疼痛とは急性疼痛が起こってから、推定期間を超えて3ヶ月以上もの間疼痛が持続している状態です。ビリビリとかジリジリとした痛みは神経傷害性疼痛に典型的ですが、神経傷害性疼痛は慢性疼痛に移行しやすいです。 また脊椎関連慢性疼痛では神経傷害性疼痛が53.3%であったというデータを今釜史郎先生は示して下さいました。これはとても高率ですね!今釜史郎先生が、大変多くの疼痛に悩まされている患者様を診ておられることがよくわかります。 現在では様々な薬が開発されて、その組み合わせにより患者様の疼痛を少しでも軽減しようという取り組みがなされています。しかしながら各々の症例における疼痛の本質を見極めることは大変難しく、患者様一人一人としっかりと向き合い疼痛のタイプを十分に吟味しないとその解決は困難ですね。 今釜史郎先生のこのような困難な問題に対して真摯に取り組んでおられる姿勢に感銘を受けました。 |