広陵町中央公民館「かぐや姫ホール」にて、第25回奈良県スポーツ医・科学研究会、奈良トレーニングセミナー2012が開催され、出席しました。講師は市立奈良病院循環器科の守川先生とサッカー奈良クラブの羽中田監督でした。 守川先生の講演は「スポーツと突然死-日本人が注意すべきポイントは?-」でした。心停止に陥る原因として心筋の異常と冠動脈異常があるということです。先日天皇陛下が手術をされたのは冠動脈の狭窄によるものでしたね。若い世代では心筋の異常による場合が多く、死亡率も高いので注意を要します。水泳や音刺激、時には睡眠中に発作が起こることもあるらしく、家族歴の聴取が大事ということでした。日本人が注意すべきポイントとしては冠攣縮性狭心症が多いということでした。日本人の狭心症の約40%が冠攣縮性狭心症であり、特徴は早朝の運動で起こりやすく過換気でも誘発されるということでした。早朝のマラソンをされる方は特に要注意ですね。急激に運動負荷を増やさずに、十分なウオーミングアップが肝心です。心肺蘇生で最も重要なのは確実な胸骨圧迫(心臓マッサージ)をするということでした。これにはとっさの時には脈の確認(頸動脈)や人口呼吸が難しいということがあるようです。もう一つはせっかく胸骨圧迫をしていても不十分な場合(押し方が足らない、回数が少ないなど)が多いようです。またAEDを装着して解析の結果でショックが不要であると判断された場合でも心肺停止状態に陥っている場合があるので、その場合でもしっかりとした胸骨圧迫を実施することが重要で、このことが救命に繋がると言えるようです。守川先生の講演はとてもわかりやすく、勉強になりました。 羽中田監督の講演は「サッカーからの贈り物」という演題でした。羽中田昌さんは山梨県出身で小学校から韮崎高校までサッカーの有名な選手でしたが、高校卒業後に不慮の事故で脊髄損傷を受傷し下半身不随となり車いす生活を余儀なくされています。しかしながらサッカーの情熱を失うことなく一念発起し公務員を辞しバルセロナ留学を経て最高位のS級ライセンスを取得し今年から奈良クラブ監督に就任したそうです。バルセロナでコーチの門を叩いたときに、実践テストがあるので下半身不随では無理と断られて非常に落胆したそうです。その時に「諦めなければ目標はかなうんじゃないの?」とおっしゃった奥様の言葉に励まされたそうです。また自分を信じることの大切さを教えてくれたセルジオ越後さんとの出会いなど、サッカーを通じて得た人との出会いは下半身不随になったから余計にたくさん得ることができたとおっしゃっておられます。申し込めば5000万円を得ることができたはずのサッカーくじも得られなかったからこそ3冊もの本を執筆することに繋がったので逆に良かったと思っているということや、コロンブスの塔、サグラダファミリア、バルセロナのスタジアムなどを見上げることにより謙虚な気持ちを持つことができて成長に繋がったという話などは、人間にとって大事なものは何かということを教えてくれるような興味深い体験談でした。今は「愉しもう!」を合い言葉にサッカーの奈良クラブ監督としての活動を開始されたということでした。 本当に素晴らしいスポーツ指導者が奈良県に来てくれましたね。 |