半月板損傷とは、膝関節の屈伸や荷重位での回旋力が加わることで半月板が損傷、断裂、剥離した状態のことをいいます。
診断方法はMRI検査や関節鏡検査にて確定しますが、臨床症状の確認や徒手検査法などもあります。臨床症状として、関節裂隙の圧痛や膝くずれ、弾発音、引っかかり感、膝関節の屈伸時の疼痛などが認められます。半月板損傷に対する徒手検査法としてApley test(左図)とMcMurray test(右図)とがあります。
前者は、腹臥位にて膝関節を屈曲位にし、脛骨長軸に軸圧をかけながら内外旋させることで半月板にストレスをかけて疼痛を誘発するテストのことをいいます。後者は、背臥位にて膝関節を屈曲位から、下腿を回旋させつつ伸展させたときの弾発音や疼痛を再現させるテストのことをいいます。
MRI検査や関節鏡検査がなくても受傷機転や臨床症状の確認、徒手検査法等で所見を得ることが大切となります。
リハビリテーション科 服部 司
先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。特別講演は「認知症の鑑別診断」で講師は三重県立こころの医療センター院長森川将行先生でした。
厚労省のデータによりますと、2012年時点で認知症の方は約462万人おられ、2015年には700万人に達するという推計値を報告しています。つまり65歳以上の高齢者の5人に1人にあたる計算になるそうです。もの忘れは65歳以上の75%には認めるそうですが、もの忘れのパターンとしてあまり気にしなくてよい物忘れは部分的であり何かのきっかけがあると思い出すことができる、うっかり物忘れなどですが、認知症による物忘れになると日常生活上の出来事をまるでなかったことのように忘れてしまう、抜け落ちるように忘れてしまうことが特徴的であるそうです。記憶障害だけでは軽度認知障害ですが、失語、失行、失認、実行機能障害のどれか一つ以上が合併すれば認知症と診断されます。認知症における生活機能の障害となる中核症状は認知機能障害といい記憶障害、判断力低下、見当識障害、言語障害(失語)、失行、失認などですが、周辺症状としてせん妄、抑うつ、興奮、徘徊、睡眠障害、妄想などがあり、これら周辺症状として何らかのサインを出している可能性があり、こうした症状が引き金となり高齢者虐待に至ることもあるそうです。
森川将行先生によりますと認知症を引き起こす原因を考えるときに、全身性疾患と内服薬の影響を除外しつつ脳内の病因について検索を行うことが重要であるということです。内科的病因としては中毒、代謝性認知症など、薬剤の副作用としてさまざまな薬が原因となるそうですが、薬を追加しても減らしてもこういう減少が起こりうるということでした。
認知症の種類と割合ではアルツハイマー型が約50%、レビー小体型が約20%、脳血管性が約15%、その他が約15%だそうです。このうちレビー小体型認知症を疑うポイントとして、はっきりしている時とボーッとしている時があること(認知機能の変動)、実際にそこにない物が見えたり、いない人が見えることがあること(幻視)、体を動かしにくい、手足がふるえる、歩きづらいといった症状があること(パーキンソンにズム)、睡眠時に大きな声の寝言や異常な行動があること(レム睡眠行動障害)などがあるそうです。これらのうち2項目以上該当すればほぼ確実だそうです。森川将行先生によりますと、レビー小体型認知症で気をつけないといけないのは、レビー小体型認知症の始まりの多くは「もの忘れ以外」の症状であることだそうです。つまりレビー小体型認知症の進み方は、早い時期に現れやすい症状として幻視、誤認、パーキンソン症状、レム睡眠行動障害、うつなどで、認知機能の変動や低下はあとから出てくるそうです。
アルツハイマー病における危険因子として糖尿病、中年期の高血圧症、中年期の肥満、喫煙、うつ病、低い教育成績、身体的不活発などが報告されており、これら7つの全ての危険因子を10~25%減少させると世界中の110~300万人のケースを防ぐことができる可能性があると報告されています。
森川将行先生によりますと、認知症の予防や進行を遅らせるためにできることは禁煙、適度な飲酒、身体疾患の管理(生活習慣病の予防)、炎症反応を抑える、食生活(果実などビタミン類、野菜、魚、水分)、社会環境要因(ストレス対処行動、余暇活動)、学習・認知機能訓練、有酸素運動、十分な睡眠(適度な午睡)などだそうです。森川将行先生が認知機能の進行を遅らせるために日常外来で勧めていることは脂質、総カロリーの過剰な摂取を抑える、身体の病気は確実に治療、野菜・果実摂取、魚摂取、十分な水分摂取、適量のアルコール飲料、緑茶、大豆、カレースパイスなど、運動と余暇活動、頭の訓練(速い計算、文章を音読)などだそうです。ストレスに注意して、笑いを忘れずに、ということが重要だそうです。そして介護を全て家族で抱え込まない、介護保険を上手に利用し、家族の健康が本人の幸せだということでした。
森川将行先生は奈良医大出身で、私とも近い学年になります。それまで面識はありませんでしたが、奈良医大出身の先生が活躍しておられる姿を見せてもらって大変嬉しく思いました。
「野球肘」は投球動作の中で肘関節の内側・外側などに痛みが生じるものです。そして当院でも、この野球肘で理学療法を受けられる患者さんが多くいらっしゃいます。野球肘では、図の○印のタイミングで肘関節痛が生じることが多いです。
痛みが生じる部位は肘関節なので、もちろん肘関節で問題が生じているのですが、野球肘の患者さんでは、○印のタイミングで肩甲骨が後ろにしっかり引き切ることができない方が非常に多いです。それは筋肉の柔軟性が低下しているがために肩甲骨を後ろに持っていけないケースと、筋肉の柔軟性はあるけれども筋力低下によって肩甲骨を後ろに持っていけないケースの2パターンがあります。
様々な理由で肩甲骨を後ろに持っていけなくなると、○印の時期に腕を後ろに持っていけなくなるので、早期から体が開いて肘が下がったり、早期から肘が前に出さないと投げられなくなります。このような投球フォームを繰り返すことにより肘関節の内・外側に負荷がかかり続けて野球肘を発症することとなります。
そのため当院の理学療法士は、症状が出ている肘関節はもちろんのこと、肩甲骨の可動性チェックや筋力評価、フォームチェックなどを行うことで患部の負担軽減を図り、症状改善に努めています。
リハビリテーション科 小野正博