大腿骨近位部(脚の付け根)は骨粗鬆症が原因で骨折しやすい部分と言われています。この骨折の原因の多くは転倒であり、立った高さからの転倒でも起こります。男性は75歳くらいから、女性は70歳すぎると急増します。通常は手術をしてリハビリを行いますが、大腿骨近位部骨折を起こした方の多くは歩行能力やその他の日常生活動作、さらには認知機能の低下を来すこともあります。
先日参加した骨粗鬆症リエゾン研修で聴いた、大腿骨近位部骨折を起こした方の一年後のデータを皆様にもお示ししたいと思います。
約60%の人が何らかの介護が必要となる。約40%の人が一人で歩行ができない状態になってしまう。約20~24%の人が死亡する。約33%の人が施設に入所している。という現状だそうです。そして大腿骨近位部骨折を起こした人の約50%は以前に何らかの骨折を起こしていたそうです。
このような現状からも骨粗鬆症の治療を開始し、継続していくことが重要だと言えます。しかし転医や入院を機に治療が中断されてしまう、治療効果が感じられずに治療を中断してしまうなどの現状があります。
いつまでも健康で自立した生活を送れるように、私達骨粗鬆マネージャーは医療者間での連携を図りながら、治療率の向上と治療の継続を目指して地域の方々に貢献していきたいと思っています。
骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献
骨粗鬆症の最新治療、石橋英明監修、主婦の友社、2016
2018年4月24日開催、骨粗鬆症リエゾンセミナー 健愛記念病院整形外科副院長 池田聡先生の講演内容より
本日、天理親里競技場におきまして「2018 ラグビー スプリングカーニバル IN 奈良 天理大学vs明治大学」が行われました。グラウンドドクターとして参加いたしました。
素晴らしい天気でしたが、かなり暑くて初夏の様な炎天下での試合となりました。天理親里競技場の芝生のコンディションも非常によく、観客席にも多くの方が観戦に訪れ熱心に声援を送っており、大変盛り上がっておりました。
関西と関東の大学強豪校同士の対決で、奈良県でこの様なハイレベルな試合が観戦できるのはうれしい限りですね。
試合はポスターに書いている「闘志たぎらせ力の限り」という言葉通りで両チームとも真っ向勝負を挑み、大変見応えのある好ゲームであったと思いました。試合は体格に劣る天理大学が接戦を制しましたが、両チームの健闘に拍手を送りたいと思います。
先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。演題は「血液疾患を見落とさないために」で講師は三重県名張市桔梗が丘の信岡医院院長信岡亮先生でした。
信岡亮先生は琉球大学を卒業後、大阪大学血液腫瘍内科に入局され、箕面市立病院内科、市立吹田市民病院内科などを歴任され、平成28年から現職であるということでした。
信岡亮先生によりますと日本では超高齢社会となってきているために、高齢化が進み血液疾患も増えてきているということです。また医学の進歩により治療法もどんどん変わってきているということでした。しかしながら血液内科専門医は多くなく、しかも都市部に偏在しているので、地方には血液内科専門医がとても少ないのが現状であるようです。信岡亮先生が勤めておられた市立吹田市民病院には血液内科医が7名もいらっしゃったそうです。いかに人口が違うとはいえ、都市部と名張、伊賀地区とは血液疾患の診療状況が全く異なるようですね。
信岡亮先生によりますと血液疾患を見落とさないためには、全身倦怠感、貧血症、微熱などの症状に注意する必要があるということですが、信岡亮先生は次の6つの症状について注意点を解説して下さいました。6つの症状は①貧血、②発熱、③出血傾向、④リンパ節腫大、⑤脾腫、⑥繰り返す骨折、多発する骨折、腰痛です。
貧血は多くの血液疾患で認めるということです。一般にヘモグロビン8~9g/dl程度で顔色不良、動悸、息切れなどの症状を認めるそうですが、信岡亮先生によりますと実際は急激にヘモグロビン低下すれば早期に症状が発現し、ゆっくりと低下すれば貧血症状は出現しないということでした。信岡亮先生によりますと走ると息切れを主訴に受診された女性のヘモグロビン値が約2であり、驚いたがヘモグロビンが徐々に低下したために症状が軽微であったのであろうということでした。
発熱、微熱も要注意ということです。信岡亮先生によりますと「カゼ」は曲者だということでした。感冒症状であっても1週間以上症状が継続すれば血液検査を施行し血球数、分画などを検査すべきであるということでした。
出血傾向に関しては、皮下出血、粘膜出血(鼻腔、消化管、性器)、口腔内出血などに注意すべきであるということでした。咀嚼による物理的粘膜損傷で口腔内出血を起こすことが多く、信岡亮先生によりますと口腔内観察が重要であるということでした。基礎疾患のある患者で出血傾向を認める場合、DIC(播種性血管内凝固症候群)に気をつける必要があるということでした。また私は馴染みが無く知りませんでしたが、急性骨髄性白血病(AML)のM3というタイプでは初発からDIC症状が出ることがあるということでした。
リンパ節腫大は感染性と腫瘍性に分けられて、疼痛があると感染性、疼痛がないと腫瘍性の場合が多いそうです。リンパ節は全身広範に存在しますが、まず耳下腺リンパ節、顎下リンパ節、腋窩リンパ節から触診するのがよいということでした。リンパ節の径1cm以上では生検の適応であるということですが、1cm未満の場合は生検困難であり経過観察とするということでした。
脾腫といえば肝硬変、門脈圧亢進症が想起されますが、季肋下8cm以上の巨大脾腫であると造血性腫瘍である場合も考えないといけない、ということでした。
繰り返す骨折、多発する骨折、持続する腰痛の場合は、多発性骨髄腫を念頭に血液検査を施行し、血中総蛋白測定などを行い、総蛋白上昇などを認める場合は多発性骨髄腫の可能性もあるということでした。ベンスジョーンズ型多発性骨髄腫の場合には尿蛋白は増加するものの血液中蛋白上昇は伴わないので注意を要するということでした。
信岡亮先生は血液検査について注意すべき点などについても解説して下さいました。まず、第一に過去の結果と比較することが重要で、血球数に関しては正常値を過信してはいけないということでした。白血球が増加、または減少している場合には①過去の結果と比較する、②現在の症状、既往歴、投与されている薬剤の確認、の手順が大事であるということでした。
好中球の場合、好中球増加症(7000/μl以上)は反応性として過剰な運動、低酸素、ストレス、ステロイド、感染などが考えられるそうです。腫瘍性として慢性骨髄性白血病(CML)などが考えられるそうです。好中球減少症(1500~2000/μl以下)の場合は感染性、薬剤性、腫瘍性などが考えられるそうです。
リンパ球の場合は、リンパ球増加症(4000/μl以上)では感染性として伝染性単核球症、百日咳、水痘、粟粒結核などが考えられるそうです。腫瘍性の場合は慢性リンパ性白血病(CLL)、リンパ腫の白血病化などが考えられるそうです。リンパ球減少症(1000/μl未満)は急性感染症などが考えられるそうです。
末梢血に芽球が出現することは極めてまれであり、末梢血に芽球を認めれば白血球の状況にかかわらず専門医に紹介する必要があるということでした。
血液疾患は内科以外の科ではもちろんのこと、一般内科専門医の先生でも、どちらかというと馴染みの少ない分野であるのかもしれません。信岡亮先生は専門外の私にもわかりやすく、丁寧に解説して下さいました。ありがとうございました。