2018 年 1 月 のアーカイブ

待ち時間のお知らせ(1月15日~1月20日)

2018年01月20日(土) 待ち時間のお知らせ1新着情報

1月15日~1月20日

「CKD診療のこれから。~名張での病診連携のありかた~」

2018年01月14日(日) 院長ブログ

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先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。特別講演は「CKD診療のこれから。~名張での病診連携のありかた~」で講師は鈴鹿回生病院腎臓センター長の村信介先生でした。の村信介先生は第1,3,5週の水曜日に名張市立病院でも診療を行っておられます。の村信介先生は腎臓内科で非常にご高名な先生で、名賀医師会では約5年ぶりに、ご講演を拝聴いたしました。

CKD(慢性腎臓病)とは、腎臓の働き(GFR)が健康な人の60%以下に低下する(GFRが60mℓ/分/1.73㎡未満)か、あるいは蛋白尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を言います。 年をとると腎機能は低下していきますから、高齢者になるほどCKDが多くなります。

CKDでは腎機能がある程度まで低下してしまうと腎臓はもとに戻ることはないために、早期発見・早期治療により腎臓の機能をこれ以上低下させないことが重要ですので、の村信介先生は治療が必要な患者様の選別と早期の介入が必要であると説かれます。そのためにの村信介先生は①推算eGFRを用いた腎機能の正しい評価、②ハイリスク群の選別、③早期介入、④重点的治療が重要であるということでした。③、④には病診連携が重要であるということです。一般内科から腎臓内科へ患者紹介される理由は①クレアチニン上昇、②検尿異常、③ESA(赤血球造血刺激因子製剤)の適応、④カリウム上昇などであるそうです。の村信介先生はさらに①血圧が下がらない。②尿蛋白が増えてきた、③ESAが効きにくくなった、④もっと痩せさせたい、⑤もっと食養生させたい、⑥医療費を下げさせたい、など実に多岐にわたる内容での紹介を待っているということでした。腎臓の働きが低下する原因は加齢、糖尿病、高血圧症、高脂血症、高尿酸血症、喫煙、肥満、貧血など生活習慣病、メタボリックシンドロームが原因となることが多いようです。各種疾患の治療による患者満足度と薬剤の貢献度の調査によりますと、CKD治療の患者満足度と薬剤貢献度は他疾患に比べて低いそうです。CKDになってしまえば、なかなか治療も奏効しないようです。そのことも踏まえての村信介先生はCKDになることを防ぐために、高血圧症の治療でもより厳格なコントロールが必要であると説かれます。血圧を下げるために減塩、禁煙、体重や血糖のコントロール、思い切った降圧剤が必要であるということでした。尿蛋白はの村信介先生によりますと腎糸球体炎症の程度を反映しているだけではなく、腎糸球体内高血圧、つまり腎糸球体負荷の上昇を反映しているということでした。尿蛋白の軽重を知ることが重要で、の村信介先生は尿検査では尿蛋白定量検査をすることを勧めておられました。

CKDでは貧血が発症するので、薬物療法としてESA(赤血球造血刺激因子製剤)は重要であるということでした。ある種の高脂血症治療薬がクレアチニン上昇に繋がるので注意を要するということでした。運動はCKD発症に影響を与えるか明らかではないが、適度な運動はすべきであるということでした。喫煙本数が20本/日であればCKD発症、進行因子であるそうです。骨粗鬆症などでビタミンDを服用されている方が感冒などにより脱水症状になるとカルシウム排泄低下により高カルシウム血症になる危険性があるということでした。高カルシウム血症になると意識障害、意識低下、食欲不振ないどを招くために、風邪などひいて脱水状態にある方は、風邪をひいたら1週間くらい休薬する方がよいということでした。整形外科には多くの骨粗鬆症患者様が来られ、当クリニックでも随分多くの方にビタミンDを服用していただいていますが、高齢者が多いですので腎機能にも気を配る必要性と重要性を再認識いたしました。CKDにおける尿酸管理では「6,7,8の原則」というのがあるそうで、治療目標が6、そして7mg/dl以上を高尿酸血症、8mg/dl以上となると治療開始の目安となるようです。以上のように様々なケースでの注意点を教えていただきまして、大変勉強になりました。

ちなみにの村信介先生のお名前の、「の」の漢字は田又の下に土と書くかなり珍しい漢字で、このホームページのワープロソフトでは表記されませんので、仕方なく平仮名の「の」で代用させていただいております。の村信介先生によりますと、文豪「国木田独歩」の代表作である「武蔵野」は原本では「の」の漢字がの村信介先生の漢字の「の」と同じ漢字であるそうです。講演中にはその原本の写真も見せて頂きました。由緒正しい歴史ある漢字ですね!

待ち時間のお知らせ(1月4日~1月13日)

2018年01月13日(土) 待ち時間のお知らせ1新着情報

1月4日~1月13日

「日本ラグビー 凱歌の先へ」

2018年01月08日(月) 院長ブログ

日本ラグビー凱歌の先へ

 

日本ラグビー狂会編・著「日本ラグビー 凱歌の先へ」を読みました。本書はラグビーワールドカップ2015イングランド大会の翌年に発表された本で、日本ラグビー狂会とは「面白いラグビーが観たい」というシンプルな要求においてのみ結びついている集団だそうです。日本代表がラグビーワールドカップ2015イングランド大会で活躍し脚光を浴びてから2年余り、気がつけばラグビーワールドカップ2019日本大会はもう来年に迫っています。

昨日は大学選手権決勝が行われ、秋の対抗戦から進化を見せた明治大学をかわした帝京大学が辛うじて1点差の逆転勝利を得るという名勝負を演じました。今日は高校ラグビー決勝が行われ、共に優勝候補筆頭のAシード校を破った大阪勢同士の対戦となりました。前半規律のとれた組織的な防御の素晴らしい大阪桐蔭がリードしましたが、展開力に勝る東海大仰星が後半に逆転し勝利を得ました。こちらも終了間際に7点差を追う大阪桐蔭がゴール前で攻め立て、終了のホイッスルが鳴るまで結果のわからない手に汗握る名勝負でした。残る国内の主な試合は1月13日(土)の日本選手権決勝、サントリー対パナソニックの試合です。こちらは日本最高峰の試合が楽しめそうです。その後はサンウルブズ、日本代表の試合と、翌年にラグビーワールドカップ2019日本大会が控えるシーズンの幕開けとなるようです。

本書ではラグビーワールドカップ2015イングランド大会での日本代表の活躍と、その直後の様子などを詳細に伝えて、来たるラグビーワールドカップ2019日本大会での日本代表の活躍への期待を抱かせます。本書の第六章の「辺境のクリアリング」だけは地方の地元高校の合同チームの話です。こちらも日本ラグビーの情景の一つで、地元高校生たちの経験は尊いものだと思いました。

「三重県における肝炎啓発及び受検・受診・受療の現状~全例治癒の時代を目前にした今、ピットフォールとは?~」

2018年01月05日(金) 院長ブログ

三重県ウイルス性肝炎予防1 三重県ウイルス性肝炎予防2

 

先日、名賀医師会研修会が開催されました。講演は「三重県における肝炎啓発及び受検・受診・受療の現状~全例治癒の時代を目前にした今、ピットフォールとは?」で講師は三重大学医学部附属病院消化器内科教授竹井謙之先生でした。本講演は肝疾患非専門医向け肝炎対策説明会として開催されました。

ウイルス性肝炎については、以前は治療困難とされていましたが、医療の進歩により安全かつ有効に治療できるようになったそうです。しかしながら肝炎ウイルス検査自体を受けたことのない方や陽性と判明していても医療機関を受診していない方が未だに多く、受検勧奨や肝炎に関する情報提供体制の整備、地域連携による受検・受診・受療の促進が課題となっているそうです。本説明会の目的は肝疾患非専門医を受診している患者の中から肝炎ウイルス陽性者の掘り起こし等を勧め、医療機関への受診・受療に繋げていくことであるそうです。

竹井謙之先生によりますと三重大学消化器内科における肝癌の成因はC型肝炎ウイルス陽性が71.2%、B型肝炎ウイルス陽性が15.4%、アルコール多飲と他の慢性肝疾患が12.2%、肝疾患なしが1.2%であるそうです。C型肝炎ウイルス感染経路は輸血(1992年以前)、血液凝固製剤の投与(1988年以前)、フィブリノゲン製剤の投与(1994年以前)、刺青、ピアスの穴開け、注射針・注射器の共用(薬物常習者など)、針刺し事故、性行為、母子感染などであるそうです。

竹井謙之先生によりますとC型慢性肝炎治療はなぜ必要かというと、肝硬変、肝癌への伸展を防ぐことであるそうです。C型慢性肝炎の自然経過はC型肝炎に感染すると30~40%は自然治癒し、60~70%はC型急性肝炎となり、C型急性肝炎になると100%C型慢性肝炎に移行し、肝硬変、肝細胞癌へと高率に移行するそうです。

竹井謙之先生によりますとC型慢性肝炎治療はどんどん進化しているそうで、ジェノタイプ別にみたC型肝炎ウイルスのⅠb型は日本で最も多く(約70%)インターフェロンには治療抵抗性であるそうですが、このタイプのC型慢性肝炎の治療成績は新薬により飛躍的に向上しているそうです。主な肝発癌高リスク因子は年齢:65歳以上、ALT値:30IU/L超、血小板数:15万/μl未満、肝線維化:F2以上、AFP値:10ng/mL以上で、C型肝炎の患者さんでいずれかの項目に該当する方は、肝発癌の高リスク群だと考えられているそうです。竹井謙之先生によりますと肝発癌率は高齢者の方が早く進むことや、ALT値正常例でも肝組織像の伸展がみられるのでALT、AST値が正常であっても油断ならないと強調されました。経口内服薬のSOF/LDVという治療では、三重大学の初回投与後12週で100%近い効果が認められ、副作用もほとんど認めなかったということでした。しかしながら非常に高額であるそうですが、竹井謙之先生によりますとC型肝炎は制圧が目前であると言えるそうです。

B型肝炎ウイルスについては、世界の人口約60億人中、約20億人が感染既往者であり、B型肝炎ウイルスキャリアが約3億5000万人~4億人で、B型肝炎ウイルスキャリアのうち15~40%が肝硬変、肝疾患、肝細胞癌へ進行するそうです。感染既往者の数のあまりの多さに驚きました。世界では毎年約100万人がB型肝炎ウイルス関連の疾患で死亡しており、現在死亡原因の第10位であるそうです。日本のB型肝炎ウイルスキャリア(HBs抗原陽性者)は約130~150万人で全人口の約1%であるそうです。竹井謙之先生によりますとB型肝炎ウイルス量が多いと発癌の可能性が増すそうで、HBV DNA量と肝発癌は相関するそうです。免疫抑制剤によりB型治癒肝炎が劇症化することがあり、B型肝炎ウイルス再活性化が問題になっているそうです。HBs抗原が消失しても、肝細胞にはHBVが残留しているそうで、免疫により活動が抑えられているB型肝炎ウイルス既往感染の再活性化をde novo B型肝炎と言うそうです。de novo B型肝炎では肝細胞におけるB型肝炎ウイルスの潜在感染があるところに化学療法や免疫抑制療法などによりB型肝炎ウイルス再増殖し、その後に免疫状態回復すると肝炎発症するそうで、de novo B型肝炎は通常のB型肝炎に比して劇症化する率が高度で、致死率も高いそうです。

B・C型肝炎ウイルス検査で陽性と判明しながら、定期受診を受けていない感染者が少なくとも53万人に上ることが厚生労働省研究班の調査で分かったそうです。53万人~120万人が定期受診をしていないと推定され、感染に気づいていない感染者は78万人、治療中の患者も含む全体の感染者数は210万人~280万人と推定されるそうです。薬の開発が進み、早期治療で慢性肝炎への進行をほぼ押さえ込めるようになった一方で、自覚症状が少ないために陽性と分かっていても受診行動につながりにくいそうです。

インターネットで肝炎ウイルス検査マップというサイトがあるそうで、検査施設を探すことができるようです。また三重大学医学部附属病院内には肝炎相談支援センターがあり、様々な啓発活動を実施しているそうです。課題は重症化する前に新規症例の掘り起こしだそうです。血液検査でHBs抗原陽性、HCV抗体陽性の方は専門医を受診し、治療・フォローアップに関する方針を相談することが重要であるということでした。

三重県では肝炎ウイルス陽性者の方を対象として初回精密検査または定期検査の費用の一部又は全部を助成するそうです。問い合わせ先は各地の保健所です。

竹井謙之先生のご講演を拝聴して、肝炎治療の変遷を垣間見ることができました。私が大学の講義で習った30年前とは全く様変わりです。医療の進歩を実感いたしました。