2017 年 9 月 のアーカイブ

待ち時間のお知らせ(9月25日~9月30日)

2017年09月30日(土) 待ち時間のお知らせ1新着情報

9月25日~9月30日

第5回糖尿病を考える会 in 名張

2017年09月28日(木) 院長ブログ

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先日、第5回糖尿病を考える会in名張が開催されました。特別講演は「患者さんのやる気を引き出す対話法~糖尿病コーチング~」で講師は佐世保中央病院糖尿病センター長松本一成先生でした。

コーチングに関しては、以前から興味はあったもののほとんど知識がなく、一度専門家の話を聞いてみたいものだと思っておりました。私が糖尿病の治療をすることはありませんが、森岡内科クリニック院長森岡浩平先生にコーチングの有名な先生が来るので、ということでお誘いいただき今回出席いたしました。森岡浩平先生もコーチングに詳しく、臨床で実践しておられます。今回大変有意義な会で、出席して本当によかったと思いました。

松本一成先生によりますと、コーチングとはクライアントが自らのゴールを設定し、それに向かって行動を起こすことを目的とした特殊なコミュニケーション法であり、コーチは主に質問することにより上記を実行するということでした。基本理念は「人が必要とする答えは、その人の中に存在する」ということでした。私が持っている答えを教えてあげるというTeaching(ティーチング)とは異なり、あなたが持っている答えを一緒にさがそうというのがCoaching(コーチング)であるということでした。

松本一成先生によりますと、医療者は「患者さんの話をよく聴きなさい。」と指導されるが、よい聴き方とはどんな聴き方か?ということを教えてもらうことは少ないということでした。これは成る程と思われるところでした。確かに、よい聴き方とはどんな聴き方か?ということを指導してくれる人にはあまり出会ったことがありません。松本一成先生によりますとコーチングのスキルとしてのよい聴き方とは、①話すよりも聴くことに時間を割く、②批判をしない、判断もしない(ゼロポジション)、③聴いているというサインを送る、④視線はやわらかく相手に合わせる、⑤最後まで聴く、途中で口を挟まない、⑥どう答えるかは、相手が話し終えてから考える、⑦沈黙を受け入れる、⑧辛抱強くなる、⑨相手の結論を先取りしない、などであるそうです。医師は患者の話を根気強く聴くことが苦手であるそうで、約20秒で口を挟むという報告があるそうです。

松本一成先生によりますと「ゼロポジション」とは相手の話をサマライズできるように集中して聴く態度であるそうです。話し手が自分の言葉で話してみて、自分の考えを確認することをオートクラインというそうです。聞き手が話し手の話を聴いた後で、話し手にサマリーを返すことをサマリー返しというそうで、オートクラインとサマリー返しにより話し手の行動は促進するそうです。

松本一成先生によりますと「頷きと相づち」も重要であるということでした。対話中に温かい頷きと相づちをできるだけたくさん入れることで、「あなたの話をもっと聞かせて」というメッセージを送るそうです。「オウム返し」は相手の語尾を繰り返すことで「あなたの話を受け止めています」というメッセージを送れるということでした。

松本一成先生によりますとコーチングは「質問型コミュニケーション」とも呼ばれるそうです。「どう思いますか?」「どう考えますか?」といった質問の仕方はオープン型質問といい、相手が自分の言葉で話そうとするために話題や情報を得られやすいそうです。これからのことを聞く未来型質問はクライアントのレパートリーの中からアイデアを出してもらう質問で、面接の終わり際に使うと有効であるということでした。

松本一成先生は行動変容を目的とした4つの質問パターンとして①現状維持の不利益、②変わることの利益、③変化に対する楽観性、④変化の決断の4種類を提示して下さいました。

松本一成先生によりますと漠然とした言葉の塊を、聞き返しによってほぐしていくことも有効であるということでした。クライアントの考えをできるだけ正確に言葉で表すことが「共感する」ことに繋がるそうで、松本一成先生によりますと、そのためには「聞き返し」で確認することだそうです。同情や同感ではなく、共感的理解が行動を変えるそうです。このあたりはちょっと理解の難しいところですね。ともすると共感と同情や同感を取り違えてしまいそうです。そしてなんと、共感が高い主治医であれば、その糖尿病患者の治療成績がよいという報告もあるそうです。

松本一成先生によりますと「承認する」ことも大事なコーチングの基本スキルであるということです。「承認する」ことは「私はあなたの味方です。」と言っていることと同じで、承認されると自己効力感が高まるそうです。時間を置かずに承認することで結果として行動が増えるそうで、オペラント条件づけと言うそうです。松本一成先生によりますと承認の仕方も、客観的な事実を承認するYouメッセージと主観的な影響を伝えるIメッセージで承認することが重要であるそうです。特にIメッセージで承認することが重要であるということでした。

松本一成先生によりますと「言った」・「聞いていない」というトラブルは医療業界ではよくあることで、確実に伝えるための方法として2つのスキルを紹介してくださいました。一つは「枕詞で許可を取る」ということで、相手に許可を求める枕詞を使うと、その後のメッセージのとおりが非常によくなるということです。もう一つは「情報提供」で「相手によって内容や順序を変える」すなわち個別対応が重要であるということでした。

松本一成先生はコーチングフローとして4 Stepモデルを紹介してくださいました。これは①現状の明確化、②ギャップの明確化、③具体的な行動目標の設定、④考え得る障害と対策からなります。

松本一成先生は佐世保中央病院におけるコーチングを用いた栄養看護外来を紹介してくださいました。看護師、栄養士、医師、他職種との協働チーム医療であり、患者様の自主性を重んじているそうです。診察の流れは、予約患者さんの受診、体重・血圧のセルフチェック、採血・採尿、栄養看護外来(検査結果報告とコーチング・情報提供)、医師診察、会計、だそうです。栄養看護外来に際しての注意事項は、①「感情を聴くこと」を最優先とする。②検査結果そのものよりも、行動に焦点を当てる。③断定的な言い方「良い」「悪い」などは安易に使わない。④「患者さんの抵抗」には抵抗しない。⑤機が熟していないときには、目標設定まで持って行こうとしない。だそうです。

栄養看護外来の特徴は①当日の検査結果をすべての患者に報告(リアルタイム)。②チームでコーチングを行い、患者もチームの一員として自己管理できるように支援。③患者自身による活きた行動目標の設定(可能な場合)。④栄養士(主に食事療法担当)と看護師(薬物やフットケアなど担当)が得意分野の知識を共有。⑤コ・メディカルから医師へバトンをつなぐ分担制診療。などであるそうです。

栄養看護外来のアウトカムとして高頻度に見られるのは行動変容、HbA1cの改善などであるそうです。コーチングはまさに糖尿病診療にうってつけの方法ですね。いや、糖尿病の治療だけではなく、診療全体に用いられて活用されるべき手法であると思われました。私にとってコーチングの話は大変興味深く思われ、今後更にコーチングについて学んでみたいものだと思いました。

骨粗鬆症とともに Vol.10 ビスホスホネート関連顎骨壊死

2017年09月27日(水) 新着情報1骨粗鬆症

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顎骨壊死とは、あごの骨の組織や細胞が局所的に死滅し、骨が腐った状態になることです。あごの骨が腐ると、口の中にもともと生息する細菌による感染が起こり、あごの痛み、腫れ、膿が出るなどの症状が出現します。近年ビスホスホネート系薬剤服用患者における顎骨壊死が報告されており、極めてまれに投与を受けている患者において顎骨壊死が生じたとの報告があります。これをビスホスホネート関連顎骨壊死(BRONJ)と呼称されています。

ビスホスホネート製剤は破骨細胞の機能に影響を及ぼし、骨吸収を阻害します。歯周疾患で起こる骨吸収は元来生体にとっては予防的な事象ですが、その事象がビスホスホネートにより障害されると組織障害、組織への血液供給不足を生じ、骨壊死が起こるとされています。

骨粗鬆症のためビスホスホネート製剤の治療を開始する患者様で、歯科治療が適切に行われ、口腔衛生状態が良好に保たれている場合はよいですが、投与中の抜歯や外科的処置を避けるために口腔衛生状態を良好に維持することが重要です。ビスホスホネート製剤服用中に侵襲的な歯科治療が必要となった際には休薬の要否を考慮する必要があります。ビスホスホネート製剤の服用期間が3年以上の場合や、3年未満でも危険因子(飲酒、喫煙、糖尿病、ステロイド薬使用、肥満、抗がん療法、口腔内衛生不良)がある場合には、医師、歯科医師が話し合って方針を決定する必要があります。休薬の期間は定まってないようですが、全身的に可能であれば侵襲的な歯科治療の3ヵ月前から処置後の3ヵ月までの服薬を休止することにより顎骨壊死の発症率を下げることが可能であるとの報告があるようです。

発生率は極めて少なく、おおむね1万人に1名程度と考えられているそうです。ビスホスホネート製剤を内服している方は口腔内を清潔に保つことを心がけ、歯科治療が必要な場合には主治医に相談していただくようお願いします。

骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献

骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版、骨粗鬆症治療の予防と治療ガイドライン作成委員会編集、ライフサイエンス社 2015

待ち時間のお知らせ(9月19日~9月22日)

2017年09月23日(土) 待ち時間のお知らせ1新着情報

9月19日~9月22日

「変形性膝関節症に対する治療の進歩と患者満足度」

2017年09月22日(金) 院長ブログ

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先日、第2回名張疼痛セミナーが開催されました。特別講演は「変形性膝関節症に対する治療の進歩と患者満足度」で講師は三重大学大学院医学系研究科運動器外科学・腫瘍集学治療学准教授長谷川正裕先生でした。

保存的治療で改善しない変形性股関節症に対する手術治療として全人工股関節置換術、保存的治療で改善しない変形性膝関節症に対する手術治療として全人工膝関節置換術はよく行われる治療です。しかしながら長谷川正裕先生によりますと術後疼痛残存は全人工股関節置換術では7~23%、全人工膝関節置換術では10~47%という調査結果であったそうです。手術後の満足度調査では全人工股関節置換術では7%、全人工膝関節置換術では約20%(15~25%)が不満足という調査結果であったそうです。これらの背景を踏まえて、長谷川正裕先生は変形性膝関節症に対する治療の進歩と患者満足度について解説して下さいました。

日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドラインによりますと変形性膝関節症の治療として推奨度グレードA(行うように強く推奨する)は教育、有酸素運動、減量、歩行補助、NSAIDs、全人工膝関節置換術などです。長谷川正裕先生によりますとNSAIDsは消化性潰瘍の問題があるのでCOX-2選択的阻害薬が望ましいが、12週間単独投与すると15%に胃潰瘍が生じたというデータがあるそうで、単独投与は危険であるということでした。長谷川正裕先生によりますと全人工膝関節置換術は費用対効果も高い治療方法であるということでした。

変形性膝関節症の治療として推奨度グレードB(行うように推奨する)は理学療法、装具、足底板、アセトアミノフェン、外用のNSAIDs、カプサイシン、ヒアルロン酸注射、高位脛骨骨切り術などです。長谷川正裕先生によりますとアセトアミノフェンは欧米では長く第一選択薬とされてきましたが、肝機能障害や消化性潰瘍の問題も指摘され、325mgを超えて含有する合剤は推奨されないということでした。長谷川正裕先生によりますとヒアルロン酸関節内注射は日常よく行われる治療で日本整形外科学会の推奨度グレードBで推奨強度87%ですが、国際変形性関節症会議(OARSI)では推奨強度64%であり、米国では効果少なく副作用多いということから行わないことが強く推奨されているということでした。ヒアルロン酸関節内注射は日本では標準的によく行われる治療ですので驚きましたが、長谷川正裕先生によりますと対象となっている変形性膝関節症のグレードが異なることや、全人工膝関節置換術の適応範囲が広いことなども影響しているであろうということでした。ステロイド関節内注射は逆に海外における評価が高く、OARSIガイドラインでは推奨強度が78%であるのに対して日本では推奨強度63%、推奨度グレードC(行うことを考慮してよい)であるそうです。推奨度グレードBである高位脛骨骨切り術は全人工膝関節置換術の適応を約10年遅らせることができるということですので、長谷川正裕先生は70歳までを高位脛骨骨切り術の適応としておられるそうです。

OARSIガイドラインでは非手術療法としてまずCore Treatment(運動、教育、減量、自己管理)を行い、続いて行うよう推奨される治療法を膝以外の変形性関節症の有無、合併症(糖尿病、心疾患、腎疾患、消化器出血、うつ病、肥満などによる活動制限)の有無により4グループに層別化しているそうです。全てのグループにステロイド関節内注射が含まれており、膝以外の変形性関節症がなく合併症のある場合はステロイド関節内注射に加えて外用NSAIDs、歩行補助具だけが推奨されること、膝以外の変形性関節症があるグループと膝以外の変形性関節症がなく合併症のないグループでデュロキセチンが推奨されることなどが特徴的であるようです。

長谷川正裕先生は全人工膝関節置換術の手術治療を数多く手がけておられますが、最近新たな取り組みとして前十字靱帯、後十字靱帯温存する全人工膝関節置換術や、大腿膝蓋関節症に対して大腿膝蓋関節置換と人工膝単顆置換術の組み合わせなども行っておられるそうです。全人工膝関節置換術の術中にナビゲーションシステムを用いて人工関節の設置や術後のアライメントは一層正確性を増してきているということでした。しかしながら人工膝関節全置換術後に約20%に疼痛が残存するということですが、活動性が高いと膝の症状が軽い傾向があり、高齢者では膝の症状が強い傾向があるそうです。変形性膝関節症に伴う痛みのメカニズムには疼痛感作や下行性疼痛抑制系が大きな役割を果たしており、膝以外の全ての部位で疼痛の閾値が低下していることもあるそうです。

長谷川正裕先生によりますと全人工膝関節置換術での入院期間は約3週間、高位脛骨骨切り術では約5週間であるそうです。以前より入院期間はかなり短縮されているようです。

人工膝関節全置換術後に長期を経て人工関節の弛みが生じないか危惧されるところですが、長谷川正裕先生によりますと手術技術の進歩により人工膝関節の耐用年数は約20年まで延びているのではないかということでした。活動性が高い方が膝の症状が軽い傾向があるとはいえ、以前には人工膝関節全置換後にスポーツなどをすることは考えられなかったと思います。長谷川正裕先生によりますと現在では全人工膝関節置換術後にゴルフはOK、テニスもダブルスならばOKとしているそうです。変形性膝関節症に対する治療として全人工膝関節置換術の進歩は著しいと思いました。