投球動作のphaseには、多くの分類が用いられており、分類により何相かに分けることができます。例えば下記の図のように①~③:ワインドアップ期、③~④:早期コッキング(アーリーコッキング)期、⑤~⑥:後期コッキング(レイトコッキング)期、⑥~⑦:アクセレレーション(加速)期、⑧~⑨:フォロースルー期の5つに分けることができます。
各phaseでの投球動作に問題があると特定の部位に負担がかかり疼痛が出現します。疼痛の出現する原因には様々あり、投球側の肘下がりや肩甲骨周囲筋の筋力低下、下肢・体幹の柔軟性低下などが挙げられます。
当院を受診する投球肩障害は、10代の患者様が多く、とくに少年野球をしている患者様は投球フォームの未完成や骨の未成熟、筋力不足、また練習過多などの原因により肩関節に疼痛が生じています。
理学療法では、上肢・下肢・体幹の可動性や筋力、投球動作のチェックを行い、問題点を抽出し治療を行っています。
リハビリテーション科 服部 司
先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。講演は「気管支喘息の外来診療」で講師は上坂内科院長上坂太祐先生でした。上坂太祐先生は日本呼吸器学会専門医、日本視鏡学会気管支鏡専門医で気管支喘息の治療などを専門にしておられます。上坂太祐先生によりますと気管支喘息は吸入ステロイド薬の普及により、わが国では最も死亡者数が減少している疾患であるそうです。上坂太祐先生は配合剤を含む吸入ステロイド薬、その他の長期管理薬、喘息発作時の全身性ステロイド薬に分けて、ガイドラインとエビデンスに基づいて使用法を紹介して下さいました。私が気管支喘息の治療をすることはありませんが、大変興味深く拝聴いたしました。
気管支喘息は咳、喘鳴、呼吸困難などの症状を生じる疾患で気道に炎症が起こることにより生じる疾患であるそうです。気道の炎症は部分的に可逆的であるということで、気管支の炎症が慢性的に続いた結果、気道壁が厚くなって気管支の内径が狭くなる現象が起こり、これを気道壁のリモデリングというそうです。気道壁のリモデリングにより、不可逆的気道閉塞を生じるということでした。喘息死は吸入薬の普及により、2014年には1550人にまで減少しているそうですが、上坂太祐先生によりますと成人喘息の喘息死前の重症度で見ると軽症でも生じている場合も多いそうで、軽症から十分な治療が必要であるということでした。
喘息の主要な症状である喘鳴は、気流が制限されることにより起こり、強制呼気させると聴取しやすいということです。スパイロメーターという医療器具で検査するスパイロメトリーでは閉塞性パターンをとり、ピークフローは日内変動を認めるそうです。上坂太祐先生は鑑別診断として左心不全、腫瘍、結核、気管気管支軟化症などを挙げておられました。
上坂太祐先生によりますと気管支喘息の本態はアレルギー性疾患であり、治療はステロイド薬が中心になり、近年吸入ステロイド薬、長時間作用型β-2刺激薬、長時間作用性抗コリン剤、ロイコトリエン拮抗薬などにより治療は飛躍的に進歩しているということで、それぞれの薬剤について詳細な使い方を提示して下さいました。上坂太祐先生は気管支喘息の治療ではリモデリングを防ぐことが重要で、発作だけではなく呼吸機能の正常状態維持により長期予後改善を目指すということでした。そのためには初診時から患者教育、長期管理の徹底が重要であるということでした。上坂太祐先生の講演は大変わかりやすく、専門外の私にもよく理解できる内容でした。ありがとうございました。
「拘縮」とは、関節外の軟部組織が原因で生じる関節可動域制限のことを言います。その原因組織は皮下組織や腱、腱膜、皮膚、そして筋肉など、様々なものがありますが、その中でも最も関連性のあるものが筋肉です。例えば、骨付きの鶏肉(関節を含む部分)を動かそうとしてもなかなか動きません。しかし、この骨付き鶏肉から肉の部分を取り払ってしまえば関節部分はどこまででも動くようになります。拘縮も同じように考えることができます。つまり、人間の体から筋肉の要素を取り払ってしまえば、関節は自由自在に動けるようになると思います(もちろんその他の組織由来の可動域制限もありますが)。
整形外科疾患に限らず、理学療法を受けられる患者さんのほとんどがこの拘縮に悩まされています。そのため、拘縮治療をいかに上手くやるか、どれだけ拘縮を取り除くことができるかということが治療成績を左右すると考えています。
拘縮治療は主に「筋収縮」を用いて行います。拘縮によって筋自体の柔軟性が低下している場合、筋収縮を促すことで筋肉を運動させて柔軟性を獲得していきます。また、筋肉によっては他の軟部組織と連結している部分があります。そのような解剖学的特徴がある部位では筋の収縮力を用いて連結している組織を引っ張ったり、滑走させたりします。このようにして筋およびその周辺軟部組織へのアプローチを行い、拘縮の除去・可動域制限の改善に努めています。
リハビリテーション科 小野正博