2015 年 5 月 のアーカイブ

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5月7日~5月9日

J-PAT

2015年05月06日(水) 院長ブログ

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先日、四日市市で開催された「J-PAT (Japan Pain Assessment and Treatment) Practical Approach 1」を受講いたしました。「J-PAT Practical Approach 」は慢性疼痛に関する学習機会の提供と医療用麻薬を含む新規薬剤の適正使用の推進を目的に企画されたそうです。

慢性疼痛で悩んでおられる方は非常に多いと思われます。2011年の松平らによる報告によりますと、慢性疼痛を有する割合は男性20.0%、女性25.7%、平均で22.9%だそうです。年代別で見ると男性は年齢と共に増加傾向があるのに比べて、女性は40歳代にピークがあるようです。慢性疼痛で最も困っている部位は第1位が腰で26.6%、第2位が肩で17.9%、第3位が膝で10.7%、その他は頸、頭、手指、足・踵、肘、股関節、大腿の順だそうです。慢性疼痛患者は何科に通院しているかということですが、慢性疼痛の主な原因は運動器の痛みですので大多数が整形外科疾患であるにも関わらず、慢性疼痛保有者の通院診療科は整形外科45%にとどまっており一般内科21.3%、あとはその他の科の受診をしているそうです。慢性疼痛患者が治療を受けている医療機関は病院・クリニックが19%、民間療法が20%で慢性疼痛患者の55%の方はそもそも医療機関にかかっていないそうです。慢性疼痛患者が受けた治療の種類ではマッサージ31%、薬物療法22%、物理療法16%、鍼治療9%、補綴治療5%、神経ブロック3%、手術3%、その他11%であったそうです。慢性疼痛患者の治療の有効性は改善12%、やや改善56%、とやや改善以上で68%を占めますが、治療の満足度では大変満足4%、やや満足32%と逆に約3分の2の慢性疼痛患者が現在の治療に満足していないという結果が得られました。慢性疼痛が個人に及ぼす影響は運動不足によるロコモティブシンドロームの増加、うつ状態、家族関係の破綻、友好的な人間関係の喪失、就業困難と経済的困窮、自殺率の上昇、10年生存率の低下など多岐にわたり、日本全体で見ても疼痛が経済的損失として社会にもたらす影響は大きいと試算されています。国際的にも疼痛政策が重視される動きがあり、日本でも疼痛治療に対する医療政策の活性化など厚労省による取り組みも開始しているそうです。

痛みは苦痛でありできるだけ除去したいと考えられるのもですが、痛みは身体の異常を警告する危険の警告信号として重要です。しかしながら疾患治療後も遷延する痛みや、ストレスの影響などからくる痛みは警告ではない痛みであり、不必要な痛みといえ治療対象となります。痛みの慢性化には「可塑性」と「感作」が大きく関わっているようです。「可塑性」とは「弾性」の対語で変化したものが変化した状態を維持するという性質で、神経系において痛みが存在すれば存在する状態を維持し痛みがなければ痛みのない状態を維持するという性質で、痛みの放置が慢性化に繋がることを意味します。このことは逆に有効な除痛状態を続けることが痛みの長期的な除去に繋がることを示唆します。「感作」は痛み刺激に対する痛みの知覚が過敏になることで、末梢性感作と中枢性感作が存在するそうです。

痛みの概念には歴史的な変遷があり、アリストテレスの時代には痛みは感情と理解されていましたが、近代になり痛みは神経機能の一つとして捉えられ、近年になり再び痛みは感情としての側面も重要視されるようになりました。痛みは多層モデルとして理解されるようになり、身体に加えられた刺激に対する感覚としての痛み(侵害受容)だけではなく、情動の要素も含んでいる(痛み知覚)ということです。その痛み知覚が心理・社会的な因子により修飾されて苦悩が形成され、周囲の環境に対する反応(痛み行動)が生まれると説明されています。患者の訴える痛みは侵害受容そのものではなく、侵害受容の程度は同じでも患者によって痛み知覚や苦悩の量や質は異なります。他人が観察できるのは痛み行動のみですので、医療者は侵害受容や苦悩の程度を痛み行動から読み取る必要があるということでした。しかしながら、これは非常に困難な作業であるように思われました。痛みの定義は1979年に国際疼痛学会で痛みとは実質的、または潜在的な組織損傷に関連した不快な感覚、情動体験と定義されました。つまり痛みの理解には感覚的な側面と感情的な側面の両方が重要であるということです。痛み伝達は侵害刺激(熱・冷刺激、化学刺激、機械刺激など)が侵害受容体を刺激し、電気信号に変換されます。痛みの程度や質は一次感覚神経を通じて伝えられ、脊髄後角から脊髄視床路を経て大脳まで伝えられます。中枢まで伝えられた痛みは大脳辺縁系やその周辺に広まり認知や感情などにより修飾されます。また視床下部に伝わり自律神経としての反応を生じます。それに対して下行性抑制系という鎮痛に働く神経系が中枢から脊髄後角に働いて痛みを調節します。痛み伝達における下行性抑制系の働きは重要で、下行性抑制系機能が低下すると痛みの敏感な状態になります。すなわち慢性疼痛の患者には下行性抑制系機能低下が関与している可能性が高いということです。

非癌性のさまざまな痛みは、急性の痛み、比較的急性だが慢性化のおそれがある痛み、憎悪と寛解を繰り返す痛み、慢性の痛み(頻度は高いが比較的軽症なもの)、難治性の慢性の痛みなどに分類されます。痛みの客観的評価基準としては痛みの程度、性質、期間、変化、原因・誘因、治療歴、心理的背景/社会的背景、増悪因子/改善因子などが挙げられます。痛みの程度の評価ではVisual Analogue Scale (VAS)が代表的ですが、小児などではFace Scaleなども有用です。痛みの性質による分類では安静時痛(自発痛)と体動時痛の区別がまず重要です。さらに軽く触ると痛むアロディニアなどの誘発痛や知覚が低下、脱失した部分が痛む求心路遮断痛なども重要です。痛みの機序による分類では器質的な痛みである侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛、そして非器質的な痛み(心因性疼痛など心理、社会的要素による痛み)に分類されます。ただ、ほとんどの痛みはこれらが複雑に絡み合った混合性疼痛と考えられ、痛みに含まれるこれらの構成要素を考えることが痛みの治療選択や薬剤選択の助けになるということです。ただ、これも大変に困難な作業かと思われました。

国際疼痛学会が2003年に「慢性疼痛とは治療に要すると期待される時間の枠組みを超えて持続する痛み」と定義しています。慢性疼痛は急性疼痛の遷延化した比較的初期で軽度の慢性疼痛と難治性慢性疼痛との二つに分類されます。急性疼痛では痛みの意味は警告信号であり、遷延化した慢性疼痛でもやはり警告信号の意味がありますが、難治性慢性疼痛になると警告信号としての意味はなくなります。また痛みの原因も急性疼痛では侵害受容器の興奮であったのが、難治性慢性疼痛になると中枢神経系の機能変化に心理・社会的因子による修飾が加わります。痛みの持続期間は急性疼痛では組織の修復期間を超えないものですが、慢性疼痛になると組織の修復期間を超えてきます。主な身体症状は急性疼痛では交感神経機能亢進ですが、難治性慢性疼痛となると睡眠障害、食欲不振、便秘、生活動作の抑制などが出てきます。主な精神症状は急性疼痛では不安ですが、慢性疼痛になると抑うつや焦燥などが加わります。鎮痛薬も急性疼痛と遷延化した慢性疼痛までは効果がありますが、難治性慢性疼痛となると鎮痛薬単独では効果を期待できません。主に整形外科でよく経験する運動器由来の慢性疼痛は遷延化した慢性疼痛にあたりますので、できるだけ難治化する前に適切な除痛を行うことが重要であるということです。疼痛の分類(侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、混合性疼痛)と病期(急性期、遷延性慢性期、難治性慢性期)により主な治療薬は変わってきます。癌性疼痛の場合は重症度の指標は痛みの程度で治療目標は痛みをゼロにということになりますが、非癌性疼痛の場合は重症度の指標が日常生活の程度と痛みで治療目標は日常生活の改善と痛みの軽減になります。非癌性慢性疼痛の薬物療法の目標は、痛みをゼロにすることではなく副作用とのバランスを考えて日常生活が最大限に改善することが目標になります。難治性慢性疼痛になりますと集学的治療が必要となり、一般整形外科など痛みの診療医では対処困難で、痛みの専門医による治療を要するものと思われます。

慢性疼痛の治療には薬物療法、神経ブロック療法、神経刺激療法、硬膜外腔内視鏡、理学療法(運動療法、物理療法)、心理療法(認知行動療法)、手術療法などがあります。日本においては慢性疼痛に対する薬物療法のメインは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であり、その他の鎮痛薬、鎮痛補助薬の使用はまだ少ないということでした。2011年の松平らによる報告では、慢性疼痛患者の満足度調査では満足8.9%、まあ満足45.9%、やや不満足30.9%、不満足14.3%でした。やや不満足と不満足を合わせて45.2%にもなり、その理由として86.4%が痛み(しびれを含む)がとれなかったからということでした。

整形外科疾患における痛みに関して、四日市羽津医療センター整形外科部長森下浩一郎先生が解説してくださいました。変形性関節症の痛みは侵害受容性疼痛を主とし、特に運動時や荷重時に認められます。損傷組織や炎症細胞から放出された生理活性物質が自由神経終末に作用し、痛みを生じます。外科的手術の適応外症例や手術を希望しない症例は薬物療法などの適応となり、痛みが日常生活動作や就労に大きな支障をきたす場合には外科的手術の適応となります。腰痛については更に複雑です。急性腰痛の原因となる腰椎組織の損傷として、椎間板線維輪内層断裂、椎体終板損傷、椎間関節包損傷、棘間靱帯損傷、腰背部筋損傷、椎間板線維輪外層断裂などが考えられています。しかしながらこれらはなかなか画像で捉えられるものではなく身体所見でも特定は困難で、実際にどの程度これらの変化が起こっているか推測でしかないと思われます。またレントゲン検査などによる加齢変化は誰にでも起こり、画像上の変化が症状と関連しているかどうかの評価が重要であるということです。侵害受容性疼痛のメカニズムとして自由神経終末における炎症物質の作用が挙げられます。近年、炎症性サイトカインが腰痛や関節痛に重要な役割を果たしていることがわかってきているそうです。神経障害性疼痛は国際疼痛学会が2011年に「体性感覚神経系に対する障害や疾患によって生じている疼痛」という新しい定義を発表しました。心理・社会的要因は痛みの慢性化と関係があり、腰痛はうつ状態などの心理的問題も考慮しなくてはならないということでした。痛みがうつ状態をもたらし、体調の低下、過度の恐れをきたし、それが腰痛を惹起し悪化させるという悪循環に陥るということでした。

慢性疼痛の薬物療法の実際は長崎大学麻酔科講師境徹也先生が解説してくださいました。鎮痛薬ではアセトアミノフェンと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が最も基本的な鎮痛薬で、効果不十分な場合にはオピオイド鎮痛薬や鎮痛補助薬(抗てんかん薬、抗うつ薬、など)の併用を考慮するということです。安全性上の懸念がある場合には、基本薬剤の減量または中止を考慮する必要があるということです。アセトアミノフェンは抗炎症作用をほとんど持たない鎮痛薬で解熱鎮痛薬とも呼ばれます。胃や腎臓への影響が少なく、安全性で優れています。容量も1回1000mg、1日最大4000mgまで使用可能になりましたが、1錠が200mgのものが多いですから実際にそれだけ服用することは困難であると思われます。また少量では効果が少ないと言われています。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は最もよく使用されている薬の一つで、炎症を抑え急性や慢性の痛みを軽減すると共に解熱作用を有します。シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害するために胃腸障害の危険性が高いですが、COX-2選択的阻害薬も開発されて胃腸障害の危険性が低減してきています。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)副作用の留意点は、胃腸障害、腎障害、心血管系イベントなどです。高齢者に対してはアセトアミノフェンが第一選択として推奨されるということです。オピオイドは基本治療で効果不十分な場合に選択肢の一つになる鎮痛薬で、オピオイドの適応範囲は侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛などの器質的な痛みになります。オピオイドの作用部位は大脳皮質および視床、中脳および延髄、脊髄、末梢神経と広範にわたり、上行系、下行抑制系ともに働きかける鎮痛メカニズムです。オピオイドは痛みの悪循環を絶ち、痛みのみならず日常生活動作も改善すると報告されています。オピオイド使用の問題点は、その副作用で眠気、傾眠(数日で軽減)、嘔気・嘔吐(1~2週間程度で軽減)、便秘(時間経過で軽減しない)、ホルモン異常(長期、大量投与によりリスク増加)などがあります。副作用の対策として、副作用の持続期間の説明、継続的な便秘対策、安易な増量を避けるなどが挙げられます。オピオイドの種類は医療用麻薬のオピオイドと医療用麻薬でないオピオイドに分けられ、医療用麻薬でないオピオイドの中でも拮抗性鎮痛薬は天井効果があり他のオピオイドとの併用は避けるべきであるということでした。神経障害性疼痛と診断されると薬物療法として抗てんかん薬や抗うつ薬、オピオイドなどの鎮痛薬を選択するということでした。日本ペインクリニック学会による非癌性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン2012では非癌性疼痛に対するオピオイド治療はいずれの患者にも適応されるものではなく、持続する痛みの器質的原因が明白であるなどの種々の使用条件を定めており、モルヒネ塩酸塩換算量で120mg/日以上の処方は推奨されないなどとなっております。中等度から高度の痛みの場合で非オピオイド鎮痛薬で治療困難な場合は、物理療法、運動療法、鎮痛補助薬、弱オピオイドなどを駆使して治療にあたり、ここから先の痛みの治療は痛みの専門医による難治性の痛みの評価、手術・侵襲的治療の適応決定と思考、強オピオイドによる疼痛管理、バラエティに富んだ処方計画などが必要となるということでした。

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