2014 年 1 月 のアーカイブ

リハビリ通信 No.99 肩こりについて その2

2014年01月23日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

PT

前回の報告では、肩甲骨に付着する筋肉・それらの筋肉で生じる症状に関するメカニズムが紹介されましたが、今回は「肩甲上腕関節」に着目した肩こりについてです。

「肩甲上腕関節」は肩甲骨と上腕骨とで構成される関節です。そのため、この肩甲上腕関節でのトラブルは肩甲骨およびそれに付着する筋肉にまで影響を及ぼします。

例えば猫背になって肩甲骨が外側へ偏位したり、下がってしまった場合、肩甲骨と上腕骨のポジションが変化してしまいます。つまり、肩甲骨が下がってしまうと、肩関節は相対的に外転位(腕を外側に広げている状態)となってしまします。この肢位で関節の動きが制限されてしまうと、筋力トレーニング等で肩甲骨のポジションを是正しようと思っても元に戻ってしまします。

そのため、我々理学療法士は、肩こりが生じている部位(肩甲骨周辺の筋肉)に対する評価だけではなく、肩甲上腕関節の可動性も評価を行い、その部位で問題があれば治療を行っていきます。

リハビリテーション科 小野正博

「骨粗鬆症の今後の治療」

2014年01月21日(火) 院長ブログ

写真

先週、三重県臨床整形外科医会学術講演会があり出席しました。特別講演はまつした整形外科院長松下廉先生でした。松下廉先生は名古屋市立大学で骨軟部腫瘍、骨粗鬆症を専攻され、2012年9月に愛知県春日井市でまつした整形外科を開業された先生です。癌研究所や大学病院での長年の経験と、新たに開業された経験を踏まえて、大変参考になるお話しを聴かせて頂きました。

骨粗鬆症に関連する骨折は上腕骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折、大腿骨近位部骨折、脊椎椎体骨折などがありますが、特に大腿骨近位部骨折と脊椎椎体骨折は生命予後を悪化させることが指摘されています。脊椎椎体骨折が3カ所以上あると死亡率が4倍にもなるというデータもあります。

最近では様々な薬物治療の進歩により諸外国では大腿骨近位部骨折の発生率が低下してきているのに日本だけ増加しているのは、世界一の超高齢化社会だけが原因ではなく骨粗鬆症に対して未治療の割合が高い(70~80%)ことが大きな要因です。治療が行われない原因としては、骨折を起こしても治療を行うことによって疼痛などの症状が消失してしまうことが考えられます。喉元過ぎれば熱さを忘れる、ということでしょうか。フィンランドでは国を挙げて骨粗鬆症の健診を勧め、治療を勧めることにより大腿骨近位部骨折の発生率低下の成果を上げているということです。このあたりは見習いたいところですね。

骨粗鬆症の治療薬で最も使用されることの多いビスフォスフォネート剤に関しては問題となる副作用としてビスフォスフォネート関連顎骨壊死や非定型大腿骨骨折があります。特にビスフォスフォネート関連顎骨壊死に関しては歯科治療の際に歯科から休薬を求められるケースが多いようです。ビスフォスフォネート関連顎骨壊死検討委員会によりビスフォスフォネート関連顎骨壊死に対するポジションペーパーが発表され、投与3年未満でありリスクファクターがなければ原則として休薬せず歯科処置を行うことが推奨されています。どの症例でも一律に休薬とはせず、リスクとベネフィットを考える必要がありそうですね。

副甲状腺(PTH)製剤はより高い治療効果の見込める骨粗鬆症治療薬です。注射薬であること(週1回製剤と1日1回製剤)と高価であること、副作用が比較的多いことなどが難点として挙げられます。松下廉先生によりますとそのアクセスの違いから大学病院ではほとんどの方が1日1回製剤(自己注射)を選択し、クリニックではほとんどの方が週1回製剤を選択されるということでした。松下廉先生はその経験から副甲状腺(PTH)製剤の副作用を回避するコツなどを教えて下さいました。

松下廉先生は一人の骨粗鬆症である患者様に対して一剤のみで治療することは困難で、使用する薬剤の順番やローテーションが大事であると指摘しておられました。確かに骨粗鬆症治療は長丁場です。ビスフォスフォネート剤は5から7年の投与に留めておくように推奨されているそうで、副甲状腺(PTH)製剤は2年または回数で投与期間が決められています。漫然と同じ薬を使うのは問題であると松下廉先生は指摘しておられました。患者様の人生トータルでの治療戦略という視点が必要なようです。

松下廉先生のまつした整形外科では骨粗鬆症だけではなくスポーツ整形外科、リハビリテーション科にも力を入れておられます。リハビリテーションルームと屋外訓練施設、そしてリハビリテーション機器、トレーニング機器の充実には目を見張るばかりです。スタッフも豊富で複数名の理学療法士とアスレティックトレーナーが活躍しているそうです。

松下廉先生は専門外来として「こぶ(しこり)外来」も掲げておられます。骨軟部悪性腫瘍治療の専門家として長年携わった経験上、「もっと早く診断がついて、治療が開始できていれば…」と何度も思われたそうです。それを元にプライマリーで多くの患者様を診ることにより、少しでも骨軟部悪性腫瘍の早期発見に繋げたいと思っておられるそうです。その心意気に大変感心致しました。

1月25日(土)の受付時間が午前11時までになります。

2014年01月19日(日) クリニックインフォメーション1新着情報

写真

1月25日(土)の受付時間が午前9時から午前11までになります。ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解ご協力のほどをよろしくお願い申し上げます。

秋山整形外科クリニック 院長

待ち時間のお知らせ (1月14日~1月18日)

2014年01月18日(土) 待ち時間のお知らせ1新着情報

1月14日~1月18日

「ここだけはおさえておきたい認知症診療の“ツボ”」

2014年01月17日(金) 院長ブログ

イラスト

11月に名賀医師会第60回臨床医のつどいが開催され、出席しました。講演は「ここだけはおさえておきたい認知症診療の“ツボ”」で講師は医療法人メドック健康クリニック副院長阿部祐士先生でした。阿部祐士先生は日本認知症学会専門医・指導医でメドック健康クリニックではもの忘れ外来を担当されています。

認知症の原因疾患には変性疾患、血管性疾患、感染、炎症、代謝性疾患、栄養障害、中毒、低酸素症、外傷、血腫、脳腫瘍など種々あります。阿部祐士先生によりますと、認知テストが正常でも認知症でないとは言えないということです。特にうつ病やせん妄との鑑別や合併もあり、介護者の「何か変だ。これまでと違う。」という直感が最も大切であるそうです。

まずは完治可能な認知症を病歴、画像検査、血液検査などから見つけ出すことが重要であるそうです。血管性認知症かどうかは画像所見によると思いますが、脳血管障害があっても認知症の原因とは限らず、アルツハイマー病と脳血管障害の合併も非常に多いようです。これはなかなか難しいですね。

次に変性性認知症の鑑別ですが、3大変性性認知症と言えばアルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症になります。アルツハイマー病は約200万人、レビー小体型認知症は50~80万人、前頭側頭葉変性症はそれらよりははるかに少ないらしいですが、鑑別のためには病歴が最も重要です。

アルツハイマー病の特徴は物忘れで病初期から強いエピソード記憶障害があり、三単語再生と言って三つの関連のない単語を記憶するという検査が有用です。その他に礼節保持、取り繕い反応、物盗られ妄想、後ろの家族に確かめようとする振り返り徴候などが特徴的症状です。

認知症の症状では記憶障害、見当識障害、失語、失認、失行などを中核症状といい、精神症状、感情障害、行動障害、意欲の障害などを周辺症状といいます。レビー小体型認知症の場合周辺症状が病初期から目立つことが特徴的なようで、幻視、妄想などを認めるようです。進行性の認知機能低下を認め、繰り返すリアルな幻視、パーキンソン症状、注意・覚醒度の顕著な変動を認めるときはかなりレビー小体型認知症が疑われるようです。

前頭側頭葉変性症は我が道を行くような行動が特徴的で、いつも同じコースを同じ時間に散歩するような常同行動、脱抑制、反社会的行動、食行動異常、自発性低下・無関心、意味記憶障害などが特徴的な様です。

変性性認知症の中でも、レビー小体型認知症と前頭側頭葉変性症は介護がとても大変なようです。

変性性認知症の薬物治療はアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬になります。処方の使い分けのコツなども解説して頂きましたが、整形外科では診断、治療する機会もほとんどないので、まず疾患の理解から務めるようにしたいと思いました。

今では65歳以上の高齢者の15%以上が認知症であるそうです。他科といえども認知症治療は避けては通れなくなるのかもしれませんね。