筋力トレーニングの3大原則には、①過負荷の原則、②特異性の原則、③多様な運動プログラムを行うことが挙げられます。
まず、筋肉は普段使っている以上の負荷を受けると、そのレベルに耐えられるように適応する生理機能を持っています。したがって、筋力の増強を目的とする場合、ある程度の負荷を加える必要があり、負荷によって筋力が増強すれば、そのレベルに合わせてさらに負荷を少しずつ増していくことが重要となります。これを過負荷の原則といいます。
また、生体に一定の負荷をかけると生体はそれに見合った特異的な現象を起こします。したがって、トレーニングはその種類によって鍛えられる機能が変わってきます。つまり、ある筋肉を鍛えたい場合、その筋肉が働きやすい状況でトレーニングを行う必要があり、目的とする活動に必要な筋収縮を行うことが重要となります。これを特異性の原則といいます。
さらに、運動プログラムは多様に変化させることが効果的であるといわれています。したがって、一つの部位に偏った決まった運動パターンよるトレーニングは、基本的にはその筋肉の収縮パターンのみにしか効果が現れず、局所への過剰な負担を招く可能性があります。つまり、周囲の筋肉との協調性を含めた、多様な運動プログラムを行うことが重要となります。
以上のことから、筋力トレーニングでは、各個人の機能や目的とする活動に合わせた負荷量やプログラムを設定することが大切になります。筋力増強はトレーニングによって刺激を受けた筋肉が修復する過程で発揮されるため、適度な負荷と休息のバランスが重要であると感じます。
リハビリテーション科 奥山智啓
先日名賀医師会館で臨床懇話会が開催され、三重大学大学院医学系研究科検査医学講師土肥薫先生の「意外に多い睡眠時呼吸障害」という講演を聴きました。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)は最近注目されていますが、私はほとんど知識がありませんでした。睡眠時無呼吸症候群とは睡眠中に10秒間以上の無呼吸が5回以上繰り返される病気で、いびきや昼間の眠気、熟睡感がない、起床時の頭痛などの症状があります。昼間の眠気は居眠り運転事故や労働災害につながるという警告もされています。
土肥薫先生によりますと、慢性心不全における睡眠時無呼吸症候群の合併率は非常に高いそうです。心不全との関連性については、私は全く知りませんでした。睡眠時無呼吸症候群が慢性心不全に合併することにより予後悪化に繋がるそうで、かくれた睡眠時無呼吸症候群を見逃さないことが大事であるということです。慢性心不全にともなう睡眠時無呼吸症候群は、ステージが進むにつれて閉塞性無呼吸から中枢性無呼吸へと病態が変遷するそうです。
睡眠時無呼吸症候群に対する治療は、まずは生活習慣の改善(減量、飲酒の制限、禁煙などです。更には持続陽圧換気療法(CPAP)となりますが、中枢性無呼吸に対する新しい治療機械について紹介して頂きました。
腱損傷は筋収縮を含めた急激な力によって損傷されます。損傷される部位は加齢、慢性の機械刺激による軟部組織の変性、RA(リウマチ)など病態により、脆弱化した筋腱移行部に見られます。また、損傷が強い場合、腱断裂も考えられます。修復過程は周囲組織を取り込みながら、瘢痕組織となり修復されます。つまり、周囲組織と癒着・拘縮が起きやすく理学療法としては癒着・拘縮の剥離を行い機能の改善を行います。
筋損傷は直接的な外力、自己収縮力の張力により損傷されます。別名、肉離れとも呼ばれます。例えば筋肉が疲労・運動準備不足により筋線維束は正常なリズム(収縮・弛緩)を失い攣縮し損傷へと至ります。とくに、二関節筋であるハムストリングス・下腿三頭筋に多く見られます。修復過程は腱と同じく瘢痕組織となり修復されますが、筋損傷が大きい場合、陥凹・瘢痕が残存するため再損傷の可能性があり、理学療法としては再損傷を起こさない様に柔軟性を獲得し、局所にストレスが加わらない事が治療の目的になります。
リハビリテーション室長 見田忠幸