肩関節安定化機構には動的安定化機構と静的安定化機構があります。
静的安定化機構の中には①関節唇の作用②関節内圧(陰圧)による作用があります。①関節唇の作用について説明します。関節唇の存在が関節窩の深さを2倍にし、脱臼の防止・関節窩への求心力向上など安定性を高めています。
また、②関節内圧(陰圧)は正常肩に比べ陰圧になっており上肢の負荷に抵抗し関節の安定性に関与しています。肩関節は自由度が高い多軸性の関節であるため、他の関節に比べると安定性は低いが動的・静的安定化機構を併用することにより自由度と安定性の両方を獲得した関節になっています。
リハビリテーション室長 見田忠幸
2月15日放映のNHKのテレビ放送、「ためしてガッテン」では腰痛についても解説していました。
慢性腰痛に苦しんでいた方が「あること」を試してみたところ、痛みが激減したということでした。
あることとは「歩く」ことと「痛みの変化を日記につける」ことでした。「歩く」ことにはポイントがあるみたいで、おなかと背中を伸ばした姿勢で15分間歩くことが大事だそうです。なかなか良いやり方ですね。また15分間という時間もちょうど良いですね。だいたい全く運動しない人と、やり過ぎてしまう人と極端になりがちですので。
そして何より重要なのは「痛みの悪循環」を断ち切ることです。腰に痛みを感じると、また痛くなるのではと不安に駆られて過剰に安静にすることにより、筋力低下、血行の悪化を起こしてしまい発痛物質が産生され留まってしまいます。結果として痛みが増強され、脳にストレスを与えてしまい交感神経が優位となり更に血管が収縮して血行が悪化します。この様にどんどん痛みを悪化させてしまい慢性疼痛に陥ってしまうことを「痛みの悪循環」といいます。
この「歩く」ことは「痛みの悪循環」を断ち切るきっかけの一つになりそうですね。また「痛み日記」をつけることは痛みとのつきあい方を知るきっかけになるようです。痛みの程度を数字で表すことで、ある程度痛みを客観視できるのもよいですね。しかしながら痛みのことであまり心を占めてしまうと逆効果かもしれません。上手に活用するのが良いと思われます。
膝の外側にある組織の柔軟性を評価する方法としては、Ober test(オベールテスト)が有名です。
Ober testは、被験者が側臥位となり、上方の脚の膝関節を90°屈曲位、股関節を伸展位に保持したまま内転し、膝の内側が床面に着けばテストは陰性となります。ただし、骨盤の動きが入ってしまうと正確な評価ができないため、下方の脚の股関節を最大屈曲位に保持した状態でテストを行うと骨盤が固定されてより鋭敏な評価が可能になるといわれています(図1)。
膝の内側が床面につかずに浮いてしまう場合、テストは陽性となり大腿の外側にある大腿筋膜張筋の伸長性が低下しています。
その他に各軟部組織の触診、疼痛の再現性の確認などを行い、原因組織を特定して治療に繋げていきます。
外側の硬さにより膝痛を生じている場合では、Ober testの陰性化により疼痛が軽減または消失することを多く経験します。
図1 Ober test (林典雄:運動療法のための機能解剖学的触診技術下肢・体幹改訂第2版より引用)
リハビリテーション科 奥山智啓
先日東京で開催されたラグビードクターフォーラムに出席しました。
これは2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップに向けて大会をサポートするグラウンドドクターを目指す医師や、今までラグビーに関わってきた多くの医師が参加しました。今回のテーマは脳振盪でした。ラグビーのようなコンタクトスポーツ(人と衝突するスポーツ)では脳振盪はしばしば起こりますが、最近ではスノーボードやスキー、バスケットボールなどでも多く見かけるようです。
東京慈恵会医科大学脳神経外科教授谷諭先生が「脳震盪はなぜ防がなくてはいけないのか」という講演をされました。脳震盪は外傷直後に意識を失う状態に陥った場合のみを指すのではなく、記銘力障害や混乱などの精神活動の一時的低下、さらに平衡感覚障害や病態が判っていない諸症状(頭痛、めまい、耳鳴り、二重視など)も広く含まれるという理解が重要です。気を失っていなければ、つい脳震盪では無いと考えてしまいそうですね。また脳震盪は(1)致死的外傷である急性硬膜下血腫を併発することがある(2)脳振盪の諸症状(頭痛、めまい、耳鳴りなど)が継続している時期に再び打撃を被ることによって致死的脳損傷を生じえるセカンドインパクト症候群があり得る(3)脳震盪の繰り返しにより認知機能の低下を来す慢性脳損傷を起こすことがあるなどの理由から「脳震盪は極力避けるべきものである」という認識をしっかりと持つことが大事です。
iRB(国際ラグビー評議会)は’Players First’「安全性を確保して選手を守る」という基本姿勢を打ち出しています。それにともない日本でも少しずつ脳震盪に対する対処が厳格になっているようです。医療従事者としては選手の安全性の確保が最大の使命で、それがひいては競技人口の増加に寄与するのではと期待しています。しかしながらラグビー人口が減少している中で、「脳震盪、脳震盪疑い」の選手が出ればチームとして試合継続が困難なチームが多い状況で、選手の安全と競技の活性化を両立させるためには、競技関係者と医療従事者の協力と連携が欠かせないと思われます。
昨日、今日と東京秩父宮ラグビー場で7人制ラグビー世界大会「東京セブンズ2012」が開催されています。7人制ラグビーはオリンピック種目にも採択されました。この東京での大会が、世間でいったいどれだけ認知されているのでしょうか?
ラグビーの活性化にはもっと創意と工夫が必要ですね。