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リハビリ通信 No.54 関節が硬くなる要因 -筋肉-

2013年01月10日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

筋肉は運動の際に収縮や弛緩、伸張を伴いながら滑走することで、関節を円滑に動かします。しかし、筋肉の伸びや滑りが低下すると関節の動きに影響を及ぼします。

 
運動器において、筋肉の伸びや滑りが低下する病態は大きく分けると、①筋肉が緊張して縮んでいる状態(攣縮)、②筋肉自体の長さが短くなっている状態(短縮)、③筋肉が周囲の組織との間でうまく滑っていない状態(癒着)の3つが考えられます。

 
攣縮は痛みに対する防御反応であり、痛みによって筋肉が防御性に縮んでいる状態です。筋肉が縮むことで血流低下を引き起こし、血液の中に痛みを発生させる物質が溜まってしまいます。そのため、攣縮筋は本来その筋肉が緩む肢位に関節を動かしても緩まらず、その筋肉を押さえると痛いという特徴があります。攣縮が長期間続くと、短縮を合併することがあります。

 
短縮は不動に伴う変化であり、筋肉自体の長さが短くなっている状態です。短縮筋はその筋肉が緩む肢位に関節を動かすと緩みますが、その筋肉が伸びる肢位に関節を動かすと、ある角度から筋肉の長さが足りずに突っ張ってしまいます。

 
癒着は損傷した組織の修復過程において生じる現象であり、組織どうしが引っ付いて動きが悪くなっている状態です。筋肉や腱が癒着を起こすと、筋肉の収縮・伸張や腱の滑走によって生じる張力が癒着部位から先には伝わらなくなり、筋肉が働きにくくなります。

 
治療としては、攣縮に対しては基本的に緊張している筋肉に軽い収縮・弛緩運動や温熱療法などを行うことで、血流状態の改善と筋緊張の緩和を図っていきます。攣縮筋が関節の動きを制限している場合、筋緊張が落ちると即時的に筋肉の痛みや関節の動きが改善することを多く経験します。短縮に対しては個別の筋肉にストレッチングや適切な収縮運動などを行うことで、組織の伸張性を徐々に引き出していきます。短縮筋は組織自体が短くなっているため、一度の運動では元に戻りやすく、継続的な運動が必要となります。癒着に対しては引っ付きを起こしている筋肉に収縮や伸張による張力を加えることで、組織間の滑りを徐々に引き出していきます。

 

臨床においては、上記の病態が混在していることも多く、理学療法では動きが悪くなっている筋肉がどのような病態になっているかを評価して、それぞれに対して治療を行っていきます。

リハビリテーション科 奥山智啓