骨粗鬆症とともに Vol.25 簡単な脊柱変形の診断方法
2018年12月27日(木) 新着情報1骨粗鬆症
整形外科の日常の診察場面では、患者様の最近背が縮んでしまった…とか、背中が曲がってきた…というような訴えをよく耳にします。そのような場合私達医療従事者は、いわゆるいつのまにか骨折を起こしていないかを疑って、身体所見を確認します。 壁際に直立した時、壁に後頭部が着けられない場合には、胸椎レベルに椎体骨折が存在する可能性があります。立位の後方から、肋骨と骨盤の間に手を入れて2横指未満であれば、腰椎レベルで椎体骨折が存在する可能性があります。患者様の訴えを聴き、身体所見を確認した上で、更なる検査の必要性を判断します。 このような方法は自宅でも簡単にできますので、気になる方は一度試してみてほしいと思います。 骨粗鬆マネージャー 石山 瑞穂
引用、参考文献 骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版、骨粗鬆症治療の予防と治療ガイドライン作成委員会編集、ライフサイエンス社 2015 |
骨粗鬆症とともに Vol.24 骨密度検査結果の数字はどのように見るの?
2018年11月29日(木) 新着情報1骨粗鬆症
骨粗鬆症は骨が弱くなって骨折しやすくなる病気ですが、WHO(世界保健機関)では、骨粗鬆症は「低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」と定義づけられています。骨粗鬆症の自覚症状は少なく、骨折して病院に行って骨粗鬆症であることを知ることがほとんどではないでしょうか。高齢者、中年以降の女性では骨粗鬆症がすすんできていることが多く、当院でも診断や治療効果の判定の手段として骨密度検査を実施しています。 骨密度とは、骨の強さ(骨強度)を判定するための尺度のひとつで、骨の中にカルシウムやマグネシウムなどのミネラルの成分(骨塩)がどのくらいあるのかを計測するものです。骨密度が低下してくると骨がもろくなり骨折しやすい状態といえますので、自分の骨の状態を知っておくことが必要です。 当院では腕の先(前腕)だけを測定する機械を導入しています。検査結果にはTスコア(若年平均比較)とZスコア(同年齢比較)が表示されています。Tスコアは若い最も骨量が多い時を100%として被験者を比較したものであり、この値が実際に診断や評価に用いられます。日本ではyoung adult mean(YAM値)と比べて何%減少しているかで判断しており、Tスコアが80%以上なら正常、70%以上~80%未満なら骨塩減少、70%未満なら骨粗鬆症と診断されます。Zスコアは同年代の方に対してどれくらいなのかを見る指標であり、骨粗鬆症の診断には用いられません。 骨粗鬆マネージャー 石山 瑞穂
参考文献 整形外科看護 整形外科のキーワード辞典394 メディカ出版 |
骨粗鬆症とともに Vol.23 整形外科でよく処方される痛み止め
2018年10月26日(金) 新着情報1骨粗鬆症
整形外科の日常の診療場面では、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫、変形性関節症、骨折などそのほとんどの症例で痛みを伴います。そのような場合、痛みを抑えることを目的として鎮痛薬が処方されます。 実際に処方される鎮痛薬のほとんどは非ステロイド性抗炎症薬と言われるお薬です。局所で生じる炎症、発痛物質の活性を阻害し、強い抗炎症、鎮痛効果を発揮する鎮痛薬の王道とも言えるお薬です。商品名ではナボールSR、ロキソニン、セレコックスなど、痛みが生じた際に一度は服用した経験がある方も多いと思います。内服だけではなく直腸粘膜から成分を吸収し鎮痛を図る坐薬や、経皮的に成分を吸収させる貼付剤(シップ)もあります。 しかし強い鎮痛効果をもたらす半面、胃粘膜保護作用を阻害したり、腎血流量を低下させたりする副作用もあり、消化性潰瘍や腎機能障害などのリスクもあるため注意が必要です。 このようお薬が使いにくい方や高齢者、小児患者に処方されるお薬がアセトアミノフェンと言われる種類のお薬です。商品名でカロナールはよく聞くお薬かもしれません。この種類のお薬は安全性が広く、長期投与も可能と言われていますが、炎症を抑える作用はなく、鎮痛効果は非ステロイド性抗炎症薬より弱いです。
骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献 整形外科看護 第32巻9号 メディカ出版 2018 |
骨粗鬆症とともに Vol.22 楔(くさび)状骨折
2018年09月27日(木) 新着情報1骨粗鬆症
楔(くさび)とは、木や金属で一端が厚く他端に至るにしたがって薄くなるように作ったものを言うそうです。木材や石材を割るとき、重い物を押し上げたりするときの道具として使用されるそうです。 骨粗鬆症性骨折のうち最も頻度が高いのは椎体の圧迫骨折ですが、その中でも脊椎椎体の前方が圧迫されている状態を、整形外科では楔状骨折と表現します。 この状態の骨折はおもに前方は破壊されますが、中央部や後方部は保たれるため、安定型の損傷とされています。治療の基本は保存治療で、体幹装具(コルセット)を装着し、鎮痛剤を使用しながら日常生活動作の維持、拡大を図ります。 しかし中央部にかけて椎体全体が強く圧迫されてしまうような骨折や、椎間関節が脱臼するような重症の骨折では強い不安定性を生じるため、治療方法は全く異なります。 骨粗鬆マネージャー 石山瑞穂
参考文献 整形外科看護 第23巻1号 メディカ出版 2018 |
骨粗鬆症とともに Vol.21 カルシウムサプリメントは飲んだ方がいい?
2018年08月30日(木) 新着情報1骨粗鬆症
骨粗鬆症で治療に通っている方や、骨粗鬆症にならないように予防したいと言われる患者様に、カルシウムのサプリメントを飲んだ方がいいのでしょうか?と聞かれる場面が時々あります。そのような場合、患者様にはサプリメントよりも毎日3度のバランスのとれた食事を十分心がけていただくようにお伝えしています。 サプリメントに含まれるカルシウムの吸収率は、第6次日本人の栄養所要量におけるカルシウム所要量の算定に適用されたデータによると、30歳以降は30%となっているそうです。また、カルシウムの吸収率は生体の内因性因子(健康状態、年齢、身体活動量など)によっても異なると言われています。 しかし普段の食事に加えて、サプリメントからカルシウムを補給した介入試験では、骨量が増加し、更には骨折予防効果を示したという結果が国内外でも報告されているそうです。 カルシウムの摂取量は成人の場合、1日700〜800mgが推奨されていますので、どうしても補えない日はサプリメントからの補給もいいかもしれません。その場合は空腹時より食事時の方がカルシウムの吸収率が良いので、食事と一緒に摂取した方がいいようです。また、副作用を防止するためサプリメントからのカルシウム補給量が、1日500mgを超えないようにしていただきたいと思います。
骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献 骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版、骨粗鬆症治療の予防と治療ガイドライン作成委員会編集、ライフサイエンス社 2015 公益財団法人 骨粗鬆症財団 2018年8月23日閲覧 |