骨粗鬆症

骨粗鬆症とともに Vol.5 ロコモと骨粗鬆症の関係

2017年04月21日(金) 新着情報1骨粗鬆症

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日本の高齢化率は2015年26.7%となっており、世界を先駆けて超高齢化社会となっています。高齢者の増加とともに要介護者も増え続けており、要支援、要介護の認定要因は転倒、骨折や関節疾患などの運動器障害によるものが上位となっています。このような背景からも運動器の健康の維持を積極的に図ることが重要であるとされています。近年ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)の概念が広く普及してきており、その定義は「運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態」とされています。

高齢者の転倒、骨折は要支援、要介護の主原因であるため、ロコモが介護予防の概念であることを考えると、骨粗鬆症はロコモの特に重要な構成疾患と言えます。ロコモの評価や予防、改善法は転倒リスクの評価や予防につながるものが多いです。ロコチェックはバランス能力などの転倒と関わる項目が多く含まれています。また立ち上がりテストや2ステップテストは下肢の筋力とバランス能力が関与するテストで転倒と関連があります。ロコトレの中の開眼片脚起立は転倒予防効果があるとされており、スクワットやカーフレイズも下肢筋力を強化する運動であるため、転倒予防に効果的であるとされています。

骨粗鬆症は「骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」と定義づけられています。骨粗鬆症の骨折がロコモを悪化させること、骨折の結果運動機能の低下や姿勢変化を来し、易転倒性や骨粗鬆症の増悪につながることなど・・・ロコモと骨粗鬆症の関係は深く、高齢者の骨折予防においてはロコモ予防を並行して行うべきと考えられています。

骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献

骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版、骨粗鬆症治療の予防と治療ガイドライン作成委員会編集、ライフサイエンス社 2015


骨粗鬆症とともに Vol.4 超音波骨密度測定装置(QUS法)

2017年03月26日(日) 新着情報1骨粗鬆症

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骨粗鬆症の検査のひとつに骨密度検査があります。骨の構成要素であるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分の量(骨密度)を測定する検査です。骨密度検査もいくつかの種類がありますが、その中の一つである超音波(QUS)法は大きな設備を必要とせず、簡単で短時間ですむため、自治体の検診やイベントなどで多く使われています。

超音波法は骨に超音波をあてて、その伝わる速さや超音波の減衰の程度から骨量を測定する方法です。一般に音は硬いものほど早く伝わり、弱くなりにくいという性質があるため、その原理を用いて測定しています。おもにかかとの骨で測定することが多く、放射線を必要としないため、被爆がないこともメリットです。

しかしこの方法は感度が高くないため測定誤差が生じやすいことから、検診などのスクリーニングに用いられることが多く、骨粗鬆症診断基準(2012年改訂版)からは除外されているため診断には使用できません。

超音波法で骨密度検査を受けられた方で測定値が低い場合は、DXA(二重エネルギーX線吸収測定法)pQCT(末梢骨定量的CT法)MD(Micro densitometry法)などを行い、診断基準に当てはまるかどうかを評価する必要があります。

当クリニックではpQCT法を導入しております。検査台に前腕を乗せ、橈骨の骨密度を測定する方法です。低被爆であり15秒程度で測定可能です。お気軽に御相談下さい。

骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献

骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版、骨粗鬆症治療の予防と治療ガイドライン作成委員会編集、ライフサイエンス社 2015

骨粗鬆症の最新治療、石橋英明監修、主婦の友社、2016

整形外科看護 第21巻8号(通巻266号)、メディカ出版、2016


骨粗鬆症とともに Vol.3 骨粗鬆症とアルコール

2017年02月26日(日) 新着情報1骨粗鬆症

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骨代謝に影響を与える嗜好品のひとつにお酒があります。私もお酒を呑むことが大好きで、美味しい食事をいただく時にはついつい呑みすぎてしまうことがあります。

少量の飲酒の骨粗鬆症への影響は不明のようですが、大量の飲酒では骨粗鬆症は増加すると言われています。大量飲酒とは1日のアルコール摂取量が2単位以上、ビール大瓶(633ml)で2本以上、日本酒で2合以上、ワインで2/3本(480ml)以上などです。

具体的にアルコールは骨の新陳代謝にどのような影響を及ぼすのでしょうか。アルコールの過剰摂取は胃や腸の粘膜を荒らします。カルシウムは腸管から吸収されるため、吸収が抑制されてしまいます。またアルコールには利尿作用があるため、尿へのカルシウム排泄が高まってしまいます。カルシウムの吸収をよくするビタミンDは体内に取り込まれた後、肝臓に蓄積、代謝されて活性型ビタミンDとなりますが、アルコール摂取で肝臓の代謝機能が低下するとビタミンDの代謝は障害されます。大量のアルコール摂取は骨粗鬆症性骨折のリスクを1.38倍、大腿骨近位部骨折のリスクを1.68倍に高め、このリスクはアルコール摂取量に依存して上昇すると言われています。

しかし適量のアルコール摂取は食欲を増進させるとも言われており、美味しい食事をバランスよく楽しくいただく効果があるとも言われています。食前酒がいわゆるそうであり、胃を刺激して食欲を増進させる効果があると言われているそうです。しかしあくまでも適量、大量に摂りすぎてしまうことは、骨粗鬆症だけではなくその他の身体への影響もあるため注意が必要です。厚生省によるとビール中瓶1本以内、日本酒1合以内、ワイン1/4本以内程度が適量とされています。

骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献

骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版、骨粗鬆症治療の予防と治療ガイドライン作成委員会編集、ライフサイエンス社 2015


骨粗鬆症とともに Vol.2 骨のリモデリング

2017年01月25日(水) 新着情報1骨粗鬆症

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前回の内容の中で骨粗鬆症の原因のひとつについて、成人後新しく造られる骨の量よりも、壊して吸収されていく骨の量のほうが多くなるというお話をしました。このように人間の体の中では一生休むことなく古くなった骨を壊して、新しい骨をつくって入れ替えが行われていて、1年間で体の中の骨の約10%が新しくなると言われています。このような骨の新陳代謝機能のことを骨のリモデリングといいます。

骨のリモデリングには古くなった骨を壊して吸収していく破骨細胞と、新しく骨をつくる骨芽細胞が主に作用しています。骨のリモデリングは破骨細胞が骨吸収を始めるところから開始されます。破骨細胞が骨の表面にはりついて、酸や酵素で骨を溶かします。この過程を骨吸収と呼びます。破骨細胞による骨吸収が進むと骨芽細胞が出現します。骨吸収が進んでへこんだ骨の部分に集まってきた骨芽細胞は、コラーゲンを分泌しハイドロキシアパタイト(リン酸カルシウムの一種で、骨や歯の主成分)を沈着させて骨を形成します。これを骨形成と呼びます。一連のリモデリングは約3ヵ月の周期で行われ、成長期から成長完了後も生涯にわたって繰り返されます。

骨粗鬆症とは骨の脆弱性が進行し、骨折しやすい状態にある全身的な骨の病気です。骨粗鬆症を予防するためには各骨のリモデリング部位における骨吸収と骨形成は等しくなければなりませんが、骨粗鬆症の状態ではリモデリングはバランスよく行われていない状態にあります。

骨のリモデリングが不均衡を起こす原因には、新しい骨を造る骨芽細胞の活性化が悪いことや、石灰化に必要なカルシウムの不足、ビタミンDの欠乏、骨吸収が異常に活性化するなど、吸収された骨量を骨形成によって十分に補充できないと骨密度は低下してしまいます。

骨代謝の状態を知るには血液や尿の検査が必要です。骨粗鬆症治療に適切な薬の選択、薬の効果を評価するための指標となります。

骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考文献

骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版、骨粗鬆症治療の予防と治療ガイドライン作成委員会編集、ライフサイエンス社 2015

骨粗鬆症の最新治療、石橋英明監修、主婦の友社、2016

 


骨粗鬆症とともに Vol.1 骨粗鬆症とは?

2017年01月09日(月) 新着情報1骨粗鬆症

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骨粗鬆症とは骨の脆弱性が進行し、骨折しやすい状態にある全身的な骨の病気です。骨の密度がピークに達する20歳頃までに獲得する最大骨量が少ないことと、成人後新しく造られる骨の量よりも、壊して吸収されていく骨の量のほうが多くなることが原因で起こります。

現在日本の骨粗鬆症患者は1280万人以上(男性約300万人、女性約980万人)と推計されており、超高齢化社会突入に向け今後さらに増えると予想されています。

骨粗鬆症が原因で起こる骨折のことを脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折といいます。軽微な外力、一般的には立った高さからの転倒よりも小さい衝撃で発生した骨折のことを指します。高齢者に好発する骨折のうちで最も頻度が高いのは椎体(背骨)の骨折で、次いで大腿骨近位部(足の付け根付近)、橈骨遠位部(手首付近)上腕骨近位部(肩の下あたりのうで)の骨折が多いとされています。

骨粗鬆症が進行し、一度脆弱性骨折を起こすと再度骨折を起こすリスクが2~4倍高くなると言われており、これを骨折の連鎖と言います。骨折を起こすと、体を支える機能の低下や運動機能の障害をきたします。さらにはそれらの影響から諸臓器の機能障害(背骨が曲がることによる肺換気量の低下、心臓への影響、胃や腸が圧迫されることによる食欲低下、便秘など)を起こす可能性も高いです。寝たきりなど介護が必要な状態となることも多く、健康寿命の短縮、さらには死亡率の増加に繋がると言われています。

特に閉経後の女性では骨粗鬆症が原因の脆弱性骨折を起こす危険性が高いため、治療の継続と転倒予防が重要です。

骨粗鬆症対策が医療のみならず社会的にも重要な課題となっている昨今、地域の患者様に骨粗鬆症について積極的に理解していただき治療につなげていくことで、骨折の予防、生活の質向上に少しでも貢献できるよう、私達看護師もお手伝いさせていただきます。お気軽にお声がけ下さい。

骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂