骨粗鬆症とともに Vol.15 脆弱性椎体骨折を起こしたら安静にしないといけない?
2018年03月01日(木) 新着情報1骨粗鬆症
骨粗鬆症が原因で起こりやすい骨折の中でも最も多いとされているのが脊椎椎体骨折であり、わが国の年間発生件数は約100万件と推定されています。当院でも軽微な外力をきっかけに発生してしまった方が多く治療に通われていますが、そのような患者さんからよく聞かれるのが「できるだけ動かないようにしたほうがいいですか?」という内容の質問です。 骨粗鬆症を基盤とした脆弱性骨折の場合絶対安静の必要はなく、痛みに応じて動く必要があります。安静にして寝てばかりいると、認知機能の低下や筋力の低下、床ずれや肺炎など安静による弊害が起こり、もとの日常生活動作のレベルに戻れないことがあるからです。 急性期は強い痛みを伴うことも多いため、薬物や体幹装具(コルセット)の使用でコントロールを行います。コルセットは就寝時以外装着し、仮骨形成がみられる8~12週目以降を目安に除去のタイミングを医師と相談します。このような治療を組み合わせながら、一般的には日常生活動作を維持しながらの保存治療が原則とされています。原因である骨粗鬆症に対して、骨密度が著しく低い症例や、以前にも椎体の骨折を起こしている症例では医師と相談し治療を開始することをお勧めします。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献 整形外科看護12月号. 2017vol22. メディカ出版 |
骨粗鬆症とともに Vol.14 骨粗鬆症はなぜ女性に多い?
2018年01月29日(月) 新着情報1骨粗鬆症
骨粗鬆症は特に女性に多い病気で、患者の80%以上が女性と言われています。これには女性ホルモンであるエストロゲンの低下が大きく関わっています。 女児が思春期になって初経が始まると、卵巣から女性ホルモンのエストロゲンが分泌されます。エストロゲンは骨の新陳代謝に大きく関わりがあり、骨を壊して吸収する破骨細胞の働きを抑える役割があります。 女性は妊娠の際には胎児のためにカルシウムをおおいに使います。また母乳には多くのカルシウムが含まれるため、授乳でも多くのカルシウムを消費します。体内のカルシウム量が低下すると、骨からカルシウムが溶けだして補おうとしますが、そのままそのまま破骨細胞の働きが増すと骨がどんどん弱くなってしまいます。そこでエストロゲンが破骨細胞の形成や働きを抑えるように働き、骨が弱くなるのを防いでいるのです。 エストロゲンの分泌は50歳頃を境に徐々に分泌量が減ってきます。閉経後はさらに分泌量が低下するので破骨細胞の働きが強くなり骨からのカルシウム流出が多くなって骨粗鬆症が進行するのです。 同じように男性も男性ホルモンが骨の新陳代謝に作用していますが、男性ホルモンは女性ホルモンほど加齢によって減少しないため、骨粗鬆症は女性に多いのです。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献 骨粗鬆症の最新治療、石橋英明監修、主婦の友社、2016 |
骨粗鬆症とともに Vol.13 骨折予防に必要な栄養素 ビタミンK
2017年12月30日(土) 新着情報1骨粗鬆症
骨粗鬆症の予防に対し、一般的な知識として認知度が高いのはカルシウムの摂取です。そのため、カルシウムだけ十分に摂っていれば骨折しないと誤解したり、カルシウムを一生懸命摂っているのに骨密度が上がらないと悩んだりするといった現状があります。カルシウムだけではなく、まんべんなくバランスのよい食事摂取をこころがけることが骨粗鬆症予防には重要です。 その中で必要な栄養素のひとつがビタミンKであり、ビタミンKの摂取は骨の健康と密接に関わっています。ビタミンKはカルシウムが骨へ沈着(石灰化)するのを促し、骨からカルシウムが流出するのを抑えます。 ビタミンKの1日あたりの推奨摂取量は250~300㎍で緑の葉の野菜、納豆に多く含まれています。 厚生労働省の研究チームによる調査によると、骨粗鬆症が主な原因の大腿骨頸部骨折の発生件数を都道府県別に見ると、東北や関東では骨折は少なく、九州や四国、近畿などの西の地方に多く、はっきりとした西高東低の分布になっているそうです。このデータは納豆の消費と反比例しており、消費量が多いベスト10は東北と関東の地域となっています。反対にワースト20までは関西、四国、九州地方が多くを占めており、興味深いデータとなっています。 納豆消費量 1位 福島県 2位 茨城県 3位 群馬県・・・45位 徳島県 46位 大阪府 47位 和歌山県
骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献 骨粗鬆症の最新治療、石橋英明監修、主婦の友社、2016 整形外科看護 第22巻12号(通巻285号)、メディカ出版、2017 |
骨粗鬆症とともに Vol.12 骨粗鬆症に重要なカルシウム摂取
2017年12月03日(日) 新着情報1骨粗鬆症
食事から摂取されたカルシウムは99%が骨に蓄えられ、残り1%が血液や体液の中にあります。カルシウムは骨や歯の材料になるほか、神経の伝達を助けたり、筋肉を収縮させるなどの重要な働きも担っています。 食事からのカルシウム摂取量が不足すると、血液中のカルシウム濃度を一定に保つため、副甲状腺ホルモンが分泌され、破骨細胞を活発にします。破骨細胞による骨吸収が進み、骨の中のカルシウムが血中に溶け出すことで不足分を補うという恒常性が働きます。 健康で丈夫な骨を保つためには、食事から十分なカルシウムを摂取して、ホルモンのバランスを整えるような生活を心がけることが大切です。 西洋人と異なり歴史的に乳製品の摂取量の少ない日本人は、カルシウム摂取が不足しがちです。乳製品、魚介類、大豆製品、野菜、海草類を組み合わせて、積極的にカルシウム摂取量を増やす工夫が必要です。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献 骨粗鬆症の最新治療、石橋英明監修、主婦の友社、2016 |
骨粗鬆症とともに Vol.11 骨折にかかる医療費の現状
2017年10月27日(金) 新着情報1骨粗鬆症
平成25年の国民医療費の概況によると、国民医療費は年間40兆610億円とされており、そのうち医科医療費は28兆7447億となっています。医科医療費の疾患別内訳で筋骨格系及び結合組織の疾患は3番目に多く、2兆2422億円、10番目には骨折が多く、その医療費は1兆1313億円だそうです。骨折にかかる医療費1兆1313億円の55.9%に当たる6329億円は65歳以上の女性が支出しているそうで、高齢女性の骨折予防が重要であることを示唆するデータとなっています。 大腿骨近位部骨折の発生推移は1987年から一貫して増加傾向であり、2012年は過去最高となっています。大腿骨近位部骨折1件あたりの治療費は約150万円かかると言われており、年間約18万件の発生とすると2700億円の医療費支出ということになります。急性期治療後の介護費用にもひとりあたり年間約150万円程度かかるとされており、大腿骨近位部骨折発生後の医療介護費は、ひとり平均年間約300万円かかることになります。大腿骨近位部骨折を起こすと反対側の骨折を起こすリスクが4倍以上に高まるとも言われており、骨折の連鎖は更なる医療、介護費の支出につながると言えます。 日本の骨粗鬆症治療率は約25%程度とされており、先進諸国の中では低い現状があります。医療費削減の視点からも、骨折を予防するための治療や取り組みが重要であると言えます。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献 日本骨粗鬆症学会誌 Vol.2 No.4 2016 |