骨粗鬆症とともに Vol.20 注射、点滴によるビスホスホネート製剤
2018年08月05日(日) 新着情報1骨粗鬆症
骨粗鬆症の薬による治療は、骨折の有無、骨密度の値、骨折の危険性などを総合的に考慮して開始されます。骨粗鬆症の薬には色々な種類があります。薬の作用から、骨が壊れるのを防ぐ骨吸収抑制薬と骨をつくるのを促す骨形成促進薬、骨に重要な栄養素を補給して治療する薬などの種類があります。 骨が壊れるのを防ぐ骨吸収抑制薬のひとつであるビスホスホネート製剤は骨粗鬆症治療薬の基本になる薬とも言えます。それまでは骨に重要な栄養素を補給して治療する薬、ビタミンD製剤などが治療の主流でしたが、1996年にビスホスホネート製剤が発売開始となってから、骨密度の上昇から骨折抑制効果がさらに証明されたと言われています。その後今日までも開発が進み、内服薬のほか注射や点滴製剤もあります。ビスホスホネート内服製剤では消化管からの吸収率が低いため、水以外の飲食物は服用後30分以上経たないと摂取できません。また確実に胃内に到達させるために、服用後30分は横になってはいけないという制限があります。しかし注射や点滴では血管内にダイレクトに投与されるため、そのような制限もなく、血中移行が100%達成できるというメリットも大きいです。週1回、月1回では薬をのみ忘れてしまうという方にも確実に治療できる方法かもしれません。 骨粗鬆症の薬物治療の目的は骨粗鬆症性の骨折を予防し、骨折による日常生活動作の低下を予防し、生活の質の低下を防ぐことです。しかし骨粗鬆症の薬物治療では5年以内に52.1%が脱落してしまうというデータがありあます。患者様のライフスタイルやお好みに合わせた薬、投与方法を選んでいただき、確実に治療を継続してもらえるように準備、支援させていただいています。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版、ライフサイエンス出版、2015 |
骨粗鬆症とともに Vol.19 椎体骨折が起こりやすい部位
2018年07月09日(月) 新着情報1骨粗鬆症
骨粗鬆症が原因で発症する骨折は脆弱性骨折と呼ばれ、軽微な外力(一般的には立った高さからの転倒)で発生した骨折を指します。脆弱性骨折の中で最も頻度が高い骨折は椎体(背骨)の骨折で、その半分ほどは知らない間に骨がつぶれ、症状が出ないままに骨折している、いわゆる”いつのまにか骨折”とも言われています。 椎体の圧迫骨折は第11胸椎から第2腰椎あたりとされる、胸腰椎移行部が好発部位で一番多くみられます。次に多いのは第7胸椎を中心とした中位胸椎です。これは脊椎の生理的彎曲、ねじりなどの力学的負担が多い部位であるなどの理由が考えられるそうです。 骨粗鬆症の症状は少なく、骨折を起こしてはじめて症状が出現することがほとんどです。一度骨折を起こすと次々に骨折を起こす連鎖が問題とされています。椎体骨折を1か所起こすと3.2倍、2か所起こすと9.8倍、3か所起こすと23.3倍と骨折再発のリスクがどんどん上がると言われています。さらに椎体骨折の10~20%は1年後も骨癒合していない偽関節の状態と言われており、骨折の症状が遷延することがあります。身長が縮む、背骨が曲がるなどの身体的変化から、逆流性食道炎、呼吸機能の低下など二次的な障害が起こる可能性もあり、治療による予防が重要と言えます。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版、ライフサイエンス出版、2015 |
骨粗鬆症とともに Vol.18 大腿骨近位部骨折を起こした患者の一年後は・・・
2018年05月31日(木) 新着情報1骨粗鬆症
大腿骨近位部(脚の付け根)は骨粗鬆症が原因で骨折しやすい部分と言われています。この骨折の原因の多くは転倒であり、立った高さからの転倒でも起こります。男性は75歳くらいから、女性は70歳すぎると急増します。通常は手術をしてリハビリを行いますが、大腿骨近位部骨折を起こした方の多くは歩行能力やその他の日常生活動作、さらには認知機能の低下を来すこともあります。 先日参加した骨粗鬆症リエゾン研修で聴いた、大腿骨近位部骨折を起こした方の一年後のデータを皆様にもお示ししたいと思います。 約60%の人が何らかの介護が必要となる。約40%の人が一人で歩行ができない状態になってしまう。約20~24%の人が死亡する。約33%の人が施設に入所している。という現状だそうです。そして大腿骨近位部骨折を起こした人の約50%は以前に何らかの骨折を起こしていたそうです。 このような現状からも骨粗鬆症の治療を開始し、継続していくことが重要だと言えます。しかし転医や入院を機に治療が中断されてしまう、治療効果が感じられずに治療を中断してしまうなどの現状があります。 いつまでも健康で自立した生活を送れるように、私達骨粗鬆マネージャーは医療者間での連携を図りながら、治療率の向上と治療の継続を目指して地域の方々に貢献していきたいと思っています。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献 骨粗鬆症の最新治療、石橋英明監修、主婦の友社、2016 2018年4月24日開催、骨粗鬆症リエゾンセミナー 健愛記念病院整形外科副院長 池田聡先生の講演内容より
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骨粗鬆症とともに Vol.17 骨代謝の状態をみる骨代謝マーカー
2018年05月01日(火) 新着情報1骨粗鬆症
人間の身体の中で骨は一生の間休むことなく古い骨を壊して新しい骨をつくって入れ替えています。骨の代謝作業は、骨を壊して吸収する破骨細胞と新しく骨をつくる骨芽細胞という二つの細胞が受け持っています。骨吸収と骨形成は通常バランスよく保たれていますが、バランスが崩れると骨粗鬆症が進行します。 骨粗鬆症の診療では血液や尿を用いた検査も行われ、血清カルシウムやリン、たんぱく質や貧血の有無といった一般的な検査以外に、骨代謝マーカー測定というものがあります。骨代謝マーカーには骨吸収マーカーと骨形成マーカーがあり、古い骨が壊され新しい骨がつくられる過程で産生される物質を血液や尿で測定するものです。 骨代謝マーカーは骨粗鬆症の診断には用いられませんが、骨粗鬆症の状態の評価や将来の骨量減少の予測、治療開始の時期や治療する薬剤の選択、治療効果のモニタリングなどに用いられます。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献
骨粗鬆症の最新治療、石橋英明監修、主婦の友社、2016 骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版、骨粗鬆症治療の予防と治療ガイドライン作成委員会編集、ライフサイエンス社 2015 |
骨粗鬆症とともに Vol.16 整形外科診察で確認する身体所見のひとつ 叩打痛(こうだつう)
2018年04月02日(月) 新着情報1骨粗鬆症
叩打痛(こうだつう)とは、局所を軽く叩いた時の振動によって起こる痛みのことです。打撲や骨折、化膿や炎症を生じている部位を軽く叩くと痛みが起こることを指します。 整形外科の診察場面で、急性腰背部痛を来して受診された場合、診断の根拠となるレントゲン画像とともに、叩打痛を確認することが多いです。なかでも高齢患者の場合、骨粗鬆症による椎体骨折を疑う症例が多く、軽く腰背部を叩いた際の痛みを確認することで、骨折の有無をある程度予測することも可能です。画像上骨折を疑う所見があっても、叩いた時の痛みの程度で、新しい骨折なのか、陳旧性の骨折なのかを判断することもある程度可能です。 しかし整形外科領域と思って来院された場合でも、筋骨格系が原因でないと考えられる場合もあるため、自覚症状をはじめ身体所見を細かく確認する必要があります。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献 松本守雄、ナースのためのやさしくわかる整形外科、(株)ナツメ社、2015. |