骨粗鬆症とともに Vol.65 腎臓の機能が低下すると骨も弱くなる
2023年03月26日(日) 新着情報1骨粗鬆症
骨粗鬆症を予防するため皆さんが意識して摂取しているカルシウムは、腸管で吸収され血液によって骨に運ばれます。腸管からカルシウムが吸収される際に必要なのがビタミンDですが、摂取されたビタミンDは腎臓や肝臓で代謝され、活性型ビタミンDに変化することでカルシウムを効率よく吸収するように働きます。腎臓の機能が低下し、十分に代謝機能が働かなくなると、ビタミンDの活性化がスムーズに行われず、カルシウムの吸収がうまく行えなくなります。このような状態から腸管からカルシウム吸収がうまく行えなくなり、血中のカルシウムが不足すると、骨からカルシウムが溶け出て補おうとするため骨も弱くなってしまうということです。 腎臓の機能は加齢とともに徐々に低下していきますが、多くは肥満や喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病がリスクになります。生活習慣を見直し、腎臓の機能を維持することが、骨粗鬆症を予防することにもつながります。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂 参考資料 https://iihone.jp 骨粗鬆症ホームページ 令和5年3月23日閲覧 |
骨粗鬆症とともに Vol.64 NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)は、なぜ胃潰瘍に注意が必要?
2023年02月03日(金) 新着情報1骨粗鬆症
急性腰痛で起こる疼痛や変形性関節症などの慢性疼痛は、日常の診察場面で患者さんからよく聞かれる症状です。このような痛みに対する薬物療法では非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)が選択されることが多いですが、NSAIDS内服では、胃潰瘍や消化管出血などの消化管障害が出やすくなるため注意が必要です。 人の身体では、外傷などによる組織損傷により遊離された物質にCOXという物質が作用することで痛みの原因となるプロスタグランジンが発生します。そのため、このCOXという物質を阻害し、痛みの原因となるプロスタグランジンの産生を抑制するというのがNSAIDSの作用機序です。しかしこのCOXは胃粘膜保護の恒常性維持に関与しているため、リスクが高まるのです。 このようなことから胃潰瘍の既往がある方や、高齢者ではNSAIDSの処方は特に注意が必要です。当院でも患者様の既往歴や状態の把握、予防薬の処方や長期服薬を避けるなど、NSAIDSの処方は慎重に行われています。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂 参考文献 整形外科看護 第27巻3号 メディカ出版 2022 |
骨粗鬆症とともに Vol.63 骨粗鬆症治療薬はどのように使い分けているの?
2022年11月24日(木) 新着情報1骨粗鬆症
骨粗鬆症治療薬には沢山の種類があります。具体的な分類として、ビスホスホネート製剤、活性型ビタミンD₃薬、ビタミンK薬、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、副甲状腺ホルモン薬、抗ランクル抗体薬、抗スクレロスチン抗体薬などですが、このように複数ある薬剤をどのように使い分けて治療をするのでしょうか。 医師は骨密度の値はもちろんですが、実際に身体内で骨の代謝がどのような状態かを検査します。通常人の骨の中では骨を造るスピードと、骨を壊すスピードが保たれているため一定の量を維持していますが、骨粗鬆症ではこのバランスが崩れているため、代謝の状態に合わせたお薬の選択が必要です。また実際に脆弱性骨折があるのか、骨折を起こしている部位も重要な情報です。お薬を使うにあたり、その他の臓器に異常がないかも確認します。その他には年齢、性別、既往歴、内服歴、歯の状態や生活背景などを総合的に判断して使用する薬剤を選択しています。 骨粗鬆症は症状がない場合も多く、治療を開始しても自己中断される症例が多いのも現状です。当院では効果的な治療が継続されるよう、どのようなお薬や投与方法が最適なのかを、私達の立場からもアセスメントし、情報を共有しながら治療を行っています。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂 参考文献 整形外科看護 第27巻12号 2022 メディカ出版 |
骨粗鬆症とともに Vol.62 大腿骨近位部骨折と骨粗鬆症治療継続の重要性
2022年10月23日(日) 新着情報1骨粗鬆症
大腿骨近位部骨折(股関節の骨折)には関節内骨折の大腿骨頸部骨折と、関節外骨折の大腿骨転子部骨折があります。ほとんどの場合、立った状態から転んでしまい、足の付け根に強い痛みが生じ歩けなくなります。75歳以上の高齢女性に多く、骨粗鬆症が原因であることがほとんどです。治療は90%以上で手術が選択されます。患者さんは高齢であることが多いため、肺炎や筋力低下、認知症の進行など、全身状態悪化の合併を防ぐためにも、早期手術、早期離床が必要な疾患です。 大腿骨近位部骨折は高齢人口の増加とともに年々増加しており、今後高齢人口がピークを迎えるまで増加することが予測されています。骨折後にさらに骨折をおこしてしまう骨折ドミノを引き起こさないためにも、骨粗鬆症を継続して治療していくことが重要です。 急性期治療からリハビリ期に移行し、地域で治療する患者さんが脱落することなく骨粗鬆症の治療を継続していけるよう、当院では急性期治療を担う医療機関とも連携しながら治療、支援を行っています。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂 参考文献 整形外科看護 第27巻1号 メディカ出版 2022 |
骨粗鬆症とともに Vol.61 骨粗鬆症治療薬 ビタミンK₂製剤 「適切な治療のために服用中のお薬の情報をお知らせ下さい。」
2022年10月06日(木) 新着情報1骨粗鬆症
骨粗鬆症の治療で処方されるお薬の一種であるビタミンK₂製剤には、骨形成の促進、骨吸収抑制、血清オステオカルシン濃度増加作用があり、骨粗鬆症での骨量、疼痛改善に効果があります。ビタミンKには骨形成の調整作用の他に、血液凝固因子の活性化による血液凝固の促進作用があります。 このような作用からお薬の併用で禁忌とされているのがワルファリン製剤です。脳卒中や心筋梗塞、深部静脈血栓症の予防や治療で広く用いられているお薬です。このお薬は血液凝固因子の肝臓での産生を阻害し、抗凝固作用を示すため、ビタミンKとワルファリンを一緒に摂取すると作用が拮抗し、ワルファリンの効果が減弱してしまうためです。 骨粗鬆症の治療が開始される年代の方では、その他の疾患で治療をされている方も多いため、お薬の飲み合わせには注意が必要なこともあります。安全に確実な治療を提供するためにも、受診の際にはご自身が飲んでいるお薬の内容や作用についての情報をお知らせいただきたいと思います。 骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂 参考文献 整形外科看護 第27巻9号 2022年9月発行 メディカ出版 |