昨日、グランキューブ大阪で第19回スポーツ傷害フォーラムが開催され後半の一部だけでしたが出席しました。 スポーツ傷害フォーラムは、医師、理学療法士、トレーナー、医科学研究者等が一堂に会し、競技スポーツにおける外傷、障害の病態、治療、予防に関する研究発表、情報交換を行うことを目的としている会です。昨日は一般演題27題、ランチョンセミナー2題、シンポジウム3題で行われました。一般演題の大半は理学療法士あるいはアスレティックトレーナーによる口演でした。 シンポジウムはフットボール(ラグビー・アメフト)傷害で講演1が「コリジョンスポーツにおける頚椎症、神経根症の診断と治療で演者が筑波大学医学医療計整形外科准教授坂根正孝先生、講演2がフットボール(ラグビー・アメフト)の肩関節脱臼で演者が行岡病院スポーツ整形外科部長中川滋人先生、講演3がフットボール(ラグビー・アメフト)の膝靱帯損傷で演者が兵庫医科大学整形外科教授吉矢晋一先生でした。 コリジョンとは衝突のことでラグビーやアメフトは激しいコンタクトが許されるスポーツであるが故に、特徴的な外傷、障害が発生します。今回の研究会は特にコリジョンスポーツにおけるスポーツ傷害がテーマになっていました。 私が到着したときはシンポジウム講演1の終わり頃でした。コリジョンスポーツ競技中に起こる一過性の頚部痛、上肢筋力低下、感覚障害をバーナー症候群(スティンガー症候群)といいます。症状は短時間で回復しますが、競技継続には筋力低下がないことが必須です。しかしながら頻回に起こす選手、重症化、回復の遷延が認められるときは頚椎症の合併等もあり精査が必要です。バーナー症候群は症状が一過性であると考えて、そうでないときはバーナー症候群とは決めつけないようにする必要がありそうですね。坂根正孝先生は椎間板ヘルニアや椎間関節症による神経根障害に対する低侵襲の手術治療を紹介しておられました。 シンポジウム講演2ではコリジョンスポーツ選手において頻度の高い肩関節脱臼についてでした。コリジョンスポーツ選手においては初回受傷後に再受傷の割合が非常に高率です。習慣性肩関節脱臼になってしまう要因として中川滋人先生は関節窩や上腕骨頭に大きな骨欠損が生じていることや、関節唇―関節上腕靭帯複合体の質に著明な劣化が見られることが多いことを指摘しておられました。最近の3D-CTやMRIなどの画像診断の進歩により早期にその病態を把握し、場合によっては初回脱臼でも手術治療の適応になると中川滋人先生は解説されました。 シンポジウム講演3は膝靱帯損傷に関する話でした。コリジョンスポーツ選手において手術治療を要する靱帯損傷の大半は前十字靱帯損傷(ACL損傷)です。最近では人工芝のグラウンドが多いので、人工芝にシューズが引っかかって起こる受傷機転が多いようです。ACL損傷に対する再建術は骨付き膝蓋腱(BTB)またはハムストリングス腱(HT)を用いた再建術が行われます。ACL再建術後の競技復帰率は高いのですが、コリジョンスポーツ選手においてはACL再建術後の再断裂受傷率が高いことが問題で、今後これら再断裂をいかに防止するかが大きな課題と言えそうです。後十字靱帯損傷(PCL損傷)と内側側副靱帯損傷(MCL損傷)は複合靭帯損傷例を除いて保存的に治療されることが多いようです。 本会の会長を務められた前田朗先生は大阪大学で膝関節外科、スポーツ整形外科を専攻され、現在福岡県博多市の成田整形外科院長であり、日本ラグビー協会では安全対策委員会委員をしておられます。花園における高校全国大会でも九州から駆けつけて医務委員活動をして下さっております。昨日はこのような素晴らしい会に出席できて良かったと思います。 昨日はクリニックの診療受付時間を短縮したために、患者様には大変ご迷惑をおかけいたしまして申し訳ありませんでした。この様な研修で得た知識を診療にフィードバックし、更に患者様のお役に立てることができますように研鑽していきたいと思っております。ご理解、ご協力を賜りますように、よろしくお願い申し上げます。 |