ステロイドとは副腎からつくられる副腎皮質ホルモンのひとつです。ステロイドホルモン薬には強い抗炎症作用や、免疫抑制作用などがあり、さまざまな疾患の治療に使用されます。しかし、効果が期待され臨床では頼りになる治療薬である反面、副作用も多く注意が必要です。
特に注意すべき副作用のひとつがステロイド性骨粗鬆症です。長期でステロイド治療を受けている患者の30~50%に骨折が起こるとの報告があり、小児から高齢者、女性、男性に関わらず幅広く起こります。
ステロイド性骨粗鬆症の病態には骨形成(新しく骨を造る)の低下と骨吸収(骨が壊れて吸収される)の亢進の両方が関与しています。骨形成の低下は、ステロイドの作用が、骨を造って増やす働きである骨芽細胞や骨細胞の寿命を短縮させます。骨吸収の促進は、腸管カルシウム吸収量の減少と尿中カルシウム排泄増加の結果生じる二次性副甲状腺機能亢進症であるとされています。ステロイド内服後は骨量が減少するとの報告があり、骨折のリスクは上昇するとの報告があります。
ステロイド治療中の患者に重要なことは、骨密度低下と骨折リスク上昇を抑制する一次予防(最初の脆弱性骨折の予防)とその後の二次予防(新たな骨折の予防)であるとされています。原疾患の治療だけに留まり副作用で起こる骨粗鬆症が見逃されている場合も多いと言われています。御心配な方は是非御相談いただきたいと思います。
骨粗鬆症マネージャー 石山瑞穂
参考文献
骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版、骨粗鬆症治療の予防と治療ガイドライン作成委員会編集、ライフサイエンス社 2015
名張市地域包括支援センターから「名張市認知症ケアパス」と「名張市認知症初期集中支援チームちらし」が届きました。
「名張市認知症ケアパス」では地域の身近な相談窓口として、各地区の「まちの保健室」と地域包括支援センターの紹介と連絡先が記載されており、認知症の人と家族を支える社会資源や認知症サポーターなどについても紹介してあります。名張市では、認知症になっても安心して暮らせるまちを目指しているそうです。
認知症は早期発見・早期対応が大切な疾患であるということもあり、名張市では認知症になっても、できるだけ住み慣れた地域の中で暮らし続けるために、認知症の人や家族に早期に関わる「名張市認知症初期集中支援チーム」を配置し、活動を始めているそうです。名張市認知症初期集中支援チームとは認知症またはその疑いのある方や、そのご家族をチーム員が訪問してお話しを伺い、必要に応じて、認知症に関する情報の提供や医療機関の受診、介護保険サービス利用のメリットに関する説明や助言を行うチームであるそうです。チームは、認知症サポート医、保健師、社会福祉士、介護支援専門員等の専門職で構成されているそうです。
支援の対象となる方は、名張市内にお住まいの40歳以上で、ご自宅で生活されているかたのうち、認知症やその疑いのある方で次のいずれかに該当される方です。
認知症の診断を受けていない方、継続的な医療を受けていない方、介護保険サービスをご利用していない、または中断している方、認知症の症状が強いため、対応に困っている方。
まずはお住まいの地区の「まちの保健室」または「地域包括支援センター」にご相談下さいということです。
この様なサポート体制は心強いですね。
整形外科を受診される患者さんは、「痛み」で苦しんでおられる方がほとんどであり、「痛みを何とかしたい、痛みを取りたい。」という思いで受診されます。そのため、理学療法を実施する際、「痛みの評価」が非常に重要となってきます。
まず、痛みを2つに分けて考えます。
1つは「指1本で示すことのできる痛み」であり、これをone point indicationと言います。このような限局した痛みがある場合、患者さんが「ここが痛いです。」と指1本で示してくれるので、主たる病態がその痛みの位置にあると判断します。
そしてもう1つは「手のひらサイズの痛み」であり、これをpalmar indicationと言います。患者さんに「どこが痛いですか?」と問いかけると、「この辺りが痛い。」と、少し広い範囲で痛みを訴えることがあります。そういった場合、主たる病態は痛みが出現している部位ではなく、他部位で認めることが多いです。
理学療法士はこのようにして「痛みの評価」を行うことで病態の推察をし、運動療法を実施しています。
リハビリテーション科 小野正博
先日、三重県医師会と三重県主催の講演会が開催されました。日本の急激な少子高齢化と人口減少の進行は著しく、今後の国を挙げての対応は喫緊の課題と言えるのではないでしょうか。異なる立場のエキスパートの方々が、それぞれの立場からそれぞれの切り口で解説して下さいました。
講演Ⅰは「人口減少とこれからの医療・介護制度について」で講師は国民健康保険中央会理事長原勝則氏でした。講演Ⅱは「少子化は解決できるのか?」で講師は明治大学政治経済学部教授加藤久和氏でした。講演Ⅲは「誰もが安心して暮らし続けられるために」で講師は三重県知事鈴木英敬氏でした。
講演Ⅰでは少子高齢化の進行と人口の減少、持続可能な医療・介護制度の構築、保健事業の積極的な取組などについて原勝則氏が解説して下さいました。
今後の人口構造の急速な変化は、2015年には人口1億2709万人で、2030年には1億1913万人、2053年には1億人を割り、2065年には8808万人になる試算だそうです。1年間の出生数は2015年に100.6万人、2030年には81.8万人、2065年には55.7万人になるそうですが、出生率は2015年の1.45から、あまり変化しない見通しであるということでした。2040年までの人口構造の変化では2025年までは高齢者(後期高齢者)の急増が特徴的ですが、その後は生産年齢人口の急減が特徴的であるそうです。
原勝則氏は介護保険制度改革において、自助と互助の取組を進めることで、共助である介護保険制度の持続可能性を高め、地域包括ケアシステムを構築することの重要性を説かれました。また原勝則氏は保健事業に取り組むに当たって、ビッグデータも活用した「データヘルス」の推進、地域包括ケアシステムの構築という視点の重視、インセンティブの活用、市町村が主体となった取組などが、特に重要なポイントではないかと説明されました。
講演Ⅱは少子化の状況、少子化の要因、経済社会環境と少子化対策について加藤久和氏が解説して下さいました。
日本の総人口のピークは2008年の1億2810万人だそうです。出生率は2005年の1.26が過去最低水準で少し増加傾向に転じており2017年で1.43に増加しているそうです。しかしながら出生率は2.07で現在の人口を維持できるということで、出生率は上昇しても出生数は減少する時代になっているそうです。振り返ってみれば35年前から、実際には少子化が生じていたということでした。時間と共に年齢別出生率のピークは高齢化し、1975年生まれ以降の出生率は急激に低下しているということでした。
少子化の要因として晩婚化、生涯未婚率(50歳時点の未婚者の比率)の上昇(1990年男性5.6%、女性4.3%、2015年男性23.4%、女性14.1%)などがあるということでした。また少子化の要因となる社会経済の環境変化として子どもを持つことのコスト上昇、出産・育児と仕事の両立を可能とする社会システム・制度の不備、結婚や出生などに対する価値観の変化、若年層を中心とした雇用情勢の悪化などが挙げられるそうです。
少子化対策について加藤久和氏は、社会政策として少子化対策に取り組む必要性は本当にあるのかという意見のあることを認めつつも、子どもは社会の宝であり社会全体にとっても有益な存在であること、子どもは公共財的な性格、あるいは正の外部性を持っているので子どもを育てるための支援として租税を投入することが少子化対策の根本の考え方であると述べられました。即効性より持続可能性の視点が大事であるということでした。
2017年は1.43である出生率ですが、加藤久和氏は政府も打ち出している希望出生率1.8をどう考えるのか、解決とはどのレベルか?と考える必要性を指摘されました。今後、30年間の人口動向は大きくは変えられないということでした。
講演Ⅲは三重県知事鈴木英敬氏が三重県の状況と将来展望、取り組みなどについて解説して下さいました。
三重県における人口減少の現状と人口の将来展望では、三重県の人口は平成30年に約180万人ですが、このまま推移した場合に2060年には約120万人まで落ち込むそうです。三重県の高齢者人口の現状は、人口は減少する一方、県内の75歳以上の高齢者は増加しているそうです。75歳以上の高齢者は2015年に24.6万人、2025年に31.8万人、2045年には32.0万人になる見込みであるそうです。三重県の市町別高齢化率は、三重県の南部におきまして40%以上の高齢化の進んだ地域が多く北部、中部でもほとんどが20%以上の高齢化率であるそうです。
三重県が行っている医療提供体制、医療人材の確保の取り組みは三重県医師確保計画の策定、次世代育成に向けて「みえ地域医療メディカルスクール」の開催などであるそうです。医師・看護師などの勤務環境改善のために平成27年度から「女性が働きやすい医療機関」認証制度を行い、3年間で10医療機関を認証しているそうです。在宅医療・介護連携を推進するために医療・介護関係者の連携を図るための拠点の設置など取り組みも進められているそうです。平成28年に開催された「認知症サミット in Mie」を踏まえて認知症施策の充実も図られているそうです。
地域の元気な高齢者を「介護助手」として育成し、介護職場への就職を支援することにより、介護人材の「すそ野の拡大」、「人手不足の解消」「介護職の“専門職化”」を目指しているそうです。働きやすい介護職場づくりを進めるために、介護事業所が職場環境の改善に取り組む内容について「取組宣言」し、それを県が証明・公表する「働きやすい介護職場応援制度」が平成30年10月にスタートしているそうです。
地域医療における小児在宅医療提供体制の整備も進められているようです。医療的ケアの必要な障害児(医療的ケア児)が増加しているが、在宅医療の医療資源や福祉資源は成人の在宅医療に比べて少ないそうです。在宅医療が必要な子どもの特徴として医療依存度が高い、成長に従って病態が変化していく、本人とのコミュニケーションが困難なことが多い、24時間365日の介助が必要で独居での生活は困難であり介助者は数分間も目が離せない、成長のための支援が必要、などがあるそうです。三重県内の医療的ケア児は平成28年には220人、全国的には18272人いるそうです。三重県では平成25年から在宅医療を必要とする小児に対する地域における支援ネットワークの構築に取り組み、平成29年度には県内全域で支援ネットワークが立ち上がり、平成30年には三重大学小児トータルケアセンターと連携し、地域ネットワーク連携研修会が開催されたそうです。課題は医療的ケア児の在宅での療養を支える医療・福祉資源が少ないことで、新たな資源の創出が必要であるということでした。平成31年には医療的ケア児の療養を支える医療・福祉人材の育成や地域の実情把握し、障害福祉サービスなどの創出につなげる人材(スーパバイズチーム)の育成に取り組んでいるそうです。
三重県では、結婚・妊娠・子育てなどの希望がかない、すべての子どもが豊かに育つことのできる三重を目指して「希望がかなうみえ、子どもスマイルプラン」を実行しているということでした。子ども・思春期、若者/結婚、妊娠・出産、子育て、働き方、とライフステージ毎に切れ目のない対策を行っているということでした。10年後の目標として、合計特殊出生率(平成25年に1.49)を、県民の結婚や出産の希望がかなった場合の水準(希望出生率:1.8台)にということと、「地域社会の見守りの中で、子どもが元気に育っていると感じる県民の割合」を平成25年に56%であったものを67%にすることを掲げています。
健康寿命の推移は、三重県では男女ともに健康寿命は伸びる傾向であるが、平均寿命を上回る伸びではないそうです。平成29年度のみえ県民意識調査では、幸福を判断する際に重視した項目は1位が家族関係68.4%、2位が健康状況68.0%であったそうです。鈴木英敬知事は健康寿命の延伸に向けた地域全体での健康づくりの取り組みが重要であるということでした。三重県の生活習慣病対策として、がん対策と糖尿病を説明されました。平成26年3月に三重県がん対策推進条例が制定され、平成30年3月に第4期三重県がん対策戦略プランが制定されました。人口10万人あたりのがんによる75歳未満の年齢別調整死亡率の推移では平成23年から平成29年にかけて減少傾向であり、減少率は全国5位であったそうです。子どもの頃からのがん教育としてモデル授業を実施しており、がん検診の受診啓発取り組みもなされているそうです。人口10万人あたりの糖尿病年齢調整受療率は平成23年から平成26年にかけて、全国的には変化なかったが、三重県では99.4から161.2と増加したそうです。糖尿病重症化予防人材育成研修として多職種連携の研修会を開催され、糖尿病予防啓発活動も行われているそうです。平成29年12月には糖尿病性腎症重症化予防に係る三重県連携協定が三重県医師会、三重県糖尿病対策推進会議、三重県保険者協議会、三重県により協定締結されたそうです。
「誰もが健康的に暮らせる”とこわかの三重”」の実現をめざして、県民の皆さんが主体的に健康づくりに取り組むことができるよう、平成30年7月に「三重とこわか健康マイレージ事業」をスタートしているそうです。マイレージ特典協力店は「三重とこわか健康応援カード」の提示により、特典サービスを提供するということです。現在652店舗で平成31年3月末までに1000店舗を目標にしているそうです。キックオフイベントには約300人が参加し、準備運動の後でウオーキングを実施したということでした。平成31年度には、さらに「健康経営」の視点から、企業、関係機関・団体、市町と連携し、「三重とこわか県民健康会議」の設置を企画しているそうです。取り組み方針として、産官学など、地域全体で健康づくりに取り組む体制の確立、健康経営に取り組む企業の増加、県民が主体的に健康づくりに取り組む環境作りなどであるそうです。
平成30年に約180万人である三重県の人口は、このまま推移した場合に2060年には約120万人まで落ち込む見込みであるそうですが、鈴木英敬知事は、これらの施策により、自然減対策と社会減対策を講じて2060年に約142万人を確保できることが見込まれると説明されました。三重県では将来を見据えた行政の様々な取り組みが行われているようですね。