先日、平成29年度名張市個別乳幼児特別支援事業、発達支援研修会が開催されました。演題は「育てにくさを感じる親に寄り添う支援」で講師は森之宮病院小児神経科小倉加恵子先生でした。
「健やか親子21」とは母子の健康水準を向上させるための国民健康運動だそうです。児童虐待に関する相談件数はこの25年間で100倍になっているそうです。「健やか親子21」(第1次)で改善しなかった指標から心の問題が課題として残ったということでした。これらを踏まえて「健やか親子21」(第2次)の重点課題は「育てにくさ」を感じる親に寄り添う支援と妊娠期からの児童虐待防止対策であるそうです。「育てにくさ」とは子育てに関わる者が感じる育児上の困難感で「育てにくさ」の概念は広く、一部には発達障害などの障害や疾病が原因となるということでした。1次予防としてハイリスク家庭の把握と援助、健全育成の確認、2次予防として早期発見、3次予防として再発防止と繋がるそうです。
日本における新生児・乳児死亡率の減少は近年著しく、1947年に乳児死亡率76.7から2014年には2.1に(出生1000人あたり)、新生児死亡率は1947年に31.4から2014年には0.9に減少したそうです。このことより子育ての悩みは「育ちにくい」から「育てにくい」に変わってきたようです。近年の日本における社会的変化は家族形態の変化(ひとり親、一人っ子増加)、家庭内問題の顕在化(子ども虐待、DV)、労働や生活スタイルの変化(女性の社会進出、ワークライフバランス)、経済格差(子どもの貧困)、人との繋がりの変化(インターネットの普及、孤独死、孤独な子育て)などがあるそうです。
昔は成人になるまでに子守など子どもと触れ合う経験をしたのが、今は経験としての自然な育児体験がなく育児書やネットで知識としての育児を知り、経験が乏しいままで自分の子どもと遭遇するというように、近年の日本における社会的変化により、リスクがなくても育てにくくなっているようです。小倉加恵子先生によりますと子育ての楽しさを感じられない理由に「育てにくさ」があり、診断名がつくこともあるが、つかない子どももたくさんいて、親にとってその重みは同じなので、寄り添う支援が必要になるということでした。
Bowerによると乳児期はパーソナリティと呼ばれる対人間関係技能の発達にとって人生の中で最も重要な時期であり、幸せな赤ん坊は、多分幸せな大人になるのである、と述べているそうです。またBowlbyは母への愛着そのものが乳児の根源的欲求であり、この母性的愛情の喪失はその後の人格形成に重大な影響があると述べています。遺伝と環境の相互作用により脳は発達し、表現される形質も変化していくということでした。児童精神科医であるエリクソンが述べた成長段階での発達課題では乳児期(0~2歳)での信頼感の獲得という発達課題が最も重要であるということでした。基本的信頼感は乳児期に育まれるということで、母親との一体感でアタッチメントを形成し、内的母親像の確立が心の土台となるようです。アタッチメント形成は子の愛着行動と親の養育行動から始まるそうです。産前・産後のホルモン動態の変化は、妊娠中プロゲステロン、エストロゲンの増加により子宮の胚着床準備、胎盤の成長、出産前後のオキシトシンの増加により射乳、養育行動、愛着、子どもを守るなどの作用、出産後のプロラクチン増加により母乳産生などの作用があるそうです。これは全く知りませんでしたが、男性も父親になると男性ホルモン量が減るそうで、テストステロンの減少により子どもへの共感が増す、養育行動が促進するなどの作用があるそうで、テストステロンが上昇すると新生児の泣き声に同情感が少ない、養育行動が少ない、子どもの写真を見たときの脳の表情認知領域や共感に関わる領域の活動が低くなるなどの作用があるそうです。小倉加恵子先生によりますと子育てに関連する脳領域があるそうで、ウィニコットが提唱した「母親の原初的没頭」という概念では、新生児が生まれる前から出生後の数週間にわたる母親の母性的な心的状態で乳児に心をとらわれた状態になるということでした。これは生後3ヶ月頃がピークであるということですが、母親の73%が「この子が私の赤ちゃんだなんて信じられない。あまりに完璧過ぎる。」と思うそうです。小倉加恵子先生によりますと、これは私は大変面白いと思ったのですが、父親は88%が同じように思うそうです。親バカという言葉も、成る程!と思えますね。
子どもの脳の成長・発達により問題解決能力、ストレス耐性、共感・社会性などが向上し、大人になったときの子育て能力、精神的しなやかさ(レジリエンス)が向上するので、脳機能から考えると早期支援の意義は大きいということでした。親の養育行動で子どもの反応が変化するそうで、子どもは愛着行動で親の子育てに協力しているそうです。子どもの脳機能の障害などにより適切な愛着行動ができないと、「育てにくさ」につながってしまうようでした。そのために疾病や障害がある子の親子の相互作用を育む支援が必要であるということで、親が子育て不安や自己不能感を喜びや充足感に変えるために専門家により親が子どもの表情やサインに気づくための手助けが必要であるということでした。
「育てにくさ」の要因は①子どもに起因するもの、②親に起因するもの、③親子関係に起因するもの、④環境に起因するものに分類されるそうです。子どもに起因するものとして発達のバリエーション、神経性習癖、早産低出生体重児、障害・疾病:発達障害、アレルギー性疾患などがあるそうです。親に起因するものとして子育て経験の未熟さ、仕事との両立、生理的な心身の変化:月経前緊張症、障害・疾病:知的障害、精神疾患などがあるそうです。親子関係に起因するものとして子どもに無関心、過干渉(依存)、親子の愛着形成などがあるそうです。環境に起因するものとして物的環境:経済的、交通機関、自然環境、人的環境:夫婦関係、嫁姑、支援者、地域、社会的環境:サービス、制度、政策などがあるそうです。
最後に小倉加恵子先生は「どのように寄り添う支援をするのか?」について解説して下さいました。サポートの受け手にとって何を求められているのかを調べた調査があるそうです。受け手にとって有用な支援は情報的支援、ストレスに苦しむ人の気持ちに寄り添う評価/情緒的支援、必要な資源を提供する実体的支援などに分かれるそうですが、医師は情報的支援、次に実体的支援を求められる傾向が多く、看護師は評価/情緒的支援を求められる傾向が多いそうです。健やか親子21の指標の乳幼児検診の問診必須項目の重要課題①-2は「育てにくさを感じたときに対処できる親の割合」であるそうです。3歳児の親の場合、育てにくさを感じている親の割合は35%であるそうです。育てにくさを感じた時に対処できる親の割合の調査では約15%の親が育てにくさの解決方法を知らないという結果であったそうです。ところが育てにくさを感じる親に対する保健指導の評価では、育てにくさを感じる親に対する保健指導の評価をしていない割合が65%にも上るそうです。
支援するためには「育てにくさ」の要因を分析する必要性がありますが、小倉加恵子先生は要因を分析するときの留意点として①客観的に全体像を把握、②どのような支援が可能か?の視点、③ポジティブな面も見つける、の3点を挙げられました。①客観的に全体像を把握とは「育てにくさ」は親の主観的経験であり支援者は客観的次元で分析する必要があり、気持ちに寄り添うあたたかさと全体を俯瞰する冷静さが必要であるということでした。②どのような支援が可能か?の視点とは妊娠期から現在にいたるまで多面的な視点で多職種による分析がなされることにより潜在的なニーズに気付き、多角的な支援が可能となるということでした。③ポジティブな面も見つけるとは、要因別に客観的に評価することでネガティブに思われる面だけでなくポジティブな面も見えてくるということでした。親が今できていること、子どもが今できていること、活かせそうな資源、親が気づけたこと、など“持続可能な支援”には活かせる面が重要であるということでした。
小倉加恵子先生は障害児や未熟児の母親となった心の傷についても解説して下さいました。予想外、期待していたのとは違う出産、子育てが心的外傷体験(衝撃的な肉体的・精神的ショックを受けたことで、深い心の傷となってしまうこと)になり、無力感と強い罪悪感につながるそうです。心的外傷体験から4週以内に始まり、2日~4週間でおさまるパニック、身体症状、注意力低下、現実感の喪失などの「急性ストレス障害」と心的外傷体験によって様々なストレス障害が生じて数ヶ月~数年後に発症する「心的外傷後ストレス障害」に分類されるそうです。悲哀とその受容は否認(何かの間違い、あの医師の誤診)、怒り(治療が不適切、なんでこんな目に)、取引(障害がなければ対処できる)、抑うつ(この子が生きていてもみんなが不幸)、受容(障害があっても、家族で幸せに)という過程が複雑に絡み合い、紆余曲折を経ながら進行するそうです。これは階段のように進むプロセスではないことに注意する必要があるそうです。
支援者の態度としては理解と援助を惜しまない態度が望まれるということで、受容に至るまでの心理状態について理解し、病気や障害について理解し、予想される問題について対応する方法を知っておく、不安や混乱、焦る気持ちをそのまま受け止め見守る、表現方法に気をつける、叱咤や禁止をしない、意見を押しつけない、安易な慰めは不信感につながる、などが重要であるということでした。困りごとには要因分析の3つをおこない、寄り添うことが重要であるということでした。
専門外の私にとっては少し難しいところもありましたが、小倉加恵子先生は最近の知見まで大変詳しく紹介してくださいました。実際に現場で子どもたちとその親と接する、養護教員の先生方にとってとても実践的で参考になることばかりではなかったかと思われました。私自身も大変勉強になりました。
日本医師会、産経新聞社主催の第6回日本医師会赤ひげ大賞が発表されました。受賞の対象者は、病を診るだけではなく、地域に根付き、その地域のかかりつけ医として、生命の誕生から看取りまで、さまざまな場面で住民の疾病予防や健康の保持増進に努めている医師、ということです。
豪雪地帯で患者に向き合う90歳医師の藤巻幹夫先生をはじめ、5名の先生方はいずれも各地域において献身的に医療活動に従事され、患者様と深い信頼関係でつながっている様子です。
5名の先生方の患者様への献身に、心から敬服いたします。
「モデルが秘密にしたがる体幹リセットダイエット」を読みました。100万部突破、テレビで紹介され超話題、頑張らなくていいのにやせる!などのキャッチコピーに惹かれて、本屋さんで見つけて購入してみました。1つのエクササイズが1分間で、5つのエクササイズ全部でも5分間、これを2週間続けると効果があり、エクササイズをやめても効果が持続するというのは大変魅力的ですね!
実際にやってみると1つめと2つめのうつぶせで寝てするエクササイズはなかなか大変です。何回かしてみましたが、どうしても継続できない私の意志の弱さは致命的です。また同時に食事の改善も重要ですね。
いずれエクササイズを継続して、食事も改善して、効果を出してみたいものですが、夢に終わるかもしれません。