2017 年 9 月 のアーカイブ

「ためしてガッテン!」

2017年09月20日(水) 院長ブログ

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先週放送の「ためしてガッテン!」は「新・現代病!世界に広がる謎の痛み」という題に惹かれて視聴いたしました。

皆さん、「スマートフォンサム」という言葉をご存じですか?実は私も初めて聞きました。「サム」とは親指のことです。世界中で普及しつつあるスマートフォンですが、スマートフォンを人差し指で操作していると問題ないのですが、親指で操作すると手首を痛めることがあり、これを「スマートフォンサム」と呼ぶそうです。

実はこれは母指狭窄性腱鞘炎なのですが、その成因について番組では興味深い解説をしていました。発生学的に人間の手指は、猿と同様に握る(指を屈曲する)動作が重要なので筋肉が発達しており、指を伸ばす動作は重要性が低いので指を伸ばす筋肉は弱いということです。さらに指を伸ばす筋肉は腱の部分が多く、親指を伸ばす筋肉の腱は手首の親指側を通っており、そこに腱が通るトンネルである腱鞘が存在するのです。また腱鞘は解剖学的にバリエーションがあり、内部に隔壁が存在する場合は、さらに腱鞘炎をきたしやすいということでした。つまり元々弱い筋肉である親指を伸ばす筋肉を酷使すると、腱鞘のところで炎症を起こしてしまい腱鞘炎発症し、手首の親指側の痛みを生じるということです。

それにしても手首が痛いのに、まさかその原因が親指にあったとは、確かになかなか気づきにくいでしょうね。

出演しておられた先生によりますと、以前はピアニストや美容師などの手を酷使する特定の職業の人に多かったらしいのですが、最近はごく普通の若者やサラリーマン、主婦にも多く見られるようになったということでした。その原因は親指の使いすぎなのですが、スマートフォンを親指で操作したり、パソコンのキーボードをよく使ったりすることにより起こることが多いそうで、世界中に?広がってきているそうです。

特定の年齢の女性に多いという特徴もあるようです。40~50歳代の女性で更年期に体内のホルモンバランスが変化し、炎症を抑える機能が低下して腱鞘炎を起こしやすくなるようです。また出産の前後にもホルモンバランスの変化に加えて、赤ちゃんを抱っこするときの親指の負担で腱鞘炎を起こしやすくなるようです。

番組でも紹介がありましたが手首の腱鞘炎のチェック法は親指を曲げて、他の4本の指で親指を軽く握り、親指側を上にした状態で手首を小指の側に軽く曲げて、手首に強い痛みが出れば手首の腱鞘炎が起きている可能性があるという方法で「アイヒホッフテスト」といいます。またこの手首の腱鞘炎は「ドケルバン病」とも呼ばれます。ともに外国人の名前で、一般にあまり馴染みはないでしょうね。

出演しておられた先生によりますと手首を守るために気をつけることは、まず痛みが出たときにもんではダメということです。炎症が起こっている部分をもむと、患部にダメージを与え症状が悪化するということです。スマートフォンが原因であれば親指の操作を避けてできるだけ人差し指などを使うことや、パソコンを使うときにはキーボードの手前にタオルを敷いてその上に手を乗せて操作することで親指の負担を減らすことなどが勧められるということでした。

症状が強いときや長引いているときは、整形外科の受診が勧められるということです。治療はサポーターなどによる患部の保護や、痛み止めの注射が中心になります。

私のようにアナログ人間で、スマートフォンの使用は人差し指超スロー操作をしている場合には、スマートフォンサムは無縁かと思われました。それもまた情けない話ですね。

敬老の日

2017年09月18日(月) 院長ブログ

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(本日の産経新聞記事から抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は敬老の日です。

総務省が17日に発表した人口推計によりますと、15日時点で国内の90歳以上人口が初めて200万人を突破し、206万人になったということでした。

本日の産経新聞記事によりますと、昭和55年に12万人であった90歳以上人口は、平成16年に102万人となり、その13年後の平成29年に206万人ですので、この13年間で倍増したということになります。医療の進歩の賜とはいえ、数字で見るとこれは本当に驚くべき高齢化の進行ですね。

欧米主要6カ国と比較した高齢化率でも日本はダントツに高いようです。

全就業者に占める65歳以上の人の割合は11.9%で、高齢者の社会での役割はますます増加してきているようです。生活設計やセカンドライフのあり方も、今後どんどん変化していくのかもしれませんね。

それにしても、産経新聞に載っていた「90歳以上人口の推移」のグラフは衝撃的です。こんな急激な右肩上がりのグラフって…見たことあります?

リハビリ通信 No.241 歩行介助と支持基底面について

2017年09月17日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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歩行が不安定な場合、安定して歩くために杖や歩行器といった器具の使用、歩行介助などが行われますが、これらは「支持基底面」を増大させることにより安定させています。この支持基底面とは、体重や重力 により圧を感じることができる支持面と、その支持面の間にできる面のことを言います。この支持基底面から重心が外れると不安定となり、転倒する危険性が生じます。そのため、この支持基底面を広げること(図1)が歩行時の安定性につながります。そして(図2)にあるように、杖をつくことで支持基底面はさらに広がり、安定します。

このように「支持基底面を広げる」ということは、歩行時の安定性につながるので、歩行介助をする際も同様に考えれば不安定性を解消できるのではないか思います。例えば、下の図のように腋窩(腋の下)に手を入れて介助する場合、介助者は反対側の手を把持して支えてあげれば杖をついている状況が再現でき、支持基底面を広げることとなるために安定します。

歩行介助のやり方は様々なものがあると思いますが、どんな方法であっても「支持基底面を広げる」ということが重要であると思います。

リハビリテーション科 小野正博

待ち時間のお知らせ(9月11日~9月16日)

2017年09月16日(土) 待ち時間のお知らせ1新着情報

9月11日~9月16日

「最新のエビデンスから考える骨粗鬆症治療薬の使い分け」

2017年09月10日(日) 院長ブログ

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先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。特別講演は「最新のエビデンスから考える骨粗鬆症治療薬の使い分け」で講師は三重大学大学院医学系研究科運動器外科学・腫瘍集学治療学教授須藤啓広教授でした。

骨粗鬆症治療薬は最近、多く開発されて治療の選択肢が多くなってきました。須藤啓広教授は最新のエビデンスに基づいて、骨粗鬆症治療薬の使い分けをわかりやすく解説して下さいました。

須藤啓広教授はまず、脆弱性骨折である大腿骨近位部骨折は全例骨粗鬆症であり骨粗鬆症薬物治療の適応であるということを強調されました。これは大腿骨近位部骨折の治療後であっても、骨粗鬆症薬物治療が継続されずに終わってしまう例が多いということなどが背景にあると思われます。須藤啓広教授は大腿骨近位部骨折後に適切な骨粗鬆症治療がなされないと生存率が低下し生命予後が悪化すること、大腿骨近位部骨折後に反対側を再び受傷することが多く脆弱性骨折は骨折の連鎖を起こすこと、両側の大腿骨近位部骨折を起こすと生存率がさらに低下し、予後が悪化することなどを理由として挙げられました。

それでは、どの薬剤を選択するかですが、須藤啓広教授はエビデンスから考えると有効性の評価Aであるビスホスホネート薬(アレンドロン酸、リセドロン酸)、デノスマブ、ゾレドロン酸から選ぶのが合理的であると述べられました。75歳以上の人に対する大腿骨近位部骨折抑制効果はデノスマブで有効性が認められているそうです。骨折部の骨癒合に対する骨粗鬆症治療薬の影響は、ビスホスホネート薬、デノスマブでも臨床的には骨癒合への悪影響は報告されていないということでした。

須藤啓広教授は次に脆弱性骨折である椎体骨折は骨粗鬆症であり、骨粗鬆症薬物治療の適応であるということを強調されました。椎体骨折は単純レントゲン写真にて新鮮例か陳旧例か判別しにくい例をしばしば認めます。須藤啓広教授は座位と立位のレントゲン写真を比較することにより、椎体骨折が新鮮例か陳旧例かの診断精度が上がるデータを示されました。椎体骨折症例に対して適切な骨粗鬆症薬物治療がなされないと生命予後が悪化し、特に椎体骨折を三カ所以上起こしていると有意に生存率が低下するそうです。椎体骨折に対して有効性の評価Aである骨粗鬆症薬物治療はエルデカルシトール、ビスホスホネート薬(アレンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸、イバンドロン酸)、SERM(ラロキシフェン、バセドキシフェン)、副甲状腺ホルモン薬(テリパラチド遺伝子組換え、テリパラチド酢酸塩)、デノスマブです。副甲状腺ホルモン薬は骨折の危険性の高い骨粗鬆症に適応されるということです。

須藤啓広教授によりますと、生命予後の悪化につながる骨折の連鎖を絶つためには、まず骨密度検査を積極的に行うこと、必要に応じて胸腰椎レントゲン検査をすることであると強調されました。椎体骨折の約3分の1は無症状であるということですので、疼痛がなくても身長低下や脊椎変形の疑われる症例には胸腰椎レントゲン検査が必要ですね。

骨粗鬆症治療薬では薬物により報告されている骨密度増加割合は様々です。須藤啓広教授は「Goal-Directed Treatment for Osteoporosis」ということを紹介してくださいました。これは元々の骨密度から約3~5年で薬物治療を行うことにより目標とする骨密度に達するように、骨密度増加効果別に薬剤選択を考えるということです。これによりますと骨密度低下の著明な場合には骨密度増加割合の大きい副甲状腺ホルモン薬、デノスマブ、ビスホスホネート薬などからの選択が望ましいということでした。副甲状腺ホルモン薬(テリパラチド遺伝子組換え)からデノスマブへの逐次療法で大幅な骨量増加が得られたそうです。これは順序が大事で、骨形成促進剤投与後に骨吸収抑制剤投与することが有効であるということでした。副甲状腺ホルモン薬(テリパラチド酢酸塩)からデノスマブまたはビスホスホネート薬へのスイッチではデノスマブの方が有意に骨量増加し背部痛減少したというデータがあるそうです。しかしながらデノスマブ中止後に1年間で骨密度減少を認め、脆弱性骨折の危険性が増加したということで注意を要するようです。

須藤啓広教授は整形外科のみならず他科の診療所においても、骨粗鬆症治療を必要とする方に確実に薬物治療がなされることの重要性を説かれ、薬物治療薬の使い分けをガイドラインに沿って大変わかりやすく解説して下さいました。