2017 年 5 月 のアーカイブ

「がん診療と地域連携~肺がん治療を中心に~」

2017年05月03日(水) 院長ブログ

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先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。特別講演は「がん診療と地域連携~肺がん治療を中心に~」で講師は伊賀市立上野総合市民病院副院長田中基幹先生でした。田中基幹先生は泌尿器科と腫瘍内科を専門としておられ、泌尿器科領域にとどまらず全ての領域のがん診療に取り組んでおられます。田中基幹先生は伊賀市立上野総合市民病院におけるがん診療と地域連携について紹介してくださいました。

田中基幹先生によりますと日本人の2人に1人は癌にかかり、3人に1人は癌で亡くなるそうです。今や日本は癌多死社会と言える、ということでした。日本人が罹患する癌の頻度は大腸癌、胃癌、肺癌などが多いそうですが、肺癌は死亡数が多く、発見が遅れると死亡率が高くなるということでした。田中基幹先生によりますとこれからのがん診療で求められることは、ライフステージや癌の特性を考慮した個別化医療であるだろうということでした。

伊賀地域二次救急医療圏(伊賀市、名張市および周辺地域)における人口は約18万人、高齢者は約5万人であるそうです。伊賀地域二次救急実施病院は伊賀市立上野総合市民病院、岡波総合病院、名張市立病院の3病院だけですので、一定の割合で他地域への患者さんの流出はあると思われます。田中基幹先生はできるだけ多くの方が、慣れ親しんだ地域で医療を完結できるように目指したいと言っておられました。

田中基幹先生は泌尿器科専門医だけでなく、日本がん治療認定医、日本がん検診・診断認定医なども持っておられ、伊賀市立上野総合市民病院では本館5階の地域集学治療センターを立ち上げ統括しておられるようです。こちらは50床で4人部屋6室と個室が20室もあるそうで、入院患者様のQOLとプライバシーに配慮されています。がんサポート・免疫栄養療法センターではがん化学療法認定看護師や日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医など各種エキスパートの育成を進め、外来化学療法室を運用し通院での化学療法を推進しているということでした。医師(がん治療認定医・精神科医)、看護師、栄養士、がん相談支援室スタッフなど多職種により緩和ケアチームを作っているそうです。免疫栄養療法を含めた適切な栄養療法を介入することでがん患者の体重減少とQOLの低下、生命予後まで改善されるということで免疫栄養療法室が役割を果たしているそうです。

伊賀市立上野総合市民病院は在宅療養後方支援病院として開業医との連携強化を図っているそうです。かかりつけ医との連携も強化しており、退院後のフォローにも力を入れているそうです。伊賀市立上野総合市民病院では地域出前講座や市民講座を行い、地域住民との交流も積極的に深めているそうです。地域医療研修会も活発で、がん診療連携推進病院指定を受けている伊賀市立上野総合市民病院では毎月1回多職種の医療スタッフが参集し「キャンサーボード」という検討会、講習会を開催しているそうです。これらの取り組みにより、紹介率、逆紹介率も向上してきているそうです。

地域集学治療センターでは手術を受けられた患者様だけではなく、他病院で治療を受けられた患者様のがん治療継続、緩和医療や終末期医療を紹介元や地域医療機関と連携し後方支援を中心に運用するという役割であるそうです。伊賀市立上野総合市民病院におきまして着実に進んだ医療システムが構築されてきている様子と、それを牽引している田中基幹先生の熱意に感心いたしました。