捻挫や打撲、肉離れなどのケガをした際に、病院に受診するまでの間に、損傷部位を最小限に抑える応急処置のことをRICE処置といいます。
RICE処置とは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字をとってRICE処置と呼ばれています。
受傷後は必ず損傷部位に熱感・腫脹・発赤の炎症症状が出現します。その炎症症状を抑えるために・・・
Rest(安静):損傷部位を動かさないことや体重をかけないこと。
Ice(冷却):損傷部位を15~20分間氷で冷やすこと。冷やす際に火傷に注意すること。
Compression(圧迫):弾性包帯で損傷部位を軽く圧迫をすること。
Elevation(挙上):損傷部位を心臓より高く挙げること。
以上のことを受傷直後から病院へ受診するまでに適切に行うことで治癒を早めることができます。これはあくまで応急処置であり、治療ではないので処置後は必ず病院へ受診しましょう。
リハビリテーション科 服部 司
先日、第19回奈良スポーツ医学研究会が開催され出席しました。
特別講演Ⅰは「スポーツドクターの役割とメディカルサポートの実際~スポーツ外傷障害の疼痛に対するスクリーニングと治療~」で講師は宮崎大学医学部整形外科助教田島卓也先生でした。
田島卓也先生は宮崎県ラグビーフットボール協会メディカル委員長で、2003年~2004年U-19ラグビー日本代表チームドクター、2004年~2007年ラグビー日本代表帯同ドクターなどを務められ、日本ラグビー界のメディカル部門の第一人者であります。田島卓也先生によりますと、平成23年8月24日にスポーツ基本法が施行されており、スポーツの基本理念を定め、スポーツに関する施策の基本となる事項を定めるものであるそうです。
田島卓也先生によりますと、スポーツドクターとは選手のスポーツ活動復帰が治療のゴールであるということで、通常の診療の場では日常生活活動レベルの改善と仕事復帰などを治療のゴールにしますので、より求められるレベルが高いと言えるかもしれません。田島卓也先生はスポーツドクターの役割を、スポーツそのものの理解、競技特異性やルール、トレーニングに精通すること、アンチドーピング、整形外科医であれば整形外科以外の知識(内科的な知識など)、状況判断や心理面までかなり幅広く求められるものが多く、スポーツドクターの資質として高いレベルの臨床力、総合力、新しい知識、現場での活動力などを挙げておられました。田島卓也先生の目指しているスポーツドクターがかなり高いレベルであることがうかがえます。
田島卓也先生によりますと、宮崎大学整形外科ではスポーツグループがスポーツ整形、メディカルチェック、検診、マッチドクター、健康スポーツナース派遣などを行っているそうです。メディカルチェックは社会人選手、国体選手、高校全国大会出場レベルの選手などを対照に行っているそうです。競技により検査項目や内容を変更したりするそうです。
検診は2007年から学童期運動器検診としてアンケートと直接検診を行っているそうです。子どもの体力低下は危機的レベルであり、運動不足による肥満や生活習慣病が問題になっているそうです。また逆に運動過多も問題となり、四肢、脊椎のスポーツ障害を生じているそうです。中でも宮崎大学整形外科では国民的人気スポーツである野球において少年野球検診で野球肘などの早期発見、早期治療に積極的に取り組んでいるそうです。選手、指導者へのアンケート、可動域検査、エコー検査などの一次検診を行い、必要に応じてレントゲン検査、診察を行う二次検査をその場で直ちに行うそうです。これにより二次検診の受診率を大幅に高めているそうです。
田島卓也先生によりますと、現場のサポートとしてはチーム帯同ドクター、マッチドクターなどの派遣を行っているそうです。マンパワー不足が問題で、宮崎大学整形外科教授帖佐悦夫先生の現場のサポートに加わっているそうです。マンパワー不足解消のため平成21年からは健康スポーツナース養成にも取り組んでいるそうです。現在31名の健康スポーツナースがいるそうです。
宮崎県は各種スポーツのキャンプ地としても有名で、2009年には1131団体、17万2894人がキャンプに参加したそうです。県を挙げて招致しているそうです。スポーツ選手マンパワー不足にとってキャンプ地でのストレスは、怪我をしたときなど不慣れな土地で病院受診しないといけないことで、それに対して迅速な対応が望まれるということでした。キャンプ地でスポーツ選手が受診した受診科は整形外科65%、内科12%であり、整形外科の部位は下肢59%、上肢28%であり、画像検査ではMRI検査が必要となることが多いそうです。MRI検査はどこでも混み合っていますから、なかなか緊急で検査を行うことは難しいでしょうね。田島卓也先生はキャンプ地後方支援病院間での横断的サポートシステムが必要であろうと指摘されました。
田島卓也先生はU-19ラグビー日本代表チームドクター、ラグビー日本代表帯同ドクターなどの経験を元に帯同ドクターの役割として外傷の対応、選手のコンディショニング、ドーピングコントロール、選手所属各チームとのコミュニケーションなどが重要であると指摘されました。また外傷、障害への対応、メディカルチェック、テーピングメニュー、外傷チェック、処置、リハビリプラニングなどを行い、外傷発生時には診断、画像診断、重症度判断、予想治療期間、治療プラン、リハビリテーションプランなど多くのことが求められるということでした。また外傷、障害統計によりますと、下肢外傷、体調不良、上肢外傷、頭頚部外傷の順であったそうです。また外国においては選手が下痢などを起こさないように、出てくる食事、水、生野菜、ジュース、氷、牛乳、ヨーグルトなどすべての食材はまず、ドクター、トレーナーが味見を行い、翌日に下痢をしていなかったら選手にも許可するようにしていたそうです。まさに体を張った選手サポートをしておられたようです。
2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップ日本大会に向けて田島卓也先生は試合時には試合会場にマッチドクター、さらに病院待機ドクターも必要であり、整形外科だけの対応ではもちろん無理で、全国的、全県的なサポートが試合地、キャンプ地でも必要で、さらには観客対応も必要であるということでした。田島卓也先生によりますと、All Japanでのサポート体制の構築が必要であるということです。
地域の検診からワールドカップまで、精力的にかつ緻密にスポーツ医学会を牽引している田島卓也先生に感心しきりでした
リオデジャネイロ五輪で、ラグビー7人制男子日本は4位でしたね。おめでとうございます。素晴らしい成績だと思います。
一次リーグではニュージーランドに勝利、準々決勝でもフランスに勝利と、また新たな歴史を作ってくれました。最後は少し息切れした感じでしたが、フィジーと南アフリカはとてつもなく強いですね。仕方ないと思います。ラグビー7人制男子日本代表チームは15人制とは異なる魅力を見せてくれたと思います。ありがとうございます。
リオデジャネイロ五輪は日本選手の活躍で盛り上がっていますね。水泳、体操、柔道など目覚ましい活躍ですね。卓球も男女とも頑張っていますね。これからいよいよ正念場の様ですね。
応援したいと思います。
足関節は捻挫(ねんざ)の起こりやすい関節であり、捻挫した際、足関節の外側に位置する靱帯が損傷されることが多いです。靱帯に一時的にストレスが加わった程度であれば、その予後は良好ですが、加わった外力が大きい場合、靱帯損傷や靱帯付着部の剥離骨折などを併発します。
「ただの捻挫」と侮ってはいけません。
捻挫を受傷した方から「ただの捻挫だから、しばらくじっとしてたら治ると思ってた。」とよく聞きます。靱帯損傷がなければそれでいいのかもしれませんが、もし靱帯が損傷していたり、剥離骨折を伴っていた場合、「足関節の固定」と「患部の安静」が必要となります。
靱帯は、損傷を受けると4~5週間の修復期間が必要となります。その修復期間が完了するまではしっかりと固定をし、靱帯走行部の支持性を獲得するということが重要となってきますが、この「修復期間」に無理なストレスをかけると損傷靱帯の修復が阻害され、足関節の支持性が獲得できなくなってしまいます。そして、歩行時に「足首が痛い。」、「足首がグラグラするような気がする。」といった症状の出現に発展していまします。
足関節に限らずですが、捻挫を受傷した際には「しばらくしたら治る」ではなく、整形外科を受診し、適切な検査・治療を受けることをおすすめします。
リハビリテーション科 小野正博