膝蓋靱帯炎とは、膝蓋骨尖から脛骨粗面に付着する膝蓋靱帯が運動などにより炎症が起こる病態のことを言います。膝蓋靱帯炎は、スポーツ選手の中でも特にトップアスリートに多く発症すると報告されています。膝蓋靱帯に疼痛を認め、初期ではスポーツ後に疼痛が出現するが進行するとスポーツ中にも疼痛が出現すると言われています。
膝蓋靱帯の圧痛には、①膝関節屈曲位にて疼痛が出現する場合と②膝関節伸展位で疼痛が出現する場合、③膝蓋靱帯の膝蓋骨付着部に疼痛が出現する3パターンがあります。
①膝関節屈曲にて疼痛が出現する場合、膝伸展機構への張力が増すことで、膝蓋靱帯表層への伸張ストレスが増大し、疼痛が出現すると言われています。
②膝関節伸展位で疼痛が出現する場合、膝蓋靱帯の深層には膝蓋下脂肪体が存在し、膝蓋下脂肪体の滑走障害や炎症後の線維化が生じることで疼痛が出現すると言われています。
③膝蓋靱帯の膝蓋骨付着部に疼痛が出現する場合、外側広筋や腸脛靱帯の過緊張による膝蓋骨の外上方への牽引力が増大すると膝蓋骨尖が突出し、膝蓋靱帯深層部に応力が集中し疼痛が出現すると言われています。
治療方法として、炎症の沈静化と軟部組織の柔軟性改善を図り、膝蓋靱帯にかかるストレスを軽減させることが重要になってきます。
リハビリテーション科 服部 司
当クリニックでは下記の期間を夏期休業とさせていただきますので、ご案内いたします。休業期間は何かとご迷惑をおかけすることと存じますが、ご容赦くださいますように何卒よろしくお願い申し上げます。
夏期休業期間 2015年8月12日(水)~2015年8月16日(日)
第28回日本臨床整形外科学会学術集会維新学会・山口が7月19日・20日に山口県下関市で開催されました。初日のみ参加致しました。本学会のテーマは「整形外科の明日に架ける橋」だそうで、「明日をになう若者」、「高齢化の明日」、「臨床整形外科の明日」を3つの柱として企画されたそうです。
ランチョンセミナーでは「整形外科として取り組む超音波ガイド下伝達麻酔の可能性と問題点」を聴きました。講師は奈良県立医科大学整形外科仲西康顕先生でした。仲西康顕先生は私と同門(同じ医局出身)になります。仲西康顕先生は手の外科を専攻されていますが、エコー検査にも大変詳しく麻酔にも応用されて数々の講演もこなされ大変優秀な先生です。座長の先生の紹介によりますと仲西康顕先生はマイカーの購入を断念してマイエコーの購入をしたというほどの筋金入りのエコー愛をお持ちのようです。講演では超音波診断装置での末梢神経同定のコツ、超音波ガイド下穿刺の工夫、伝達麻酔におけるリスクと予防・対処法、超音波ガイド下伝達麻酔の可能性と問題点などを詳細にわかりやすく解説してくださいました。
主題6のセッションは成長期のスポーツ医療の現状と対策(親・指導者との協力体制を築くための方策)でした。成長期のスポーツ医療の難しさとその方策が4人の演者により提示されました。スポーツ指導者とドクターが信頼関係を構築できなければ、満足ゆく治療ができるわけもありません。演者の一人であるかみもとスポーツクリニック院長上本宗唯先生は、成長期のスポーツ医療において「よく聴く」、「寄り添う」、「応援する」という3つの姿勢が最も大切であると考えていると述べておられます。なるほど!と思いました。4人の演者の先生方のスポーツ医療にかける情熱に感心致しました。
やまぐち手外科セミナーを拝聴致しました。山口大学整形外科手外科の3名の先生方による講演でした。「橈骨遠位端骨折:最近の治療」では済生会下関総合病院整形外科安部幸雄先生が、橈骨遠位端骨折の治療の変遷と最近の治療の傾向や鏡視下手術を含めた実際の手技と成績、合併症などを解説してくださいました。「手の腫瘍:診断の進め方と新しい治療」では山口大学整形外科村松慶一先生が手の腫瘍において疼痛の有無を参考にして診断を進める分類を紹介され、頻度は少ないものの注意すべき悪性腫瘍などについても解説してくださいました。「手根管症候群の診断と治療」では小郡第一総合病院整形外科服部泰典先生が手根管症候群の診断のポイント、保存治療、手術治療などについて解説してくださいました。
リハビリテーション(含む運動器リハ)上肢のセッションでは当院リハビリテーション科小野正博理学療法士が「小児Monteggia骨折に対する運動療法」という演題を発表しました。
色々と勉強になり、有意義な学会参加となりました。